2020年02月22日

物理学者の著者がキリスト教と科学者について述べた本。宗教くさくなく、客観的に書かれています。

「科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで」  三田 一郎
★★



私はクリスチャン(プロテスタント)である。しかし、この本のレビューで自分の信仰を押しつけるつもりはない。できるだけ客観的にレビューしようと思っている。

しかし、いきなり気になる記述が。キリスト教にある三位一体の神の説明で、父(神様)と子(イエス)、精霊が一体となって初めて神である、という説明はいいのだが、イエスがこの世界を創った、という説明は間違っている……のだが、宗教くさくならないように、ここは置いておいて先へ進もう。

2章からは、ホーキングやアインシュタインなど、著名な科学者にとっての神を説明していく。

地動説を初めて唱えたコペルニクスはカトリックの司祭だった。彼の説は、最初は否定された。しかし、ガリレオ・ガリレイ(カトリック信者)がコペルニクスの正しさを証明した。

ガリレオは、万物の創造主である神がなぜ宇宙をこのように創ったのかを知るには、「もう一つの聖書」である数学を知る必要があると考えたのだ。だが、裁判にかけられ、自説を放棄したのは皆さんご存じの通りである。

「万有引力の法則」で有名なニュートンも、実はキリスト教の信者だった。その後、「マクスウェル方程式」をまとめたマクスウェルまではクリスチャンなのだが、アインシュタインから後の科学者は進化論者(つまり、無神論者)である。

私は聖書を読んでいるが、現代の科学では説明できない奇跡や予言なども多く記されている。科学が発達すればするほど、そのギャップは大きくなるだろう。宗教は科学にはなじまない。予言や奇跡を信じられなければ、クリスチャンにはなれないのだ。この本は、クリスチャンの物理学者が書いているため、割と客観的にキリスト教と科学者について述べている。

クリスチャンとしては不満が残るが、そうでない人は一読してみてもいいだろう。
posted by 三毛ネコ at 11:31| Comment(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月15日

この本を読めば、AIの基本は大体分かります。個人的には、翻訳業の未来についてもっと言及してほしかったのですが。

「AI入門講座 人工知能の可能性・限界・脅威を知る」 野口 悠紀雄
★★★★



AIについてはもう何冊も本を読み、理解しているつもりなのだが、有名な野口悠紀雄がAIについてどう考えているかを知りたくて、読むことにした。

AIを敵だと思わずに味方だと思えと野口さんは言う。パソコンやインターネットと同じで、敵と思わずに取り入れて活用した方がプラスになると。

これまで、コンピューターが苦手としてきた「パターン認識」が、ディープラーニングの活用によって可能になってきた。これにより、様々な仕事が自動化できるようになる。製造業の検品や、農業のいろいろな作業もAIで代替できるという。医療分野では、ガンの発見なども人間より正確に行えるようになるらしい。そして、完全な自動運転車も、2025年には登場してきそうだ。

そして、私が最も知りたかった自動翻訳。この本には、「通訳者は、しばらく失業しないで済みそうだ」とある。しかし、翻訳業が大丈夫とは書いていない。翻訳の全てがAIでできるようになるとは思えない、とは書いてあるが、翻訳者の仕事がAI翻訳の手直しになってしまう可能性もあるのだ。しかし、今まで集めた情報から私は、「ハイレベルの翻訳者は生き残れる」という結論に達している。

その後も、AIがすでに新聞記事などの文章を書いている、作曲や映画作りもする、などの気になる内容が続く。

ただ、ディープラーニングが出す結果がなぜ正しいのかを人間は理解できない。正解を出す過程がブラックボックスになっているのだ。そこから、AIが人間に反乱を起こすという考えも出てくる。まあ、そんなことは実際には起きないと思うのだが。

AIによる「1984年」のような監視社会が出現する可能性についても言及されている。

大きなメリットとリスクを併せ持つAI。これをどううまく活用していけるかが、次世代社会を生き抜いていくカギになりそうだ。
ラベル:野口悠紀雄 AI
posted by 三毛ネコ at 10:10| Comment(0) | 実用書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月08日

東日本大震災をテーマにした小説です。天童さんらしく、重い作品です。

「ムーンナイト・ダイバー」           天童 荒太
★★★



主人公は瀬名舟作。この本にははっきりと地名は書かれていないが、福島県出身のようだ。東日本大震災が起きてからしばらく経った後の設定になっている。舟作はそのとき、両親と兄を失った。彼は、海に沈んだ家や車などの写真を撮り、亡くなった人の遺物を回収している。

どうやら、ビジネスとして人に頼まれてしているらしい。ただし、ルールがある。金目の物を持ち帰らないということである。金目当てでやっているのではないかという誤解を受けたくはないのだ。この行為を思いついた珠井という人物は、最初は自分だけのためだったが、何かできないかという思いでこの活動を始めた。今では、10人以上の被災者家族の会員がいる。

また、舟作たちが潜水しているところを海上保安庁などに発見され、取り調べを受けた時に遺族のことを知らなければ迷惑がかからない。海から品物を持ち帰ったという事実が会員の遺族の側から警察に漏れた時にも、お互いに出会っていなければ、舟作たちに捜査が及ばない。そこまでしても、自分のために、そして遺族のために何かしたい、何かしなければならないという気持ちが珠井にも舟作にもあるのだ。

舟作も深い心の傷を負ってしまったようで、わが子の「神様っているんでしょ」という問いかけについ「いない」と答えてしまう。こんな調子で、物語は静かに進行していく。

感涙必至などと宣伝されていたが、涙など全く出てこなかった。ただ、天童さんらしい、重いテーマの小説である。あの未曾有の災害を体験していない人間には、きっとこの小説を批評する資格などないのだろう、というのが正直な読後感である。
posted by 三毛ネコ at 11:23| Comment(0) | 純文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月01日

積ん読になっていた本を読んでみました。

「東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方」      上田 正仁




考える力をつけて新しいアイデアを生み出したい。そんな思いがあり、考えるヒントとしてこの本を手にした。アイデアを得るためには、一つのことを深く考えなければならない。アインシュタインや、ノーベル賞を受賞した小柴昌俊さんは劣等生だった。「考える力」は学業成績ではほんの一部しか測ることができない。

受験勉強では、課題として与えられた知識やスキルを効率よく身につける「マニュアル力」を鍛えることができる。この力は「考える力」を身につけるための基礎力になるし、想像力を発揮するための土台にもなる。しかし、受験勉強で創造性が奪われることもあるのだ。

著者によれば、本書の「考える力」とは問題の本質を見極める力であり、「創造する力」はそれを独自の方法で解決に至るまでやり遂げることができる能力だそうだ。そして、この2つの力は意識的な訓練で誰でも身につけることができるという。

まず、人との対話、自分との対話を通して「問題を見つける力」を養う。人間は、考えていないようでも常に何かを考えているという。メモ帳などを持ち歩き、思いついたことをメモして、明確な意識を持って考えるクセをつける。

しかし、その後を読んでいくと、ごく当たり前のことしか書いていない。ちょっと気になったのは、分かっていることと分かっていないことを書き出して情報地図を作るという点である。それぐらいしか読むべき箇所はなかった。

「問題を見つける力」、「解く力」、「諦めない人間力」という3章で成り立っているが、中身はあまりない。積ん読になっていたのでもったいないと思い、読んでみたが、読むほどの本ではなかった。
ラベル:東大
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2020年01月25日

ケーキが切れない少年たち。実際に読んでみると、衝撃的な内容です。著者が行っているような取り組みをもっと広げてほしいです。

「ケーキの切れない非行少年たち」     宮口 幸治
★★★★★



著者は精神科医。医療少年院で勤務し、発達障害や知的障害を持った子どもの問題行動の改善に取り組んできた。

その時に、暴行・傷害事件を起こして少年院に入っていた少年の担当をすることになる。しかし、あまり会話が進まないので、複雑な図形の模写をさせてみた。すると、その少年は正しいどころか、正解に近い図形すら書くことができなかったのだ。この結果は、その少年にとって世の中のこと全てが歪んで見えている可能性があることを示している。その他にも、高校生なのに九九を知らない、日本地図を見てもそれが何の図形か分からない、今の総理大臣が誰なのか知らないといった少年もいた。彼らはみんな勉強が苦手だという。勉強ができず、学校が面白くないので非行に走ったという少年もいる。

しかし、彼らがすべて勉強が嫌いかというと、そうでもない。著者が少年院で頭を使うグループトレーニングをすると、ほぼ全員が2時間も飽きることなく取り組めたという。彼らは勉強に飢えていたのだ。

そして医療少年院では、題名の通り「ケーキを3等分できない」非行少年たちがいた。実際にどう切ったかは本書を読んでいただくとして、この課題ができない少年たちが凶悪犯罪を起こしているのが問題なのだ。彼らに、非行の反省などの従来行われていた矯正教育は役に立たない。

少年たちに10万円を1週間以内に用意するとしたら、どうするかと尋ねてみる。どんな方法でもいいと言うと、親族から借りる、消費者金融から借りる、といった答えが返ってくる。ここまではまだいい。盗む、騙し取る、銀行強盗をする、などが同列の選択肢として出てくるのだ。先の見通しを持たず、計画を立てられないために出てくる答えである。

少年院にいる少年たちは、見る力や聞く力といった認知機能に問題がある。だから相手の態度を誤解してすぐ傷害事件を起こしたりするのである。

非行に走る少年の色々な問題点が分かる。中には衝撃的な事実がいくつもある。しかし、何が問題なのかを正しく捉え、粘り強く対応していけば道は開けるのではないか。非行少年の問題点を理解し、それに対する著者の取り組みを知って、少しだけ希望を持つことができた。
posted by 三毛ネコ at 12:08| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする