2017年11月18日

マリアビートル

「マリアビートル」                    伊坂 幸太郎
★★★★★



舞台は新幹線の中。3つの異なったシチュエーションと視点で物語は進行していく。これらのシチュエーションはつながっている。

自分の子供を意識不明の状態にされ、その復讐をしようとする男。しかし、犯人の王子という中学生に反撃され、身動きが取れなくなる。ある男から息子を救い出すように頼まれ、見事に救い出した殺し屋コンビ、蜜柑と檸檬。正体不明の依頼者から、トランクを盗み出すように言われた七尾という非合法の何でも屋。非常に運が悪い男である。

彼らをつなげるのは、一つのトランクだ。そのトランクを巡って、4人の思惑が交錯する。そのトランクの中身を知っているのは、蜜柑と檸檬だけだ。

蜜柑と檸檬はトランクを盗まれ、助け出した依頼者の息子は死んでしまった。七尾はトランクを手に入れるように頼まれており、そのトランクをうまく盗んだのだが、隠していたトランクを王子に取られてしまう。果たして、トランクは誰のものになるのか。そして、この物語の結末も大いに気になる。

殺し屋が登場する話なので、物騒なシーンが描かれたり、王子という性格のねじ曲がった中学生のエピソードなど、書き方によっては不快になるような内容もあるのだが、伊坂幸太郎独特の軽いタッチで、どたばた喜劇のように普通に読めてしまう。

話が佳境に入ると、先が読みたくてウズウズする。情勢が二転、三転し、そしてラストへ……エンターテインメント性もメッセージ性も十分で、楽しめる小説だった。
posted by 三毛ネコ at 14:40| Comment(0) | エンターテインメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月11日

エジソン・ストーリー

「エジソン・ストーリー」            ジェイク・ロナルドソン
★★★★



トーマス・エジソン。誰もが知る、世界の発明王である。その彼が生まれたのは、アメリカ、オハイオ州だ。エジソンは小さいころから、物が何でできているのか、その中に何があるのかといったことに興味を抱いていた。好奇心が旺盛で、なぜ鳥は飛べるのかと思って実験をしたり、ミツバチの巣の中はどうなっているのかと思い、解体してハチに襲われたりもした。

小学校に行くようになると、エジソンは学校にとって最悪の生徒になった。教師はエジソンをどう扱ったらいいのか分からず、母親が家で勉強を教えることにしたのは有名なエピソードである。

母がエジソンに読み書きを教え、エジソンはすぐに父親の蔵書を全て読み終わってしまった。ある日、母がエジソンに科学の本を買ってやると、エジソンは興味を持ち、科学の本を大量に読むようになる。電気にも興味を抱き、その実験もするようになる。

しかし、金が足りず、列車で新聞などを売って実験費を稼いだ。それが当たって、3人も人を雇ってこのビジネスをすることになるのだ。エジソンは列車の中で最新ニュースを印刷するようにして、新聞をたくさん売った。まだ14歳の時である。

その後、エジソンは電信技師になる。耳が悪かったので、他の仕事より彼に向いていたのだ。エジソンの最初の発明は「ダブル・トランスミッター」だった。一度に2つのメッセージを送れる通信機で、便利だったのだが、残念ながら買ってくれる会社はなかった。

しかし、そこからエジソンは次々と新しい発明をしていく。そして誰もが知るように、実用的な電球、蓄音機、映画のカメラなどを発明し、大発明家となっていくわけだ。

読むと、エジソンが挫折や困難を乗り越えて発明に人生を賭けていたことが分かる。天才発明家の人生をたどることは、興味深い読書体験となった。
posted by 三毛ネコ at 11:07| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月07日

カササギたちの四季

「カササギたちの四季」                   道尾 秀介
★★★★★



ミステリーの短編集である。

・ 鵲(かささぎ)の橋 リサイクルショップ・カササギ。開業から2年間、ずっと赤字である。店長は華沙々木(かささぎ)、副店長は日暮(ひぐらし)、そしてこの店に入り浸っている少女、菜美。ある身元不明の男からカササギが買ったブロンズ像。それを買いに来た男は、その像のことを知っていたようだった。男の後をつける副店長の日暮。そのブロンズ像は盗まれた物だった。そして、ブロンズ像をカササギに買いに来たのは、盗まれた家の主人の叔父だった。店長の華沙々木が見事に推理して、一件落着・・・のように見える。しかし、尻ぬぐいをさせられているのは別の人物。

・ 蜩(ひぐらし)の川 ある木工所から大量の注文を受けた店長の華沙々木。喜び勇んで目的地の秩父へと向かう。しかし、そこにも事件の匂いが・・・その木工所では、神木から神輿と鳥居を作ろうとしていた。しかし、華沙々木たちがそこへ行った日の朝、神木に誰かが傷をつけ、「お前もこうなるぞ」というメッセージが刻まれていた。前作と同じく、華沙々木が一見見事な推理を披露してみせるのだが・・・

・ 南の絆 この短編では、華沙々木たちと菜美との出会いから共に過ごすようになるまでのエピソードが描かれる。菜美の家に泥棒が入り、猫のナーちゃんが盗まれる。しかし、翌日にナーちゃんは返される。華沙々木が自身初の推理をして、事件を解決・・・したように見えるのだが、実際はそうではない。

・ 橘(たちばな)の寺 今までの3作品で、日暮にゴミ同然のものを高値で買い取らせていた和尚。それが、どういう風の吹き回しか、店のオーディオセットを高値で買い取ってくれた。後で、それには裏があることが明らかになるのだが・・・そのご、成り行きで和尚の寺に泊まることになる3人。その夜、泥棒が入る。ここでも華沙々木は事件をでっち上げ、迷推理を展開するが、ラストは意外に感動的になり・・・

一応、ミステリーなのだが、どうも華沙々木が事件を勝手に作り上げ、よけいに事態をややこしくしている感もある。それでも、殺人も起きず、ユーモアを交えてサクサクと展開していくので、ミステリーファンならずとも楽しめるだろう。
ラベル:道尾秀介 小説
posted by 三毛ネコ at 05:45| Comment(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月29日

不思議の国のアリス

「不思議の国のアリス」            ルイス・キャロル
★★★★★



主人公のアリスは川べりに座って退屈だった。お姉ちゃんの本を覗いてみても、絵も会話もない本で、つまらない。そこへ、なぜかとても急いでいる白ウサギが通りかかり、興味を持ったアリスは後を追う。ウサギは走ってウサギ穴の中に入り、アリスも続く。穴の中の壁は本棚で一杯だった。そしてアリスは穴深くにどんどん落下していく。地球の裏側に出るのではないかと思いながら。

ようやく落下が止まると、そこは不思議の国だった。そしてアリスは鍵のかかったドアだらけの部屋に取り残される。部屋から出ることができず、困ってその部屋にある液体を飲むと、体が小さくなった。それでも部屋から出られず、そこにあった小さなケーキを食べると、また元の大きさに戻る。

そんなドタバタがあり、白ウサギには召使いと間違えられ、手袋とうちわを持ってくるようにいわれる。その途中で、アリスはまた、発見した液体を飲み、部屋いっぱいまで体が大きくなってしまう。どうにもならなくなって困り、そこにあったケーキを食べて体が小さくなり、やっと外へ出られる。さて、この不思議の国でアリスはどうなってしまうのか。彼女を待ち受ける運命は?

その後も、タバコをふかすイモムシが出てきたり、魚の顔の従僕が現れたりと、奇想天外な話が展開する。

作家の想像力のたくましさを存分に堪能した一冊だった。
posted by 三毛ネコ at 12:01| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月21日

日本の経済

「日本の経済」                 小林 佳代
★★★



日本の経済を解説した本。といっても、2005年に出た本なので、最新の経済状況については書かれていない。

戦後の日本の再建は傾斜生産方式で始まった。石炭や鉄鋼などの第一次産業に力を入れたのである。そして、1956年には経済白書に、有名な「もはや戦後ではない」という言葉が現れる。

所得倍増計画の下、GNPは2倍になった。東京オリンピックも開かれ、1968年にはGNPで世界2位になる。

もちろん、いいことばかりではなく、水俣病やイタイイタイ病の発生など、経済発展の陰の側面もあるのだが。

1980年代後半には「バブル経済」が到来する。そのころは、地価は絶対に下がらないという「土地神話」がまかり通っていた。しかし、政府や日銀がバブルを抑えようとしたことが原因で、バブルは崩壊する。それから、失われた10年に入って今に至るわけだ。

ほかにも、日本独自の管理システムについても説明されている。株式持ち合い、メインバンクシステム、トヨタのカイゼンとカンバン方式など。

戦後、官僚が主導して日本を発展させてきたことも説明されている。しかし、規制緩和や産業の自由化につれてそのシステムも変わっていった。

改めて日本経済の変遷を見ると、いい時代だったのだな、と思う。景気は右肩上がり。年功序列で地位や給料が上がっていく。今では考えられない話である。それに比べると、現在は激動の時代と言えるだろう。IoT、人工知能、シェアリング・エコノミー……。時代が、生活のあり方が大きく変わろうとしている。そんな今を生き抜く大変さをしみじみ感じさせられた本だった。
ラベル:リライト 多読
posted by 三毛ネコ at 10:31| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする