2008年12月07日

誘拐の果実

「誘拐の果実」               真保 裕一
★★★






大病院の医者の娘が誘拐される。犯人の要求はある患者を殺すこと。とても不可能に思える要求だが、その医者は妙案をひねり出す。そして、もう1つの誘拐。果たして、その驚くべき真相は―

誘拐。確かに卑劣な犯罪ではあるが、主人公たちはその事件をきっかけにしてばらばらだった家族関係を見つめなおし、ひとつにまとまっていく。真相を知ったとき、きっと読者はすがすがしい感動を覚えることだろう。真相は意外性があり、面白い。

しかし、1つ不満がある。展開が遅すぎるのだ。東野圭吾の作品に、「ゲームの名は誘拐」がある。その名の通り誘拐ものだが、心理描写などはほとんどなく、スピーディーに話が進んでいく。しかし、クライム・ノベルとしては十分楽しめる。テンポがいいので、どんどん読み進めることができるのだ。それに比べると、この小説は描写が丁寧である。少し丁寧すぎて、しつこく感じる。ホワイトアウトでは、それが見事にはまっていたのだが、この本はそうとは言えない。正直言って、何度この本を投げ出したくなったことか。細かく描かれすぎていて、読むのが面倒になってくるのだ。まあ、それが著者の作風なのだが。テーマや内容によっては、あっさりとスピーディーな展開にすることも必要である。それができるようになったとき、彼は直木賞を取れるのかもしれない。
posted by 三毛ネコ at 15:12| Comment(4) | TrackBack(2) | クライム・ノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。コメントありがとうございます。

やはり、この長さが気になる方は多いようですね。僕は描写の細かさから来る長さは真保さんの作品の特徴のように思うので、気にはなりませんでした。

トラックバックさせていただきました。
Posted by shiba_moto at 2008年12月16日 23:57
そうですね。確かに、ほかの作品を読んでも、細やかな描写が特徴のようです。しかし、場合によっては、それをばっさりと切り捨てることも必要だと思います。…と言いつつ、ほかの作品もどんどん読んでいこうと思っています。
Posted by 三毛ネコ at 2008年12月17日 13:18
三毛ネコさん

初めまして。トラックバックありがとうございました。拝見させて頂いて「誘拐の果実」と「灰色の北壁」の違いが、その緻密な描写にあるというのに納得です。
同じ緻密で丁寧な描写でもジャンルによって、作品を活かしたり殺したりしてしまうものなのですね。

またお邪魔させていただきますー
Posted by toyodana at 2009年01月12日 12:30
灰色の北壁は、中篇だったせいか、一気に読みきることができ、真保作品にありがちな冗長さがありませんでした。やはり、長すぎると感じるかどうかは、テーマによりますね。今読んでいる「奪取」は、長いのですが、まったくそれを感じさせません。
Posted by 三毛ネコ at 2009年01月13日 08:28
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