★★
のっけから大事件が起きる。日本の首相が暗殺されてしまうのだ。容疑者はあっさりと判明する。物語はその容疑者を中心に進む。果たして、彼の運命は…
この作家は初めて読んだが、全体として文章が軽い。特に会話が。読みやすく、気分が重くならないというところはいいのだが、描写が緊迫感や真剣さに欠ける。軽すぎるのだ。首相の暗殺といえば大事件である。しかし、この本からはその深刻さがまったく伝わってこない。読んでいて、何か違うという感じがぬぐえない。軽快に語るべきところと、緊張感を持って語るべきところのメリハリがないのだ。そのため、全体的に薄っぺらい印象を受ける。
登場人物の特徴はよく描けている。その軽いノリに前半はついていけず、しらけた感じで読んでいたのだが、後半になってやっと面白くなり、最後のほうは一気に読んでしまった。軽妙さも才能のひとつだろうし、ある意味では面白い。しかし、大事件が起こっているのに、こんなに軽くていいの?という疑問が湧いてくる。シリアスであるはずの展開が次の瞬間、実に軽い会話で薄められてしまうのだ。胸を打つような場面もあるのだが、表現があまりうまくないため、心を揺さぶられるほどではない。それが作風なのだから仕方ないのだが、私の好みではない。私は東野圭吾が好きなのだが、彼の作風はオーソドックスで気に入っている。
全体として、作風で損をしている印象を受ける。場面によって文章にメリハリをつければ、もっと面白くなると思うのだが。楽しく、重くないものを読んでみたい人はこの作家を選んでもいいかもしれない。
最後に、この作品を最もよく表す書名をアマゾンで見つけた。「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ著


