2018年01月20日

ラッシュライフ

「ラッシュライフ」               伊坂 幸太郎
★★★★★



舞台は仙台だが、冒頭からやたらと登場人物が多い。異なる場面で5つの話が進行するようである。しかし、同じ仙台なので、それぞれの話は相互に絡み合っている。

被害者に余計な心配をかけないようにと、書き置きを残していく律儀な泥棒。盗むのも1回に20〜30万円だけである。

未来が見えるという新興宗教の教祖を、性格が変わったという理由で殺して解体しようとしている信者とその子分。

ダブル不倫をしていて、相手の妻を殺そうと計画している精神科医の女。ネットを使って拳銃を手に入れた。

会社をクビになり、住んでいるアパートの家賃も払えなくなりそうな男。

なんだか、バラバラである。毎度のことだが、こんなにてんでバラバラに広げておいて、どうやってまとめるのだろう、という気持ちになる。

しかし、それが少しずつ、関連付けられていく。

作品の中に、前作「オーデュボンの祈り」のしゃべるカカシがちらっと出てくる。これも作者の遊び心であろう。

バラバラ殺人の話なども出てくるのだが、割とサラッと描いてくれるので、不快にならずにすむ。ラストに近くなってくると、それまでの伏線のような出来事が次々とつながり、ストーリー全体が明確になってくる。その展開には、一種の爽快感を覚える。

初期の作品だが、十分に伊坂テイストが出ていた。
ラベル:伊坂幸太郎 小説
posted by 三毛ネコ at 10:11| Comment(0) | エンターテインメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月14日

Number 1/13

「Number 1/13」
★★★★



サッカーロシアW杯、グループH。相手はポーランド、コロンビア、セネガル。今の日本代表と比べると、いずれも格上だ。

今号では、ハリルホジッチ日本代表監督がW杯の展望を語る。完璧な準備をすれば、初戦のコロンビアに勝つことも可能だという。ブロックを作ってプレスをかけ、奪ってから縦に速い攻撃をする、という方向性は変わらないようだ。それが、今日のサッカーだからだと言う。日本には個の力で違いを作り出せる選手がいないので、コレクティブなサッカーを強化していくしかないのだ。

また選手選考では、岡崎、香川、本田に対してもポジションを保証していない。これがハリルホジッチのやり方だ。

そしてハリルは、机上の議論ではポーランドなどの方が優れているが、ピッチの上の現実はまた別で、ひと試合ならあらゆる可能性があるという。それを予選3試合で実現するためには、あと6か月間、メンタル、フィジカル、戦術のあらゆる面で綿密な準備をしなければならない。そして、勇気を持ってリスクを冒す必要がある。それがハリルのスピリットである。

最近の日本代表の試合を見ると、本当に大丈夫かな、と思うことが多いのだが、ハリルのスタンスは全くぶれていない。この監督ならやってくれる、という希望を十分に持たせてくれる今号だった。
posted by 三毛ネコ at 22:13| Comment(0) | Number | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月02日

宇宙飛行の父 ツィオルコフスキー: 人類が宇宙へ行くまで

「宇宙飛行の父 ツィオルコフスキー: 人類が宇宙へ行くまで」   的川 泰宣
★★★★★



1857年、ツィオルコフスキーはロシアで生まれた。この人のことは全く知らなかったのだが、ロシアでは石像が建てられるほど有名で、「宇宙飛行の父」と呼ばれているらしい。

4歳で字を書いたという。頭が良く、好奇心の強い子供だったようだ。家は貧しく、両親も厳しかったが、ツィオルコフスキーはわりと楽しい少年時代を過ごした。

しかし、いいことばかりは続かない。10歳の時、猩紅熱にかかり、そのせいで耳がほとんど聞こえなくなってしまう。それでも、本を読むのが好きで、たくさんの本を読んだようだ。

小学校もまともに行っていなかったが、14歳で算術をきちんと知った時、「これなら自分でもできる」と思ったという。父が持っていた数学や自然科学の本をたくさん読んだ。独学だが、かなり理解できたのだ。

10歳で親元を離れ、モスクワに行く。モスクワの図書館に通い、科学所を読みあさった。司書の勧めで、数学や物理学を基礎からやり直した。もちろん独学である。しかも、彼は頭でっかちの秀才ではなかった。何かを学ぶと、必ずその知識を利用した。例えば、天体望遠鏡の反射鏡を自作したりしたのだ。その旺盛な知識欲と行動力には感嘆せざるを得ない。

その後、家庭教師を経て、中学校の数学教師の仕事に就く。

この人のすごいのは、数学教師をしながら、すべて独学で宇宙船のアイデアを作り上げたり(実験でちゃんとその理論が正しいことを証明した)、金属製の有人宇宙船を設計(これも実験済み)したりしたことである。

そしてツィオルコフスキーの仕事は認められていき、「宇宙飛行の父」と呼ばれるようになるわけである。一読すると、その偉大さに舌を巻くばかりである。私も今、仕事の関係で数学を独学しているので、独学で数々の業績を残したツィオルコフスキーの人生には勇気づけられた。

ツィオルコフスキーが後年残した言葉をもってこのレビューを終えたい。「この世はうまくできている。学校に通わなくても、先生に教わらなくても、読書さえできれば子供は成長できる」。
ラベル:科学
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2017年12月23日

イン・ザ・プール

「イン・ザ・プール」                奥田 英朗
★★★★



大森和雄(38歳)は原因不明の体調不良で神経科にやって来た。その科の担当医が伊良部一郎。ちょっと変人の、太った、40代前半の医者だ。

和雄の症状は突然現れた。ある夜、突然息苦しくなり、ベランダに出たが、元の状態に戻るまでしばらくかかった。次は下痢である。家から電車の駅に行くまでに大便を漏らしてしまうことが何回かあったのだ。

伊良部は、それは不定愁訴と呼ばれており、原因はストレスだと言う。結局、和雄はその日、抗生物質を注射してもらって帰る。

和雄は伊良部のアドバイスに従って運動をしてみようと考える。彼が選んだのは水泳だった。近くのジムのプールで泳いでみると、思った以上に楽しかった。そして和雄は水泳に熱中していく。その様子を聞いて、伊良部も水泳を始める。

しかし、和雄の水泳への熱中ぶりは少し度を越していた。いわゆるランナーズハイに近い状態になっていたのかもしれない。

読む前は、伊良部という医者がズバズバと患者の悩みを解決する話なのかと思っていたが、そうでもないようだ。そして、ストーリーは意外な方向に・・・この物語はどう収束するのだろうか。

身体の不調を訴える患者と、ちょっと変わり者の医者。ミステリーでも、サスペンスでもクライム・ノベルでもない。多読教材でなければまず読むことはないジャンルである。しかし、嫌にならずに最後まで読めたので、英語に訳されているとはいえ、やはり相当の筆力を持った作家であることが分かる。
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2017年12月09日

接続詞の技術

「接続詞の技術」                 石黒 圭
★★★



翻訳の仕事をする時に、必ずTradosというソフトを使う。このソフトでは、英文を1センテンスずつに分けて訳すような仕組みになっているので、どうしても前後関係の意識が甘くなり、その1文だけをきっちり訳すという感覚になってしまう。この本のテーマである「接続詞」をうまく使うことができず、前後のつながりが悪い仕上がりになってしまうのだ。

この本を読んだのは、まさにその状態を解決するためである。

1章に、私たちは文章を書く時、例えば「喉が渇いた」→「そこで」→「水を飲んだ。」という順序で考える、とある。もちろん、私もそうである。しかし、翻訳になると、そうとばかりは言えない。「喉が渇いた」「水を飲んだ」という文章を別々に訳し、その後この2文をつなぐ接続詞を考える、という順番になることが多い。

この本によれば、接続詞は4類10種に分けられるという。「論理の接続詞」、「整理の接続詞」、「理解の接続詞」、「展開の接続詞」の4種である。

2章から5章までは「だから」、「および」、「ようするに」、「ところで」など、具体的な文例を挙げながら接続詞の使い方を説明していく。

本書の最後には、著者が分類した接続詞の一覧、用法、バリエーションの表が載っている。この本は読み物というより、実際に本書を参考にしながら接続詞を使ってみて、使いこなせるようにするための実用書といえる。

仕事の時に参照しながら使っていきたい。
posted by 三毛ネコ at 11:31| Comment(0) | 実用書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする