2016年10月22日

命の遺伝子

「命の遺伝子」                       高嶋 哲夫
★★★★



トオル・アキツが主人公。ドイツのベルリンから物語は始まる。彼は遺伝学者である。

そのころ,ネオナチの集会で爆発があった。ナチスの戦犯を追っている組織が,爆発の後,ある人の手首を回収した。その人物の推定年齢,112歳。しかし,その手首を見る限り,彼は40代としか思えない。いったいどうなっているのか・・・

最初に提示された謎に加え,アクション・シーンもあり,エンターテインメントとしては十分に成立している。引きこまれて最後まで,というほどではないが,楽しみながら読める。文章もすっきりしていて読みやすい。ただ,遺伝子スリラーとしては最高のものとはいえない。私が読んだ作品の中では,「イエスの遺伝子」が傑作だった。イエス・キリストの遺物からDNAを採取し,その「いやし」の秘密を知ろうとする話である。その面白さに,一気に読んでしまった記憶がある。

それほどではないが,この小説のテーマも悪くはない。十分に読ませる力は持っている。

ある登場人物が言う。「人は死があるからこそ人と言えるのです」と。私たちはみんな不老不死を願う。しかし,それが実現した時,果たして幸せといえるのか。家族も友人も子供も,もちろん師と呼べる人も,すべて死んでいく。しかし,自分だけは生き続け,愚かな人間たちの営みを見続けなければならない・・・そう考えた時に,死は恐怖であると同時に一種の救いでもあることに気が付く。

私はクリスチャンであるが,やはり神の意思に逆らってまで生きたいとは思わない。人間らしい死が迎えられればいい。それが神の望みならば・・・

この本のテーマは根元的で,重い。
ラベル:高嶋哲夫 小説
posted by 三毛ネコ at 12:11| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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