2019年11月16日

日本の科学者をめぐる問題を提起した本です。読むと、あまりにひどい現状にあきれます。

「科学者が消える」    岩本 宣明
★★★★



日本人はノーベル賞が好きである。私もその一人だ。近年は日本人が次々とノーベル賞を受賞し、同じ日本人としては喜ばしい限りである。また、この本のデータ(2016年まで)では日本人の自然科学系のノーベル賞受賞者は17人。アメリカ(68人)に次いで2位である。これも嬉しい事実である。

しかし、そうそう喜んでばかりはいられない。理工系の大学院博士課程への入学者が減り続けているのだ。2003年に比べると、2017年では3分の1も入学者が減少している。理由は簡単、博士号を取っても仕事がないからである。いわゆる、安定した仕事を得られないポスドクが多いのである。博士課程修了者で安定した研究職に就けるのは、全体の7%だけだという。

カネの問題もある。博士課程まで行くと、必要な金は大体1028万円。多くの学生はそれを奨学金でまかなう。博士課程を修了すると、500万円以上の借金を抱える人が1割もいる。

こんな現実では、理系の学生が博士になりたがらないのも仕方ないだろう。

現在は、まだ環境が良かった頃の研究者がノーベル賞を取っているが、20年、30年後には受賞者がいなくなるかもしれない。

さらに、論文の数も減り、世界大学ランキングも下がっている。論文の質も落ちている。

この本を読んでいると、現状では日本の科学の将来に希望は何一つないようだ。研究開発費、大学への交付金など、長期的な視野に基づいた抜本的な大学・大学院の変革が必要なのだろう。大学の教員と研究者を分離することも考えなければならない。

この本が、こういった問題解決のきっかけになればいいのだが……。
ラベル:ノーベル賞 科学
posted by 三毛ネコ at 09:41| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月09日

パソコン初心者向けのテクニックを記した本です。効率良く作業をするためのテクニックがたくさん記載されています。

「パソコン仕事が10倍速くなる80の方法」          田中 拓也
★★★★★



初めに断っておくが、この本はパソコン初心者向けである。私もパソコンで仕事をしてはいるが、そんなにパソコンに詳しいわけではない。それでも、パソコンがなければ仕事にならないので、もう少し効率良く仕事をするために読んでみた。

Ctrl+Aで全てを選択、Ctrl+Cでコピー、Ctrl+Vで貼り付けぐらいは知っていたが、アプリケーションキーで「右クリックメニューを表示」、Ctrl+Sで上書き保存などは、恥ずかしながら知らなかった。ずいぶん効率の悪い作業をしていたものである。

実は、このような本は以前にも買ったことがあったのだが、その本は見やすくまとまっていなかったので、結局あまり参照することもなく、本棚に収まったままである。それに比べると、この本は見開きで2ページごとに一連のテクニックがまとまっているので、非常に見やすい。左ページに説明、右ページにパソコン画面の写真という構成になっている。

ただ、もっと便利な時短ワザもある。AHK(オートホットキー)というマクロで、コピーやペーストなら設定したボタンを1つ押せばできるようになる。本当に重宝するマクロなので、興味のある方はググってみてほしい。

私にとっては役に立ちそうなワザが多いのだが、全部で80個以上もあるので、すぐに全てを使いこなすのは無理である。パソコンを使うときに横に置き、少しずつ身に付けていきたい。
ラベル:IT
posted by 三毛ネコ at 14:19| Comment(0) | 実用書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月02日

室町時代を生きた3人の男の物語です。

「室町無頼」                垣根 涼介
★★★★★





時は室町時代。主人公は才蔵である。

室町幕府の将軍、足利義教を殺した赤松満祐の家臣が、才蔵の父だった。しかし、赤松はすぐに倒され、才蔵の父は牢人になってしまった。

その後生まれたのが才蔵である。父親に定職はなく、才蔵は小さい頃から食うにも困っていた。そのため、12歳で働き始める。その後、油の振り売りをするようになる。その仕事の途中で追い剥ぎに遭い、何回か撃退した。その腕を買われ、土蔵の用心棒になる。

ある日、その土蔵に賊が侵入する。才蔵たちは応戦するが、相手の数が多く、才蔵だけが後に残った。才蔵も賊の首領に負けてしまう。しかし、その男……骨皮道賢はなぜか才蔵を殺さず、自分の拠点に連れて帰った。そして道賢は、才蔵を蓮田兵衛という男に預ける。

兵衛の家に居候することになった才蔵。兵衛について行き、その行いをつぶさに見ることになる。兵衛は関所で金を払わず、止めようとする者を全て切り捨てる。その上、関所の金を奪っていく。その一方で、百姓や地侍には親切に相談事を聴いてやる。才蔵、兵衛、道賢……やがて、この3人が大きな事を起こすことになる。

兵衛は、才蔵に師匠を付け、竹生島流と呼ばれる棒術を学ばせると言う。そして10か月間、才蔵は棒術を学ぶ。このあたりから面白くなってくるので、ここから先は触れない。

この小説で最も興味を引かれたのは、才蔵が修行を積み、成長していく過程だった。しかし、前作(光秀の定理)でも感じたが、この著者の時代小説には独特の雰囲気がある。上っ面ではなく、この時代の底を流れる真理、本音のようなものが作品全体に感じられる。それが、ハードボイルド小説を思わせる。そんな雰囲気を含めて、なかなか楽しめるエンタメ時代小説だった。
ラベル:小説 垣根涼介
posted by 三毛ネコ at 12:56| Comment(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月26日

難病にかかった普通の女の子の日記です。

「1リットルの涙」           木籐 亜也
★★★★★
     
  

中学3年生で脊髄小脳変性症を発病し、治療の役に立つようにと、自らの病状を日記に書いていた亜也。この本はその日記をまとめたものである。

亜也一家は両親と5人きょうだいの7人の家族である。

日記は、亜也が15歳の時から始まっている。ある日、亜也は学校に行く途中に転んだ。ひどい転び方で、顎を切って2針縫わなければならなかった。普通なら反射的に手を出して顔を地面にぶつけるのを防ぐのだが、彼女にはそれができなかったのだ。体育の成績も、中1の時は3だったが、中3では1になっていた。

まともに歩けなくなっていく亜也は、病院で検査を受ける。今や亜也はゆっくりとしか歩けず、歩き方も普通ではない。それでも、彼女は公立の高校に合格する。

しかし、状態は良くならず、亜也は高校1年の夏休みに1か月間入院する。

その後、高校には通うのだが、また転んで前歯を3本折ってしまう。高校の行き帰りもタクシーかバスを使わなければならない。また、右足のアキレス腱が硬くなってきていた。学校で教室を移動するのもひと苦労である。昼食も、体が思うように動かず、ほとんど食べられない。

体はどんどん動かなくなっていく。その間の亜也の思いが綴られる。病気が悪化していくため、高校2年で身体障害者のための学校に転校することになる。その後の展開は、読んでいただきたい。

この本の主人公である亜也は決して強い人間ではない。ヘレン・ケラーのように三重苦を乗り越えてハーバード大学を卒業するわけでもない。しかし、泣き虫で、すぐに傷つき、落ちこむ彼女の方が私たちのような一般の人間により近く、共感しやすいとも言える。普通の女の子がハンディキャップを抱え、色々悩みながら限られた生を生き抜いた物語。残す価値のある日記である。
ラベル:多読 リライト
posted by 三毛ネコ at 13:28| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月19日

このシリーズ好きです。馳さんにはノワール以外も書いて欲しいと思います。

「雨降る森の犬」               馳 星周
★★★★★



馳さんの、犬がテーマの小説、第3弾である。

主人公、雨音は伯父の道夫に連れられ、道夫の家に行く。彼女は母の妙子と一緒に東京に住んでいた。しかし、母はボーイフレンドを作り、その後を追ってニューヨークに行ってしまった。雨音は日本に残った。ひとりで暮らすことに母が反対したので、道夫と暮らすことを選んだのだ。

道夫は、ワルテルという名の大型犬、バーニーズ・マウンテン・ドッグを飼っていた。しかし、最初は雨音には懐かなかった。急に走り出してリードを持つ雨音がケガをしたこともあった。

2週間もすると、学校や新しい環境にはなじんできたが、ワルテルのほうは、雨音を子分と見なしていて、素直に言うことを聞いてくれない。そのころ、隣の別荘に泊まりに来た、正樹という若者と知り合う。ワルテルは正樹に懐いていた。

雨音を中心として、田舎での正樹やワルテルとの触れ合いが描かれる。あっと驚くどんでん返しはないが、ちょっとした登場人物の心の動きや出来事が、優しく読者に語りかけてくる。母との折り合いがうまくいっていない雨音。継母と仲が悪い正樹。そんな2人を道夫が見守り、ワルテルが絶妙な緩衝材となってくれている。

ほのぼのするだけの物語ではないが、犬好きにとっては読んで損のない一冊。
ラベル:馳星周 小説
posted by 三毛ネコ at 08:55| Comment(0) | エンターテインメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする