2018年06月10日

アウンサンスーチー・ストーリー

「アウンサンスーチー・ストーリー」           タイラー・バーデン
★★★★★



アウンサン・スーチーの母は政府で働いていて、とても厳格な人だった。例えば、紅茶とビスケットがおやつに出た時、他の子供はビズケットを紅茶に漬けて食べたが、スーチーにはそれが許されなかった。食事中、常に姿勢を正しているようにもしつけられた。

スーチーは勉強がよくできた。特に、語学が得意だったという。頑固で、善悪に対してこだわりがあったらしい。

趣味は読書。小さい時の夢は父のように将軍になることだった。しかし、そのころは女性は軍隊には入れなかったので、彼女の夢は「作家になること」に変わった。

そのうち、母がインド大使に任命され、一家はインドに移住する。そこでスーチーはインドのトップ大学の一つに入学し、政治学を学ぶ。そこから、オックスフォード大学に入り、哲学と経済を学んだ。オックスフォード時代に、その後夫になるマイケルと出会い、1日で恋に落ちた。

その後、スーチーはニューヨークの国連で仕事をするようになる。仕事は退屈だったが、組織とはどのようなものか知ることができた。

それから、マイケルと結婚し、研究のために来日したり、ロンドン大の大学院生になったりもする。その時、母が危篤になってミャンマーに戻り、国民民主連盟(NLD)を結成し、政治的活動を始めるのだ。

死をも恐れず、ミャンマーの民主化へと行動し続ける彼女の姿勢には感銘を受けた。やはり、信念や信仰を持っている人は強い。そんなことを実感させられた。
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2018年05月26日

本田宗一郎物語

「本田宗一郎物語」                    西海コエン
★★★★★



本田宗一郎。言わずと知れた、世界の「ホンダ」の創業者だ。

父親は鍛冶屋をしていた。宗一郎は子供のころから機械が好きだった。父の仕事にも興味があり、少し大きくなるとその仕事を手伝うようになった。

浜松に住んでいた宗一郎は、そこでオートバイを作るのが夢だった。それは、藤澤武夫と出会って実現することになる。後に宗一郎と共に「ホンダ」を世界的企業に育て上げる藤澤は、宗一郎の才能に魅せられ、共にベンチャー企業を立ち上げる。藤澤は会社の財政面を引き受けた。

宗一郎は、かなり激しい気性の持ち主だったようだ。また、子供時代から機械油の臭いが好きだったという。こんなところからも後の仕事につながる素質を持っていたことがうかがえる。

16歳で小学校を卒業すると、東京の自動車の修理会社(アート商会)に就職する。初めは子守りや家の掃除しか任されなかったが、徐々に車の修理も任されるようになる。

その頃に、東京は関東大震災に襲われる。しかし、宗一郎は地震や火災で使えなくなった車を修理して売る。同じ時期に、頼まれて消防車のエンジンを見事に修理してみせる。すると、周りの態度が一変し、「本田教授」と呼ばれるようになる。

22歳になると、アート商会の社長に「もう教えることはない」と言われる。この時が、宗一郎の起業家としてのスタートだった。

宗一郎は人真似が大嫌いだった。オリジナルにこだわっていたのだ。気難しい性格だったが、社長として威張ることはなく、社員と一緒になって働いた。

25歳の時には自動車で特許を取り、金が入ってくる。しかしもちろん、宗一郎はそんなことでは満足せず、もっと上を目指して走り続ける。

そして宗一郎はチャレンジを続け、世界に通用する自動車メーカー、ホンダを作り上げていく。「アメリカン・ドリーム」というのはよく聞くが、宗一郎は日本では少ない「ジャパニーズ・ドリーム」を体現したのだ。その努力とチャレンジ精神には感心せずにいられなかった。
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2018年05月19日

ネルソン・マンデラ・ストーリー

「ネルソン・マンデラ・ストーリー」                  タイラー・バーデン
★★★★★



ネルソン・マンデラは南アフリカ共和国の小さな村で生まれた。アフリカの部族の首長の家に生まれ、きょうだいが13人いた。マンデラは一家の中で初めて学校に通った。しかし、マンデラが9歳の時、父親が亡くなってしまう。だが、力を持った友人にマンデラのことを頼んでいたので、それまで通り学校に行けた。

16歳になると、部族の慣習で割礼を受ける。ひどい痛みを伴う儀式だが、この儀式を受けることには、一人前の男になったという意味があるのだ。そして近くの町、クラークベリーのキリスト教系の寄宿学校へと進学する。

田舎なまりの言葉をバカにされたりしながらも、無事に学校を卒業し、ヒールドタウン・カレッジに入学する。そこで、イギリスの歴史や地理学などを学ぶ。ここでマンデラは黒人に対する人種差別を目の当たりにする。

2年後にはフォートヘア大学に入る。ここは当時、南アフリカ共和国で唯一の黒人向けの大学で、生徒は150人しかいなかった。そこで彼は法律や政治などを学ぶが、その時なりたかったのは通訳だった。この大学では、学生のリーダーに選ばれ、食事の質について大学側と交渉をしたのだが、そこで、大学側から退学以外にリーダーを辞める方法はないと言われ、本当に退学してしまう。

その後、ヨハネスブルクに行くマンデラ。そこで、法律事務所の事務職の仕事を得る。その頃の彼は貧しかった。職場に行くのも、20kmを歩いて通うような状態である。

そして、途中でドロップアウトしたフォートヘア大学に戻り、今度はきちんと卒業する。次に、ヴィットヴァータース大学の法学士課程に入学する。そこでも差別を経験し、アフリカ民族会議(ANC)に参加するようになる。これがマンデラの政治的活動の始まりだった。だが、その活動に満足できず、「アフリカ民族会議の青年同盟」を設立する。そして、マンデラはANCの中で中心的な存在になっていく。しかし、活動に時間を取られ、ヴィットヴァータース大学は卒業できなかった。

本格的に人種差別廃止活動を始めたマンデラ。しかし、もちろんそんなにスムーズに事が進むわけがない。逮捕されたり、集会に参加するのを禁止されたり。しかし、そんな状況にも屈することなく、彼は活動を続けていく。

あまり書くと面白くなくなるので、このあたりでやめるが、最後まで読むと、マンデラは想像以上の過酷な状況を乗り越えてノーベル賞を受賞し、アパルトヘイトを撤廃したことが分かる。まさに「偉人」という名称にふさわしい。その生きざまに感服した。
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2018年04月21日

スティーヴン・ホーキング・ストーリー

「スティーヴン・ホーキング・ストーリー」            ニーナ・ウェグナー
★★★★



著名な宇宙物理学者、ホーキング博士の伝記。

フランクとイザベルの間に生まれたホーキング。フランクは医者、イザベルはオックスフォード大学を卒業した。

ホーキングは、小さいころは学校や勉強に興味がなかった。関心があったのは、ボードゲームなどのゲームをすることだった。自分でゲームを作ることもあった。父はホーキングを医者にしたかったのだが、ホーキング自身は星の方に興味があった。大学はオックスフォード大学に進み、数学を専攻したいと思っていたのだが、父の勧めで物理学を専攻することにした。授業は簡単で退屈だったが、「宇宙はどのように動いているのか?」という疑問が彼の知的好奇心を刺激した。卒業後はケンブリッジの大学院に進み、現代宇宙論の父、デニス・スキアマに師事する。この時代には、定常宇宙論とビッグバン宇宙論の2つがあり、どちらが正しいかは分かっていなかった。後に、ホーキングはこの議論において重要な役割を果たすことになる。

オックスフォード大学時代にはボート部に所属し、舵手を務めた。しかし4年の時、思い通りに体が動かないことに気づく。そしてケンブリッジの大学院生になった時、ALSと診断される。もちろん最初は落ち込んだのだが、病院で白血病の少年が死ぬのを見て、自分には達成すべき夢があるのでそんなに悪い状態ではない、と自分に言い聞かせるのだった。そしてそのころ、後に妻となるジェーンと出会ったことも大きかった。彼女のおかげでホーキングは希望を失わずにすんだのだ。

その後、仕事で名声を得る一方で、だんだん体の自由は利かなくなっていく。ついには、自力で呼吸が出来なくなる。人生とはままならないものだ。

しかし、体の自由が利かないからこそ、ホーキング博士はその希有な頭脳をフル回転させることに集中できたとも言える。ホーキング博士にはもう少し長生きしてもらって、宇宙の謎を少しでも解き明かしてほしかった。
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2018年04月09日

赤毛のアン

「赤毛のアン」                  L・M・モンゴメリ
★★★★



誰もが知っている「赤毛のアン」。リライトされた文章で読まないほうがいいかな、と思ったのだが、勢いで買ってしまっていたので、読むことに決定。

主人公はもちろんアンである。両親がおらず、マシューとマリラと共にグリーンゲイブルズで暮らすことになる。

アンはそばかすだらけの女の子。自分が美しくないことを自覚している。しかしとても明るく、おしゃべりな女の子である。

しかし、マシューたちは農場を手伝ってもらえる男の子が来ると思っていたことを知り、アンは泣き出してしまう。だが、考えた末にマシューたちはアンを引き取ることに決める。

アンは新しい学校のクラスで一番成績が良かった。彼女にはダイアナという親友がおり、同級生にはハンサムな少年、ギルバートがいた。アンが窓の外を眺めて夢想していたとき、ギルバートが彼女のお下げ髪を引っ張ってからかった。アンは怒り、自分の黒板(この時代には紙のノートがなかったのだろう)をギルバートの頭に叩きつけた。アンは罰として、その後黒板の前に立たされる。

アンはギルバートが許せず、二度と学校に行かないと宣言する。

その後も、いろいろな出来事がありながらアンの多感な少女時代は過ぎていく。

青春を精一杯謳歌しているアンの生活の楽しさが十分伝わってくる作品だった。
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2018年03月03日

松井秀喜バイオグラフィ

「松井秀喜バイオグラフィ」             広岡 勲
★★★★★



ご存じ、元メジャーリーガー松井秀喜の伝記である。

松井は生まれたときから大きかった。体重3950gもあったのだ。松井の小学校2年生の時の写真が載っているが、同級生よりも頭1つ以上大きいのだ。

父親が野球ファンで、小さいころから松井とキャッチボールをしていた。松井は負けず嫌いだった。4学年上の兄たちと一緒に野球をするのだが、松井が一番遠くまでボールを飛ばしていたという。

もともと右バッターだった松井が左打ちに変えたのもこの時期である。しかし、兄たちが中学生になってしまうと、この野球ゲームは自然消滅した。その頃、松井は柔道に興味を持ち、始めることにする。小学4年で160cm、60kgだったので、すぐに強くなり、5年生で出た大会でもいい成績を残す。

だが、野球の楽しさを忘れていなかった松井は、地元のリトルリーグのチームに入る。誰よりも遠くに打球を飛ばし、すぐにレギュラーで4番になる。その頃から、プロになって世界一の選手になりたいという夢を持つようになった。

中学でももちろん野球部に入る。中学の監督はスパルタ指導をした。とにかく松井を走らせた。その頃の松井は変化球が打てなかった。しかし、練習によって打てるようになり、松井に打たれたボールはそのパワーのせいですぐに潰れ、使えなくなってしまった。中学3年になると、キャッチャーからピッチャーに転向する。すぐにチームのエースピッチャーになった。その上、4番でキャプテンである。

その春の最初の試合で、松井は四球で歩かされる。打つ気満々だった松井はバットを投げ捨て、ピッチャーをにらみつける。そこで監督が出てきて、松井を殴り、注意する。松井は、道具を大事にすべきだということ、そして四球で勝負を避けられたからといって怒りをあらわにするべきではないことを学ぶ。

星陵高校に入っても、松井の力はずば抜けていた。バッティング練習では120m以上ボールを飛ばすのである。高校1年でファースト、4番を打つが、甲子園では3打数ノーヒットだった。それで、松井はそれまで以上に努力した。

彼には一つの信念があった。「努力できることが才能である」という、父から贈られた言葉である。

ここから、伝説となる甲子園での5打席連続敬遠、巨人での活躍、メジャーリーガーとしてワールドシリーズMVPなどの輝かしい成績につながっていくわけである。

「努力できることが才能である」。この本を読むと、松井はまさにこの信念を持ち、それを体現した努力型の天才であることが分かる。自分ももっとがんばろうと思わされた一冊だった。
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2018年02月17日

アイデアのつくり方

「アイデアのつくり方」              ジェームズ・ウェブヤング
★★★★★



どうすればアイデアは出てくるのか。米国最大の広告代理店で働いていた著者がこの質問に答えたのが本書である。

アイデアの基本になるのは知識である。これはよく分かる。ミステリーをろくに読んだこともない人がいきなり新しいミステリーを書くことは無理だろう。しかし、知識だけでは十分ではない。

著者によれば、アイデアを出すのは、自動車のフォードを生産する過程に似ているという。アイデアは、工場の組立ラインのように、学び、コントロールすることができる頭の中の効果的なテクニックで、道具を使うのと同じく、頭の中のテクニックの使い方によって生み出されるものだという。

その後には、アイデアの創出をしやすくする方法は何か?ということが書かれている。それは、アイデアを出す原理と方法を学ぶことだという。

この本によれば、アイデアは古い要素を新しく組み合わせたものである。そして、古い要素を組み合わせて新しいものを生み出すには、関係を見抜く力が必要である。一見バラバラの知識が、ある人にはつながった一連の知識のように見えるのだ。それができる人はその一連の知識から一般的な原理を抽出し、それを新しく組み合わせ、それがアイデアとなるのだ。

具体的な方法は本書を読んでいただきたいが、ちょっとヒントを書いておくと、カードを使ってアイデアを出す。

私は小説を書いてみたいという思いがあり、そのアイデアを得る役に立つかと思ってこの本を読んだのだが、アイデアを得られそうな方法は記されている。広告のアイデアを得る方法なので、そのままでは十分ではないと思うが、自分なりにアレンジすれば、小説のアイデア作りにも十分使えそうだ。短いが、内容のある本だった。
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2018年02月10日

地球温暖化

「地球温暖化」                   石井 正仁
★★



地球温暖化の要因となるオゾン層の破壊、温室効果ガスなどについて科学的に説明された本。

地球の気温は1980年から確実に上昇している。その原因の一つが温室効果である。しかし、温室効果は人間が生きるために必要なものでもある。もし温室効果がなければ、地球の気温はマイナス18°Cだという。

地上から14kmの対流圏が、地球温暖化にとって最も大きな意味を持つ。地球を3mのボールとすれば、対流圏はたった0.03mmの厚さしかないのだ。しかし、対流圏はほぼ全ての気象現象の要因になっている。

オゾン層の破壊など、誰もが知っていることも説明されている。

ヨーロッパは日本の札幌よりも北にあるが、南の海からの暖かい海流のおかげで、わりと穏やかな気候である。しかし、温暖化が進むと、地球全体が暑くなる一方で、西ヨーロッパなどは数十年の間寒冷化するという。

また、「比熱」という聞き慣れない言葉を知ることもできる。これは、1gの物質の温度を1°C上げるのに必要な熱量らしい。

地球温暖化などを科学的に解説しているが、内容はだいたい知っていることだったので、専門用語が出てきても、わりとスンナリと読めた。しかし、800円も出して買わなくても、図書館で借りて読めばすむ程度の本だった。
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2018年01月27日

屋上の黄色いテント

「屋上の黄色いテント」                    椎名 誠
★★★



主人公は藤井というサラリーマン。住んでいたアパートが火事で焼けてしまう。

とりあえず、使えそうな物をトランクと段ボール2箱に詰め込む。

藤井の部屋は焼けておらず、消火の時に水浸しになっただけだったのだ。そして同じアパートに住む古川さんに荷物を預かってもらう。友人の相原の家に泊めてもらおうと家まで行くが、ガールフレンドが家にいたため、諦める。しかし、そこで相原から登山用のテントや寝袋を借りることにする。2人は高校時代からの友人で、山岳部に所属していたのだ。しかし、泊まれる場所の当てはない。

さて、どうするか。テントや寝袋で眠れそうな公園などを探すが、見つからない。そこで、警官に呼び止められてしまう。まあ、スーツ姿で寝袋やテントを持ってうろついているのだから、怪しまれて当然だが。

そして、いい考えもないままに、藤井はある場所へ向かう。彼はどこに泊まるのか?そして、この後の展開はどうなるのか。

主人公はある場所で一時的に暮らすことになるのだが、そこで東京という都市の様々な営みを目にすることになる。

有名な作家なので、名前は知っていたが、椎名誠の小説を読むのは初めてだった。まあまあ興味深く読めたが、他の作品も読みたい、と思うほどではなかった。
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2017年12月23日

イン・ザ・プール

「イン・ザ・プール」                奥田 英朗
★★★★



大森和雄(38歳)は原因不明の体調不良で神経科にやって来た。その科の担当医が伊良部一郎。ちょっと変人の、太った、40代前半の医者だ。

和雄の症状は突然現れた。ある夜、突然息苦しくなり、ベランダに出たが、元の状態に戻るまでしばらくかかった。次は下痢である。家から電車の駅に行くまでに大便を漏らしてしまうことが何回かあったのだ。

伊良部は、それは不定愁訴と呼ばれており、原因はストレスだと言う。結局、和雄はその日、抗生物質を注射してもらって帰る。

和雄は伊良部のアドバイスに従って運動をしてみようと考える。彼が選んだのは水泳だった。近くのジムのプールで泳いでみると、思った以上に楽しかった。そして和雄は水泳に熱中していく。その様子を聞いて、伊良部も水泳を始める。

しかし、和雄の水泳への熱中ぶりは少し度を越していた。いわゆるランナーズハイに近い状態になっていたのかもしれない。

読む前は、伊良部という医者がズバズバと患者の悩みを解決する話なのかと思っていたが、そうでもないようだ。そして、ストーリーは意外な方向に・・・この物語はどう収束するのだろうか。

身体の不調を訴える患者と、ちょっと変わり者の医者。ミステリーでも、サスペンスでもクライム・ノベルでもない。多読教材でなければまず読むことはないジャンルである。しかし、嫌にならずに最後まで読めたので、英語に訳されているとはいえ、やはり相当の筆力を持った作家であることが分かる。
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2017年12月02日

エドガー・アラン・ポー怪奇傑作選

「エドガー・アラン・ポー怪奇傑作選」         エドガー・アラン・ポー
★★★★★



エドガー・アラン・ポーの短編集3つを収録した本である。

・黒猫 「私」の独白という形で物語が展開する。小さいころから動物好きだった私。両親はそれを知ってたくさんの動物を飼わせてくれた。しかし、大人になって大酒を飲むようになり、「私」の性格は変わってしまう。妻を殴ったり、動物にもひどい仕打ちをするようになったのだ。そして、飲み過ぎて帰宅したある日、愛猫プルートに対して彼がした仕打ちとは・・・そんなことをした理由が描写されるが、とても共感できない。だんだんと狂気に犯されていく男の特殊な心理が描かれる。日本語で読んでいたら気分が悪くなるような話である。

・ウィリアム・ウィルソン この話も「私」の一人称で語られる。私は一族から想像力と激しやすい性格を受け継いだ。我が強く、自分の意志のみに従って生きていた。しかし、「私」と同姓同名の生徒(ウィリアム・ウィルソン)だけは「私」の言葉に従わなかったのだ。そしてその同姓同名の男と「私」は誕生日まで同じだった。ほぼ毎日、私とその男は口論をしていた。ウィルソンは「私」にとって厄介な存在だった。その後の人生でも、先々にもう一人のウィリアム・ウィルソンの影が・・・彼は一体何者なのか?それはラストで明らかになる。

・黄金虫 「私」が友人のルグランを訪ねた時、ちょっと変わったコガネムシを発見したことを知る。ルグランは虫の収集が趣味なのだ。しかし、その発見の後、ルグランの様子がおかしくなった。何か計算ばかりしているのだ。そしてルグランの召使いのジュピターに連れられて、「私」がラグランのところへ行くと、彼は一生懸命何かを探しているようだった。どうやら、彼が探しているのは伝説の財宝のようだ。果たして、そんなものが本当にあるのだろうか?わずかな手がかりから鋭い推理をしてみせたラグランの洞察力には感心した。人も死なず、読後感も良い短編だった。
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2017年11月25日

ローマの休日

「ローマの休日」              イアン・マクレラン・ハンター
★★



有名な映画のノベライズ板のようだ。映画とはちょっと違うのかな、と思って読んでみた。

主人公はアン王女。ローマを訪れているのだが、しなければならない公務の量にうんざりしている。そこで、アン王女は庭に止まっていた小さなトラックの荷台に乗って大使館を脱出する。しかし、アンの主治医が処方した睡眠薬が効いて、公園のベンチで寝てしまう。そこへ通りかかったのが新聞記者のジョー。公園で寝ようとしているアンを捨てておけず、自分の家に連れて行く。

そのころ、大使館は大騒ぎになっていた。アン王女の行方を案じる大使たち。一方、ジョーはアン王女のインタビューのことで上司のヘネシーに会いに行く。そこで新聞を見たジョーは、王女が昨夜会った女性であることに気づく。

そしてジョーは、彼女のプライベートや夢、恋愛などについて個人的にインタビューすることを思いつく。それが5000ドルの価値があると言われ、がぜんやる気になるジョー。

アン王女と話し、カメラマンのアービングを呼んで、王女のネタを集めようとするのだが、彼女に付き合って行動するうちに、ジョーの心境に変化が・・・

映画の方は2回見たが、このノベライズ板が映画と全く同じだったので、ちょっと興ざめだった。まあ、読んだ分だけ自分の英語力のプラスになっていればいいのだが。この作品に関しては、ノベライズ板より断然映画を見るべきだと思う。
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2017年11月11日

エジソン・ストーリー

「エジソン・ストーリー」            ジェイク・ロナルドソン
★★★★



トーマス・エジソン。誰もが知る、世界の発明王である。その彼が生まれたのは、アメリカ、オハイオ州だ。エジソンは小さいころから、物が何でできているのか、その中に何があるのかといったことに興味を抱いていた。好奇心が旺盛で、なぜ鳥は飛べるのかと思って実験をしたり、ミツバチの巣の中はどうなっているのかと思い、解体してハチに襲われたりもした。

小学校に行くようになると、エジソンは学校にとって最悪の生徒になった。教師はエジソンをどう扱ったらいいのか分からず、母親が家で勉強を教えることにしたのは有名なエピソードである。

母がエジソンに読み書きを教え、エジソンはすぐに父親の蔵書を全て読み終わってしまった。ある日、母がエジソンに科学の本を買ってやると、エジソンは興味を持ち、科学の本を大量に読むようになる。電気にも興味を抱き、その実験もするようになる。

しかし、金が足りず、列車で新聞などを売って実験費を稼いだ。それが当たって、3人も人を雇ってこのビジネスをすることになるのだ。エジソンは列車の中で最新ニュースを印刷するようにして、新聞をたくさん売った。まだ14歳の時である。

その後、エジソンは電信技師になる。耳が悪かったので、他の仕事より彼に向いていたのだ。エジソンの最初の発明は「ダブル・トランスミッター」だった。一度に2つのメッセージを送れる通信機で、便利だったのだが、残念ながら買ってくれる会社はなかった。

しかし、そこからエジソンは次々と新しい発明をしていく。そして誰もが知るように、実用的な電球、蓄音機、映画のカメラなどを発明し、大発明家となっていくわけだ。

読むと、エジソンが挫折や困難を乗り越えて発明に人生を賭けていたことが分かる。天才発明家の人生をたどることは、興味深い読書体験となった。
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2017年10月29日

不思議の国のアリス

「不思議の国のアリス」            ルイス・キャロル
★★★★★



主人公のアリスは川べりに座って退屈だった。お姉ちゃんの本を覗いてみても、絵も会話もない本で、つまらない。そこへ、なぜかとても急いでいる白ウサギが通りかかり、興味を持ったアリスは後を追う。ウサギは走ってウサギ穴の中に入り、アリスも続く。穴の中の壁は本棚で一杯だった。そしてアリスは穴深くにどんどん落下していく。地球の裏側に出るのではないかと思いながら。

ようやく落下が止まると、そこは不思議の国だった。そしてアリスは鍵のかかったドアだらけの部屋に取り残される。部屋から出ることができず、困ってその部屋にある液体を飲むと、体が小さくなった。それでも部屋から出られず、そこにあった小さなケーキを食べると、また元の大きさに戻る。

そんなドタバタがあり、白ウサギには召使いと間違えられ、手袋とうちわを持ってくるようにいわれる。その途中で、アリスはまた、発見した液体を飲み、部屋いっぱいまで体が大きくなってしまう。どうにもならなくなって困り、そこにあったケーキを食べて体が小さくなり、やっと外へ出られる。さて、この不思議の国でアリスはどうなってしまうのか。彼女を待ち受ける運命は?

その後も、タバコをふかすイモムシが出てきたり、魚の顔の従僕が現れたりと、奇想天外な話が展開する。

作家の想像力のたくましさを存分に堪能した一冊だった。
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2017年10月21日

日本の経済

「日本の経済」                 小林 佳代
★★★



日本の経済を解説した本。といっても、2005年に出た本なので、最新の経済状況については書かれていない。

戦後の日本の再建は傾斜生産方式で始まった。石炭や鉄鋼などの第一次産業に力を入れたのである。そして、1956年には経済白書に、有名な「もはや戦後ではない」という言葉が現れる。

所得倍増計画の下、GNPは2倍になった。東京オリンピックも開かれ、1968年にはGNPで世界2位になる。

もちろん、いいことばかりではなく、水俣病やイタイイタイ病の発生など、経済発展の陰の側面もあるのだが。

1980年代後半には「バブル経済」が到来する。そのころは、地価は絶対に下がらないという「土地神話」がまかり通っていた。しかし、政府や日銀がバブルを抑えようとしたことが原因で、バブルは崩壊する。それから、失われた10年に入って今に至るわけだ。

ほかにも、日本独自の管理システムについても説明されている。株式持ち合い、メインバンクシステム、トヨタのカイゼンとカンバン方式など。

戦後、官僚が主導して日本を発展させてきたことも説明されている。しかし、規制緩和や産業の自由化につれてそのシステムも変わっていった。

改めて日本経済の変遷を見ると、いい時代だったのだな、と思う。景気は右肩上がり。年功序列で地位や給料が上がっていく。今では考えられない話である。それに比べると、現在は激動の時代と言えるだろう。IoT、人工知能、シェアリング・エコノミー……。時代が、生活のあり方が大きく変わろうとしている。そんな今を生き抜く大変さをしみじみ感じさせられた本だった。
ラベル:リライト 多読
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2017年10月14日

エドガー・アラン・ポー傑作短編集

「エドガー・アラン・ポー傑作短編集」        エドガー・アラン・ポー
★★★★★



エドガー・アラン・ポーの短編集である。

・アモンティラードの樽 「私」はフォルチュナートという人物にひどい目に遭わされてきたので、その復讐をするつもりである。「私」は謝肉祭の時期にアモンティラードという特別なシェリー酒を手に入れたとフォルチュナートに言い、自分のワインセラーに彼を連れて行く。「私」が思いついた復讐とは…なかなかブラックな話である。超短編だが、毒はたっぷり。

・アッシャー家の崩壊 アッシャー家に数週間泊まることになった「私」。その家は灰色の壁、目のような窓、枯れつつある木により、見ただけで心が重くなる外観だった。アッシャーと「私」は親友だった。そんなおどろおどろしい家に入っていく「私」。久しぶりに会ったアッシャーはひどく変わっていた。「私」はアッシャーをなんとか元気づけようとするのだが、彼の中には決して変わらない暗い部分があった。滞在中、アッシャーの双子の妹、マデラインが亡くなり、遺体は地下室に置かれるが……重苦しい雰囲気で、ホラー感に満ちた作品である。

・モルグ街の殺人 世界初の名探偵、デュパンが活躍する作品である。夜が好きな名探偵。ある日、レスパネ夫人という女性とその娘が殺される。事件当時、周辺にいた人々は誰かの声を聞いたという。ある人はロシア語のようだったと言い、別の人はドイツ語だったと言う。そして、死体があった部屋は密室だった。デュパンはこの謎を解くことができるのか?論理的に考え、推理を積み上げていくあたりは、まさに名探偵である。本作は、推理小説の原点とも言われているそうだが、まさに古典的ミステリーの王道を行くような作品であり、真相にも意外性がある。非常に楽しめた。
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2017年10月07日

オペラ座の怪人

「オペラ座の怪人」                 ガストン・ルルー
★★★★★



パリ、オペラ座の支配人、ドビエンヌとポリニーはダンサーの1人からオペラ座でゴーストを見たという話を聞く。ある女性は、それは骸骨の姿だったという。別の人は、目はブラックホールのようで、鼻はなかったという。そして、怪人のためにオペラ座のボックス席5番がいつも空けてある。

その時、オペラ座では「ファウスト」が上演されていた。しかし、オペラの主役女優が具合が悪くなり、若手女優のクリスティーヌが主役に抜擢される。大役を果たし、失神したクリスティーヌ。控室で意識を取り戻し、謎の力強い男の声を聞く。その声に答えるクリスティーヌ。しかし、男の姿は見えなかった。

そしてオペラ座の支配人はモンシャルマンとリシュールに代わる。最初は、2人とも「オペラ座の怪人」はジョークだと思っていたのだが、そうではないことが分かってくる。

ラウルという子爵がクリスティーヌを愛していた。そして、オペラ座の怪人も同じ気持ちだった。クリスティーヌはどちらのものになるのか。そして、この話はハッピーエンドを迎えるのだろうか。

この話もなんとなく知ってはいたのだが、半分以上は知らないストーリーだった。怪人の企みに巻き込まれていくラウル。後半にはハラハラさせられるシーンも盛り込まれている。何度も映像化・舞台化されただけあって、リライトされていてもなかなかの傑作である。
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2017年09月24日

宝島

「宝島」                R・L・スティーヴンスン
★★★★★



主人公の少年、ジムの両親は「ベンボー提督亭」を経営している。老いた水夫がそこに滞在していた。ジムたちはその水夫を「キャプテン」と呼んでいたが、あるひ、ある男がキャプテンを訪ねてくる。その男を見て、キャプテンは顔面蒼白になる。2人は話をするが、キャプテンはその男を短剣で切りつけ、追い払った。

しかしその後、キャプテンは脳卒中を起こして倒れた。その後、船乗りの格好をした別の(盲目の)男がキャプテンを訪ねてきて、その直後にキャプテンは死んでしまう。ジムと母親はキャプテンの持ち物を調べ、「宝島」の地図を発見する。盲目の男、ピューもその地図を探していたが、一足遅かった。この男たちは海賊だったのだ。その地図には、海賊フリント船長が宝を隠した場所が記されていた。ジムたちはその島に行くことに決める。

ここから、皆さんの多くがご存じの冒険活劇がスタートするわけである。宝の地図、そこに書かれた意味ありげな言葉、そして海賊・・・これで面白くならないわけがない。

世界中がすっかり冒険され尽くした現在では、この小説のような夢を膨らませることは難しい。しかし、そんなロマンを一度は感じてみたい。そのような感想を持たせてくれる名作である。
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2017年08月19日

チップス先生さようなら

「チップス先生さようなら」            ジェームズ・ヒルトン
★★★



ブルックフィールド校に勤める教師、チップス先生。彼が新米教師として働き始めるところから物語は始まる。コリーという生徒が、初めてチップス先生が教師として罰を与えた生徒だったのだが、チップスはその子、孫までも受け持つことになるのだ。

チップス先生の部屋は簡素で、教師の部屋らしく、いくらかの本とスポーツの賞などが置いてあった。本はクライム・ノベル、ライトノベル、歴史の本など。

時が経ち、チップスは48歳になった。ある日、グレートゲーブルという山に登っていて、チップスは1人の若い女性が手を振っているのを見た。彼女が何か危機的な状況にあると思って、急いでそこへ行こうとしたが、足を滑らせて自分の足を痛めてしまう。実際は、その女性は友達に手を振っていただけだったのだ。

チップスは歩くことができず、その女性の助けが必要だった。彼女の名はキャサリン。看護師である。彼女は美しく、2人はすぐに恋に落ち、結婚する。

それから、チップス先生は変わった。ユーモアがより上質になり、考え方が紳士的で賢明になったのだ。キャサリンはとても頭のいい女性だった。彼女はチップスの考え方にも影響を与えていく。彼女の考えを受け入れ、チップスはロンドンの生徒たち(ブルックフィールド校の生徒に悪い影響を与えると思われていた)とサッカーの交流試合をする。別に問題は起こらなかった。

チップスは、10回に1回ぐらいはキャサリンの言うことを聞かなかったのだが、後になってみるとアドバイスを聞いていた方が良かった、と思うことも多かった。

そんな彼も老いていく。が、生徒に対するユーモアのセンスは忘れなかった。こんな風にして、ブルックフィールド校での教師としての日々が描かれていく。

しかし、難しい・・・。全く知らない話ということもあるが、具体的な表現より、抽象的な言い回しの方が多いので、内容がなかなかスッと頭に入ってこない。イギリスらしいユーモアとウイットにあふれている、と紹介されているが、そんなものはほとんど感じ取れない。それでも後半は少し読みやすくなった。

間違いなく、今までのラダーシリーズで一番難しい作品だった。
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2017年08月12日

ロビンソン・クルーソー

「ロビンソン・クルーソー」         ダニエル・デフォー
★★★★★



ロビンソン・クルーソーは小さいころから海に出てみたかった。18歳になると、船乗りになる決心をして家を出る。そして1年後、船に乗ることになる。船旅の後、ロンドンに着いて、次にアフリカに向けて出発する。

しかし、カナリア諸島のあたりで海賊に襲われる。そして海賊にサリー港というところに連れて行かれ、ロビンソンはトルコ人の海賊の奴隷にされる。それでも、小舟に乗せられている時に隙を見つけて海賊を海に突き落とし、その船で逃げる。

その後、ブラジルで農園を経営し、成功する。だがある時、乗っていた船が嵐に遭い、無人島に漂着する。生き残ったのはロビンソン1人だった。

船から使えそうな物を全て島に運び、無人島生活が始まる。

安全な場所を見つけて寝床を作ったり、野生のヤギを捕って食べたり、いやはや無人島で生き延びるのも大変である。

無人島での生活は厳しかったが、神への祈りと聖書が支えになった。ロビンソン・クルーソーはこの状況を切り抜け、祖国へと戻れるだろうか。

実際に生活するのは大変だろうが、小説として読んでいる分にはエキサイティングで面白い。人間が生きるには様々な物が要ることに改めて気づかされる。そして、人間のタフさと生命力を感じさせてくれる作品になっている。
posted by 三毛ネコ at 12:59| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする