2018年05月19日

ネルソン・マンデラ・ストーリー

「ネルソン・マンデラ・ストーリー」                  タイラー・バーデン
★★★★★



ネルソン・マンデラは南アフリカ共和国の小さな村で生まれた。アフリカの部族の首長の家に生まれ、きょうだいが13人いた。マンデラは一家の中で初めて学校に通った。しかし、マンデラが9歳の時、父親が亡くなってしまう。だが、力を持った友人にマンデラのことを頼んでいたので、それまで通り学校に行けた。

16歳になると、部族の慣習で割礼を受ける。ひどい痛みを伴う儀式だが、この儀式を受けることには、一人前の男になったという意味があるのだ。そして近くの町、クラークベリーのキリスト教系の寄宿学校へと進学する。

田舎なまりの言葉をバカにされたりしながらも、無事に学校を卒業し、ヒールドタウン・カレッジに入学する。そこで、イギリスの歴史や地理学などを学ぶ。ここでマンデラは黒人に対する人種差別を目の当たりにする。

2年後にはフォートヘア大学に入る。ここは当時、南アフリカ共和国で唯一の黒人向けの大学で、生徒は150人しかいなかった。そこで彼は法律や政治などを学ぶが、その時なりたかったのは通訳だった。この大学では、学生のリーダーに選ばれ、食事の質について大学側と交渉をしたのだが、そこで、大学側から退学以外にリーダーを辞める方法はないと言われ、本当に退学してしまう。

その後、ヨハネスブルクに行くマンデラ。そこで、法律事務所の事務職の仕事を得る。その頃の彼は貧しかった。職場に行くのも、20kmを歩いて通うような状態である。

そして、途中でドロップアウトしたフォートヘア大学に戻り、今度はきちんと卒業する。次に、ヴィットヴァータース大学の法学士課程に入学する。そこでも差別を経験し、アフリカ民族会議(ANC)に参加するようになる。これがマンデラの政治的活動の始まりだった。だが、その活動に満足できず、「アフリカ民族会議の青年同盟」を設立する。そして、マンデラはANCの中で中心的な存在になっていく。しかし、活動に時間を取られ、ヴィットヴァータース大学は卒業できなかった。

本格的に人種差別廃止活動を始めたマンデラ。しかし、もちろんそんなにスムーズに事が進むわけがない。逮捕されたり、集会に参加するのを禁止されたり。しかし、そんな状況にも屈することなく、彼は活動を続けていく。

あまり書くと面白くなくなるので、このあたりでやめるが、最後まで読むと、マンデラは想像以上の過酷な状況を乗り越えてノーベル賞を受賞し、アパルトヘイトを撤廃したことが分かる。まさに「偉人」という名称にふさわしい。その生きざまに感服した。
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2018年05月12日

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」              新井 紀子
★★★★★



AIブームだが、シンギュラリティは来るのだろうか?AIが人間の仕事を全てするようになるのだろうか?その答えが本書にある。AIが人間の多くの仕事に取って替わる可能性は高い。

第一次、第二次のAIブームを経て、今は第三次AIブームである。ディープラーニングと言う技術によって、AIは確かに進歩した。しかし、この技術は人間の脳を模倣して「数理モデル」を作ったのであり、人間と全く同じことができるようになるとは限らない。

多くの人が知っているように、著者(新井さん)は「東ロボくん」プロジェクトを行っていた。その結果、東ロボくんは57.1もの偏差値を出せるようになったのだ。これは、学部を選ばなければMARCH、関関同立にも潜り込めるレベルである。東ロボくんは数学では76.2、世界史では66.5という高い偏差値を出すことができた。しかし、国語と英語で行き詰まった。偏差値が50あたりで止まってしまい、結局東ロボくんプロジェクトが中止になったことはニュースでも報道された。

AIは文章が読めない、数式に置き換えられないことをAIにさせることは無理、AIはコンピュータなので四則計算しかできないということはこの本で初めて知った。無知なもので、AIは人間と同じように文章を読んで理解していると思っていたのだ。

2016年にグーグル翻訳のレベルが上がり、この調子でレベルが上がれば翻訳の仕事がなくなってしまうのではないか、と思っていたのだが、新井さんは意味を全く理解せずに翻訳をしている現在の機械翻訳では、人間と同じレベルの翻訳ができるようにはならないだろうと言っている。ちゃんとグーグル翻訳の仕組みなども説明した上での結論なので、信頼できる。正直なところ、かなり安心した。

自分に関しては安心したのだが、子どもたちの読解力低下の調査結果には不安にならざるを得なかった。読解力が低い中高生。しかもAIが苦手とする分野の読解力が不足している中高生も多かった。つまり、その中高生たちはAIに仕事を奪われ、まともな仕事に就けない可能性があるということだ。

しかし、読解力はいくつになっても上げることができる、と新井さんは言い、その例も挙げている。これからはこの問題を解決するための取り組みを行っていくつもりのようだ。

希望はある。きっと……。
ラベル:AI
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2018年05月05日

文系が20年後も生き残るためにいますべきこと

「文系が20年後も生き残るためにいますべきこと」                岩崎 日出俊
★★★★★



今から20年後。私たちの生活は大きく変わっているだろう。3時間で東京からニューヨークまで行けるかもしれない。ネットで注文した商品は30分以内に届く。

しかし、その一方で変化について行けない企業は倒産し、現在の仕事を失う人も出てくるだろう。現在、日本の文系出身者の73%が「事務・販売・接客」の仕事に就いており、これらの仕事はなくなる可能性が高い。AIの発達により、49%の仕事はなくなるという研究もある。なくなるリスクの高い職業の人は、少しでも高度な専門知識を身につけ、知識の幅を広げておくべきだという。

私自身も、Google翻訳の進歩などに不安を感じ、本書を読んでいるというわけである。

文系でも、一芸に秀でている人は強いという言葉に、少し安心。他社が欲しいと思うような能力やスキルを身につけておくことがポイントだという。しかし、翻訳という仕事そのものがなくなったら、この仕事しかしていない自分を求めるところがあるのだろうか?不安は尽きない。

日本では高校で文系か理系かを選択するが、アメリカではそういう区分がなく、どちらも学べる。「私は文系だから」などと自分に限界を設けないことが大事なのだ。

具体的には、英語、ファイナンス、コンピューター(プログラミング)が役に立つと書かれていた。英語とコンピューターについては、私が学生のころから大事だと言われていた。目新しいのはファイナンスぐらいである。英語は仕事だし、プログラミングを含めて、コンピューターについては少しずつ学んでいる。今の仕事(翻訳業)で金融専門の翻訳者になりたいと思っているのだが、そのためにファイナンスを学ぶ必要があると言うことが分かった。今、そのために必要な数学から学び直しているところである。

今のスタンスで英語とコンピューター、ファイナンスを学び、変化に対応していけばいいだろう、というのが読後の正直な感想であった。
ラベル:AI
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2018年04月26日

Number 5/17

「Number 5/17」
★★★★★



マリナーズに戻ったイチローの特集号である。

巻頭のロングインタビューで、イチローは言う。

「人の何倍もの努力なんて、できっこない。自分の限界を少しだけ超えることを積み重ねてきただけ」と。そうして年を積み重ねてきたという自信があるから、心が折れることがあっても泰然としていられたのだ。

また、「ムダも大事だ」とも言う。結果が出ていれば、何も変える必要はないと考える人は多いが、いろいろ試行錯誤し、遠回りしてこのやり方が正しいというところに戻ることは大きいとイチローは言うのだ。次元は全く違うが、私も集中的に英語の学習に取り組んでいたころ、結果は出ていたが、数多くの勉強法を試し、自分にとって効果のある学習法を見つけることができた。ムダな試みも多かったと思うが、結局は自分にとってプラスになったと感じる。

いつも思うことだが、イチローの言葉には含蓄がある。アスリートでありながら、哲学的でもある。

二刀流の大谷選手の活躍も楽しみだが、イチローにも、本当に50歳を目標に頑張ってほしいものだ。新聞やニュースでイチローの打率や安打数を見る、という楽しみがもう少し続くように……。
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2018年04月21日

スティーヴン・ホーキング・ストーリー

「スティーヴン・ホーキング・ストーリー」            ニーナ・ウェグナー
★★★★



著名な宇宙物理学者、ホーキング博士の伝記。

フランクとイザベルの間に生まれたホーキング。フランクは医者、イザベルはオックスフォード大学を卒業した。

ホーキングは、小さいころは学校や勉強に興味がなかった。関心があったのは、ボードゲームなどのゲームをすることだった。自分でゲームを作ることもあった。父はホーキングを医者にしたかったのだが、ホーキング自身は星の方に興味があった。大学はオックスフォード大学に進み、数学を専攻したいと思っていたのだが、父の勧めで物理学を専攻することにした。授業は簡単で退屈だったが、「宇宙はどのように動いているのか?」という疑問が彼の知的好奇心を刺激した。卒業後はケンブリッジの大学院に進み、現代宇宙論の父、デニス・スキアマに師事する。この時代には、定常宇宙論とビッグバン宇宙論の2つがあり、どちらが正しいかは分かっていなかった。後に、ホーキングはこの議論において重要な役割を果たすことになる。

オックスフォード大学時代にはボート部に所属し、舵手を務めた。しかし4年の時、思い通りに体が動かないことに気づく。そしてケンブリッジの大学院生になった時、ALSと診断される。もちろん最初は落ち込んだのだが、病院で白血病の少年が死ぬのを見て、自分には達成すべき夢があるのでそんなに悪い状態ではない、と自分に言い聞かせるのだった。そしてそのころ、後に妻となるジェーンと出会ったことも大きかった。彼女のおかげでホーキングは希望を失わずにすんだのだ。

その後、仕事で名声を得る一方で、だんだん体の自由は利かなくなっていく。ついには、自力で呼吸が出来なくなる。人生とはままならないものだ。

しかし、体の自由が利かないからこそ、ホーキング博士はその希有な頭脳をフル回転させることに集中できたとも言える。ホーキング博士にはもう少し長生きしてもらって、宇宙の謎を少しでも解き明かしてほしかった。
posted by 三毛ネコ at 14:21| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする