2009年06月28日

幻夜

「幻夜」                   東野 圭吾
★★★★




阪神大震災。日本人なら誰もが忘れることのできないあの大地震から物語は始まる。著者も大阪出身なので、やはり受けたショックは大きかったはずだ。それを消化するために、この小説を書いたのかもしれない。

被災地は一種の極限状態だった。そんな中では、人は何をしてもおかしくない。この小説は決して絵空事ではないのだ。東海地震、東南海地震、南海地震が起きたとき、私たちはどこまで普通にふるまえるか。パニックを起こし、エゴイスティックに行動してもおかしくはない。

著者はこのストーリーから何を伝えたいのだろうか。結局この世は弱肉強食だということか。「白夜行」との関連が取り沙汰されている作品である。白夜行の続編であるとも言われている。確かに、白夜行との共通点が見られる。同じパターンで物語が進行するのだ。美冬(主人公の女性)が言う。「昼間の道を歩こうと思たらあかんよ。あたしらは夜の道を行くしかない」しかし、彼女はそんな道を歩く必要性はない。この女性が裏の道を進む明確な理由がないのだ。そのため、この小説は説得力に欠ける。だが、この作品が白夜行の続編であったとすれば、すべて説明がつく。彼女が普通の人生を歩めない理由も、過去をどんな手を使ってでも隠そうとする理由もはっきりする。たぶん、それが正しい解釈なのだろう。

しかし、著者自身は、続編だと言い切ってはいない。そうでない場合のこの作品の解釈について考えてみた。なぜ「白夜行」と同じような構成であえてこの小説を書いたのか。白夜行は、子供時代にとんでもない経験をし、それに縛られ、引きずって生きざるを得ない男女の話だった。この「幻夜」では、阪神大震災が物語のスタートとなる。著者は、おそらくこの作品を通して震災のショックの大きさを描きたかったのではないか。震災による心の傷はあまりにも大きく、その当事者に裏の道を歩ませるほどだったと。だからこそ、白夜行と同じパターンでこの小説を書いたのだ。彼は作家だ。そして、作家にとって最もうまく自分の思いを表現できるのは、当たり前だがその作品である。関西人である著者にとって、あの震災のショックは大きすぎたのかもしれない。それを何とか自分の中で消化し、乗り越えるためにこの作品を書いたとも考えられる。

また、この作品は美冬の表の面だけを見れば、震災をきっかけにしてチャンスをつかみ、成功していく一種のサクセス・ストーリーと言えなくもない。著者はそうやって被災者にエールを送りたかったのではないだろうか。震災をひとつの発奮材料としてもう一度がんばってほしいとのメッセージである。

続編であるかどうかはともかく、この作品の前に、やはり白夜行を先に読んでおいたほうがいいだろう。




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2009年05月31日

学生街の殺人

「学生街の殺人」              東野 圭吾
★★★★




舞台は、かつては学生でにぎわっていたが、今はさびれてしまったとある大学のそばの学生街。ある男が殺される。第一の殺人は学生向けの安アパートで。凶器はナイフ。そして、その事件が解決しないうちに、第二の殺人が。凶器はまたもナイフである。被害者に接点はないように見える。いったい犯人は誰なのか。そしてその動機は…しかも、第二の殺人は密室で起こる。

この作品が発表されたのが1987年。高度成長期の真っ只中である。作中である人物が言う。将来やりたいこともなく大学に入り、卒業していく人間がほとんどである。そういう人はたいてい指示待ち人間で、ロクな仕事ができないと。そういう人間はいずれ機械に取って代わられるという。本当に取って代わられるかはともかく、この言葉は私の心に引っかかる。1987年といえば、バブルで日本が好景気だった時で、当然就職率も最高だったはずだ。企業は規模を拡大し、指示待ち人間でもいいからどんどん採用した。今から考えると何ともうらやましい時代である。しかし、現在必要とされるのは、大卒なら技能として英語とコンピュータを使いこなせ、さらに専門知識を身につけた人材らしい。もちろん、自分で考えて動くことが求められるのは言うまでもない。ここまでコンピュータが浸透してくると、作中の言葉もまんざら嘘ではなさそうだ。これから大学を目指す人には、ぜひ高い目的意識を持って、充実した学生生活を送ってもらいたいと願う。

小説のほうは、ついに、第三の殺人まで起きてしまう。作者はどう事件を解決するのかという疑問が出てくる。もちろん、最後にはちゃんと密室のトリックも解け、事件は解決する…と思われる。しかし、物語はそこでは終わらない。もう一波乱あるのだ。初期の作品ではあるが、十分に東野圭吾らしさが出ている小説である。単なる謎解きミステリーではなく、人物がよく描けている。ファンとしては、初期の作品を読むことで彼の成長ぶりや、テーマの変化などが分かって楽しめる。この作品のカギは最終章にある。謎解きが終わったからといって読み飛ばさないように。




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2009年05月11日

オリンピックの身代金

「オリンピックの身代金」          奥田 英朗
★★★




設定が昭和39年だけあって、モダンガールや日活のニューフェイスなど、今では死語となった言葉が出てきて読者をノスタルジックな気分にさせてくれる。

昭和30年代の世界観がしっかりと構成されている。文体も平易で読みやすい。殺人や覚せい剤などが出てくるわりには、小説全体のムードは明るい。そういう作風なのか、オリンピックのころの日本の活気が文章から感じられるからなのかは分からないが。

そして物語は動き出す。爆弾騒ぎに脅迫状。犯人は本当に草加次郎という人物なのか。犯人の目的は?犯人らしき人物はあっさりと分かる。ミステリーとは思えず、ちょっと先の読めない小説である。犯人側や、警察側など、いろいろな視点が入れ替わってストーリーは進行する。

物語の中で、マルクス主義について語られる部分がある。しかし、いささか時代錯誤という感が否めない。まあ、舞台が昭和39年なので仕方ないのだが。マルクスは、資本主義が世界中に行き渡り、その頂点にある国が崩壊すると予言したらしい。しかし、現実はどうか。サブプライムショックがあったとはいえ、アメリカはまだ崩壊してはおらず、そのずっと前にソ連はロシアに変わり、中国は資本主義経済を取り入れている。共産主義と比べて、どちらがより優れたシステムであるかは明らかであろう。

読んでいくうちに、だんだん作者の言いたいことが分かってくる。彼は、第二次大戦前でも戦後でも、人民が搾取される構造は変わらないといいたいのだ。身分の低い(エリートでない)人々は、劣悪な環境の中で黙々と働き、死んでも労災認定すら受けられない。この民主主義と銘打たれた社会の抱える矛盾。そんなことを伝えたいのだろう。

この本を読んで、改めて共産主義の欠点が分かった。住居がタダで、食料も平等に配分されるなら、誰も真面目に働こうとは思わないだろう。易きに流れる。それが人間の性質だ。共産主義にしても、そのシステムを管理する人間が必要であり、その人々が上に立つ。そうすれば、どうしても格差が生じてくる。誰でも分かる理屈である。

面白くは読めるのだが、クライム・ノベルとしてはいまひとつか。あっと驚くような奇抜なアイデアがあるわけでもなく、特に前半はアクションシーンもない。それでも、後半になるとミステリー的な要素も加わり、アクション・シーンも出てきて、すらすらと読める。しかし、全体としては、もうひとひねり欲しいところである。



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2009年04月15日

グリーン革命

「グリーン革命」           トーマス・フリードマン
★★★★






アメリカはいったいいつまで世界の1でいられるのだろうか―サブプライムショックで分かるように、アメリカの動静は世界中に影響を及ぼす。逆に言えば、アメリカは常に世界をリードする存在でなければ困るのだ。この本は、その一つの方策を示す。オバマの言葉にあるように、今ほど「change」の必要なときはない。

グローバル化やIT革命によって、中国とインドだけで数千万人がミドルクラスの生活ができるようになった。IT革命は、アメリカだけでなく、世界の人々をも救ったのである。グリーン革命も、当然アメリカだけでなく世界を変え、地球規模の問題を解決できるものでなくてはならない。

この本によれば、中国やインドの台頭により、ヨーロッパの社会システムが変わりつつあるらしい。低賃金で働く中国人やインド人のために、フランスは週35時間労働を維持できなくなっている。また、北欧の福祉国家のシステムも崩壊しつつあるという。私は、日本が目指すべき次の社会モデルは北欧型の福祉大国だと思っていた。それがうまくいかないのなら、日本はどこに目標を置けばいいのだろうか。その答えは本書にある。

現在世界が直面しているピンチは、逆にチャンスでもある。新たなクリーンエネルギー・システムを作れば、その国はエネルギー大国として多大な利益を得られるからだ。

筆者によれば、自然保護と消費は両立できるそうだ。現在の消費スタイルを保ちながら、環境も保護していく―そんな夢のような話が可能になるらしいのだ。もちろん、消費者の意識の大幅な変化、生活面でのイノベーションが必要ではあるが。しかし、これを実現するのは簡単ではない。グリーン革命は、地球規模で行わなければ意味がない。みんながプリウスを買ったからといって実現するほど甘くはないのだ。

下巻では、具体的な「グリーン革命」後の世界が描かれている。環境を守り、地球温暖化を防ぎ、生物の多様性を保つ。そんな社会を実現することも可能である。さらに、この社会は、新しいエネルギーサービス産業を生み出す。例えば、エネルギーの使い方についてアドバイスをし、最適なエネルギー節約プランを提供するのだ。このエネルギー革命を進めるためにはインフラの再整備が必要なので、それに関する雇用も創出できる。オバマが、グリーンニューディール政策により数百万人の雇用を生み出すといっていたのは、嘘ではない。太陽光や風力などのエネルギーをもっと積極的に使うことで、温暖化の問題に対応しながらさらなる経済成長が見込める。そして、主要エネルギーとなり得るエネルギー源の発明により、この革命は完成する。実は、このエネルギー源の開発は日本で行われている。人工的に光合成をして二酸化炭素を減らし、水素を作り出してエネルギーとして使おうというものだ。この研究は実現まであと一歩のところまで来ている。もし日本がこの研究を成し遂げれば、一気にエネルギー大国になれる。グリーン革命の完了である。

ただ一つ問題があるとすれば、地球規模でどうやってこの革命を行うかであろう。アメリカ一国だけでは意味がない。成長を続ける中国やインドにこの革命に参加させるのは難しいかもしれない。しかし、グリーン化は世界の流れである。もし中国やインドがかつての欧米の真似を続ければ、人類存亡の危機に直面することは分かりきっている。今こそ変革のときであり、すぐにでも始めなければならない。手遅れにならないうちに。

人類に対する警告であると同時に、未来に希望を与えてくれる書でもある。








グリーン革命
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書評/社会・政治

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2009年03月29日

どちらかが彼女を殺した

「どちらかが彼女を殺した」           東野 圭吾
★★★




シンプルな推理小説である。容疑者は二人。ある女性が殺され、その親友と元恋人が容疑者となる。男と女。どちらにも動機はある。そして、犯人を見つける手がかりとなる物証も提示される。真犯人はどちらか。

私はこの本を読んで、アガサ・クリスティーの「ひらいたトランプ」を思い出した。おなじみ、名探偵エルキュール・ポアロが活躍する。ある部屋で、一人の男が殺される。容疑者はたった4人。トランプのブリッジをやっていた人々が容疑者となる。ポアロは、そのブリッジの記録を見て、その進行の仕方から人々の心理を読み、見事に真犯人を見つけ出す。状況や推理の仕方は違うが、的確で論理的な推理によって読者が真犯人にたどり着けるという点では共通するものがある。また、「ひらいたトランプ」で容疑者を少なくしたのは、読者に対する挑戦だと思われる。ずばりと真犯人を当ててみろと。

驚いたことに、最後まで犯人の名は明かされない。推理のためのヒントは巻末にあるが、それがなければ犯人を当てることは難しいだろう。上質のフーダニットと言える。



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2009年03月15日

魔球

「魔球」                   東野 圭吾
★★★★




昭和39年のセンバツ、九回2死満塁。主人公の須田は「魔球」を投げた。それが勝負を決める1球になった。その後、その試合でキャッチャーをしていた北岡が殺される。

南海の野村(現楽天の監督)が出てくるところや、赤電話、家に電話がないといった設定に時代を感じる。やはり、少し古臭い感じは否めない。

ダイイング・メッセージが出てくるのだが、それにも時代を感じざるを得ない。推理小説には時にダイイング・メッセージが出てくるが、今はケータイがある。そんなメッセージを書く前に、家族か救急車を呼べばいいのだ。だいたい、死ぬ前に事件解決に役立つようなメッセージを書こうなどと思うはずがない。家族や恋人へのメッセージにしたほうが、よほど自然である。…と途中までは思っていたのだが、実際はそれはダイイング・メッセージではなかったのだ。著者の説明は、もっと自然である。

主人公の人物像はよく描けている。その顔や姿のイメージまで浮かんでくるほどに。とても、作者が書いた2作目のミステリーとは思えない。本当によくできている。乱歩賞受賞作の「放課後」も読んだのだが、あまりすごいとは思えなかった。殺人の動機には光るものがあったが。私なら、「魔球」のほうを乱歩賞に選びたい。野球好きとしては特に楽しめる作品である。ただ、前述のように設定が古すぎるので、そのあたりを書き換えれば、現代にも通用する小説になるだろう。



タグ:ミステリー
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2009年03月02日

悼む人

「悼む人」                天童 荒太
★★★★




悼む人。このタイトルを見たとき、どういう話なのかと思った。内容はそのまま、ある若者が日本全国の死者を「いたんで」回る話である。彼はその行為で金をもらうわけではない。特定の宗教を信仰しているわけでもない。ならば何のために…最初はそれが謎である。読み進むうち、だんだん分かってくる。

彼の行動から、作者のメッセージを読み取ってみたい。まず、彼はどんな身分の人も分け隔てなく「悼む」。そこに、キリスト教と共通する思想を感じる。死は誰のもとにも共通して訪れるということ。また、キリストは悪人だろうが貧しかろうが自分を信じる者を差別せずに救った。作者が伝えたいことはそのあたりにあるのではないだろうか。彼の「悼み」により、どんな死者も一種のかけがえのない存在として彼の胸に刻まれる。と同時に、死者はその生の意味を肯定され、この世で意味を持っていた存在として昇華されるのではなかろうか。

私たちは普段、自分たちの中のものさし(善悪の基準)で物事を判断する。死に対してもそうである。ある死者は非難され、別の死者はほめたたえられる。それがどれだけ傲慢な行為なのか、「悼む人」はその行動で示す。前述したように、そこには差別がない。キリストとの行動基準の一致する点も、書いたとおりである。読み進めるうちに、死者を本当の意味で裁けるのは、神だけなのではないか…そんな思いが浮かんでくる。

彼の「悼み」は、最初は単なる自己満足としか思えない。確かにそれはそうなのだが、彼の行動は確実に関わる人を変えていく。あるフリーライターは視点を変えてものを書くようになり、彼の同行者の女性も自分の気持ちの変化に気がつく。彼の「悼み」が、周りの人に死を意識させ、それについて深く考えさせるきっかけになるのなら、そのふるまいにもプラスの意味を見出せる。

世の中にいろいろな宗教があるように、「悼み」にも様々な形があるだろう。この本に示されているのは、その一つのあり方にすぎない。しかし、普通の人が避けがちな「死」を真正面から見すえ、読後に死について考えるヒントを与えてくれる小説として、この本は見事にその役目を果たしている。



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2009年02月22日

夜明けの街で

「夜明けの街で」              東野 圭吾
★★★




中年で妻子持ちのサラリーマンが、同僚の女性と関係を持つ。しかも彼女は、殺人事件の容疑者になってしまう。

不倫などすべきではない―そんなことはみんな分かっている。しかし、している当人たちは真剣なのだ。世界には、いろいろな形の夫婦がある。一夫多妻制もそのひとつだ。女性はどうか知らないが、少なくとも男は同時に複数の女性を愛することができるのだろう。不倫。その意味は、道徳から外れることらしい。しかし、部外者がそれを責められるだろうか。万引き、自転車泥棒、キセル乗車…すべて犯罪であり、道徳から外れる行為だが、たいていの人は、1回ぐらいしたことがあるのではないだろうか。また、キリスト教では悪事を行わなくても、そのことを考えるだけで罪になると主張する。ならば、われわれはすべて罪人であり、不倫をしている人間を非難することなどできない。問題はただひとつ、周りの人間を傷つけてしまうということだ。

人はどこまで人を愛せるのか―この作品の投げかける問いは、根源的で、重い。親子の愛や、夫婦の愛とはまた違う。不倫の愛。社会的に許されないことだけに、よけいにその愛情は強いのかもしれない。しかし、その相手が殺人事件の容疑者だとしたら、それでも愛し続けることができるだろうか。著者は問い続ける。

東野作品らしく、ラストにはちょっとした仕掛けがされている。ただし、それが読者を満足させるかどうかは疑問であるが。
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2009年02月15日

究極の英単語セレクション―極上の1000語

「究極の英単語セレクション―極上の1000語」  向江 龍治
★★★




私は今、英検1級を取るために勉強をしているが、そこで満足するつもりはない。最終的には、TIME,newsweekがすらすら読めるようになりたい。そのためには2万語から3万語が必要だと思っている。そこで、1級を取った後、暗記するつもりでこの本を買った。

すべての単語と熟語に例文がついており、暗記しやすくなっている。CDには単語と例文が録音されており、日本語は録音されていない。

現在の語彙は、9000語から1万語というところだろうか。そのレベルでこの本を読むと、1級レベルの単語がところどころに見られる。この本は3 つのレベルに分かれている。その中で、たとえば、レベル1のroutという単語。これは1級の単語集で覚えた。また、レベル3にもprefaceや flukeなどの1級レベルの単語がある。そういう点から、この単語集は1級レベルの単語も含んでいるようだ。といっても、ほとんどは知っているどころか、見たことも聞いたこともない単語だった。1級を持っている人でも、この語彙集を買う価値は十分にあるだろう。

しかし、英検1級でも、受ける人は1回につきたった6000人ぐらいしかいないのに、その上のレベルを目指す人がどれだけいるのだろうか。私のような者にとっては、非常に貴重な語彙集なのだが、この本がベストセラーになることは、まずありえないだろう。…と思ったのだが、現在この単語集はアマゾンで4000位ぐらいになっている。意外な結果である。それだけ高いレベルで英語を学習する人が増えてきたということだろう。かなりの上級者向け。



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2009年02月01日

連鎖

「連鎖」                  真保 裕一
★★★★




主人公は、検疫所で働く公務員。食品Gメンである。友人の妻と浮気をし、その友人が自殺未遂を起こす。しかし、彼の行動には不審な点があった。そして、彼はジャーナリストでもあり、その取材内容とのつながりも考えられる。果たして、真相は…

問題となるのは、放射能汚染された食物が日本に輸入されていたことである。牛肉やオレンジの輸入自由化の前の話だ。米国産の食品についてはいろいろ悪いうわさがある。アメリカ産の牛肉にはホルモン剤が含まれており、食べた男性が女性化したという話を聞いた。また、輸入が自由化された当初のオレンジにはOPPやTBZという発がん性物質が使われており、とても食べられるようなシロモノではなかった。日本という国は、国民の体のことなどちっとも考えてはいない。

この作品で描かれる主人公は、決してカッコいいヒーローなどではない。事件の真相を知ろうとするのも、友達の妻と浮気をした後ろめたさからだ。かなりマイナスの動機である。しかし、それでも徒手空拳で大がかりな犯罪に立ち向かっていく姿を応援せずにはいられない。勇気とは、必ずしも立派な動機から生まれるものではない。この作品は、「小役人シリーズ」と名づけられている。地位も特殊な技能もなく、一介の公務員にすぎない主人公が、ヤクザに脅されたりしながら真相に迫っていく。そこに読者は等身大の自分を見て、彼に自身を投影し、主人公に感情移入していくのではないだろうか。

江戸川乱歩賞受賞作といっても、中にはその名に値しないと思えるような作品もある。しかし、この小説は、デビュー作ながら、しっかりとどんでん返しもあり、しかも話が2転、3転する。十分に乱歩賞に見合うだけの作品になっている。
posted by 三毛ネコ at 13:23| Comment(5) | TrackBack(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする