2016年08月21日

アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ

「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」           ジョーマーチャント
★★★★★



アンティキテラ。この地名を聞いたことがある人はあまりいないだろう。ギリシャにある島である。そこで、ある機械が発見される。およそ二千年前のものだ。しかし、時計が出現したのは一千年前ぐらいのことであり、二千年前のギリシャ人がそんな機械を持っていたはずはない。謎は深まるばかり。そんな中、学者たちは知的好奇心をみなぎらせ、この機械の正体を知ろうとする。

そしてプライスという科学者によって謎が解ける。その過程は非常に面白く、科学好きならずとも知的興奮を覚えるだろう。果たして、どのような機械だったのか。それは読んでもらうしかない。

しかし、その後ライトという博物館の学芸員がプライスが解ききれなかった謎に挑戦する。それから、ついに彼は謎を見事に解いた…ように見える。しかし、実際はもうひとつどんでん返しがあった。なかなかうまい構成である。上質の推理小説を読むように、アンティキテラの機械の謎解きが楽しめる。欠点としてはやや説明が細かすぎること。読者が知りたいのはコンピューターの謎であり、細かい説明ではない。もう少しドラマチックにしてもよかったと思うのだが。

そしてついに、すべての謎が明かされる。二千年前に、今までは考えられなかった知識や技術が存在したのだ。今までの科学史観を覆す大発見である。当時の人間の知恵の深さにはただただ脱帽するばかりである。

途中、ちょっと単調な部分もあるが、それを補って余りある知的刺激を得られる。読みごたえは十分ある本。
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2016年05月28日

Dewey the Library Cat: A True Story

「Dewey the Library Cat: A True Story」      Vicki Myron(著),Bret Witter(著)
★★★★★



田舎町。さびれた図書館。その返却ポストに捨てられていた一匹のネコ。そのネコは見た目もかわいらしく、図書館で飼われることに決まる。人なつっこいネコだったようだ。

英語を読む時にはたいてい薄いベールのようなものを通して読んでいるように感じるものだが、それでもこの本は魅力的だった。デューイの愛らしさが文章から伝わってくる。動物好きにはたまらない本だろう。デューイと図書館員たちとのほほえましい日々が描かれる。

そしてデューイの存在は、町を活性化するのにも一役買っていた。デューイ目当てに人が集まり、新聞でも取り上げられる。デューイには、自分が嫌いなことを人が考えただけでたちまち逃げてしまうという賢い側面もあったようだ。

著者が病気になった時にも、デューイの存在が支えになった。ペットの重要性を感じさせる記述である。

しかし、当たり前のことであるが、デューイもやがて年をとり、そんな日々も終わりを迎える。かわいがっていた動物の死。確かにそれはつらいものだ。それにしても、デューイの死がアメリカのあちこちで報道されたことから、どれだけ全米で愛されていたかが分かる。飼いネコとしてはみんなに愛された幸せなネコだったと言えるだろう。私を含めて、ネコ好きにはお勧めの一冊。
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2016年05月07日

本は死なない

「本は死なない」                      ジェイソン・マーコスキー
★★★★



私はkindleのファンである。日本語版の初代kindleからkindle voyageまで、新モデルが発売されるたびに買ってきた。もちろん、kindle Oasisも購入した(ウォールナットカラーを選んだので、手元に届くのは6月なんです・・・)。だから、kindle開発者である著者が何を書いているかに興味があった。

だんだん、本が売れなくなってきている。読書好きとしては、本が将来どうなるかが気になる。この本によれば、電子書籍が中心になり、紙の本は生き残るが、それは一部のベストセラーだけになるという。

2014年の本なので、少し内容は古いのだが、kindle開発の経緯などを知ることができ、興味深い。2010年の調査では、ひと月当たりの娯楽費の29%が動画関連であり、本が占めるのは5%にすぎない。現在では、もっとその差は開いているだろう。

著者は、kindleには読者の感情を揺さぶる要素が欠けていると指摘する。たとえば、サスペンス小説を読んでいる時に、重要な場面になると銃撃音が鳴り響くような仕掛けが必要だと。確かに、そんな機能があればもっとkindle本を楽しめるだろう。

他にも、将来の電子書籍や本のあり方について実現しそうな予測がされている。また、著者の本に対する愛情も伝わってくる。この人は本当に本の将来性について真剣に考えているのだ。まだ実現していないことも多いが、未来の本について大いに夢を与えてくれる書籍だった。
ラベル:Kindle 電子書籍
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2016年02月28日

村上春樹は、むずかしい

「村上春樹は、むずかしい」                   加藤 典洋
★★★★★



題名に惹かれた。確かに、村上春樹は難しい。数冊読んだことがあるが、読後も何がテーマなのか、さっぱり分からなかった。何を書きたいのか。何を伝えたいのか。それがどうしても読み取れないのだ。文体は平易だが、そこに込められた思いを解読するのは非常に難しい。

第1部から、「村上春樹はなぜ芥川賞を取れなかったのか」という、ファンならずとも興味津々の分析がある。村上の処女作「風の歌を聴け」は候補にはなったが、「もう1作読まないと、心細い」、「作品の結晶度が低いところがある」などと評され、受賞はならなかった。そして、2作目の「1973年のピンボール」も、好評だったのだが、結局芥川賞は取れなかった。今になってみれば、当時の選考委員は「なぜあの時に芥川賞を与えておかなかったのか」と後悔していることだろう(大部分の委員はもう亡くなっているが)。

そして、村上作品の分析がなされていく。私のような平凡な読者には、一読しただけでは分かるはずのない、説得力のある、きちんとした分析である。

たとえば、処女作「風の歌を聴け」は「肯定性を肯定している」と言う。逆に言えば「否定性を否定している」。国家や富者、権力や権威を否定することが「否定性」である。近代文学はこの「否定性」の一点でつながっているが、「風の歌を聴け」はその「否定性」への文学の依存を断ち切ろうとした、戦後初の作品だったと著者は分析している。

私が以前読んだ小説「アフターダーク」についての言及もある。著者によれば、この小説は中国へのオマージュめいた作品でもあるという。この小説が書かれた時期には、北京オリンピック開催が決まり、中国ブームが起こっていた。「アフターダーク」の主人公は中国へ行こうとしている。そういう設定にしたのは、前述のような時代背景があったためらしい。

この著者にかかると、すべての村上作品がしっかりと、納得できる形で読み解かれていく。村上春樹が「ここまで考えて一連の作品を書いていたのか」、「あの作品にはこんな意味が隠れていたのか」などということに気づく。なかなか面白い分析だし、自分の純文学に対する読解力の低さを痛感せざるを得ない。文学の世界もなかなか奥深いようである。
ラベル:村上春樹 評論
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2014年04月01日

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話

「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」 坪田 信貴
★★★★



偏差値30以下。三流大学にも入れないぐらいの数字である。この本の主人公、さやかはそんな学力だった。そのおバカぶりは半端ではない。何しろ、strongの意味を日よう日と答え、聖徳太子を「せいとくたこ」と読むのである。そして入試半年前の模試の判定はE判定。慶應などとても無理だろう、と誰もが思うだろう。私もそう思った。しかし、彼女は本当に慶應に合格してしまう。もともと頭が良かった、という見方もできる。しかし、私はそうは思わない。努力し続けられたのが才能だと思うのだ。

以前紹介した本もそのことを証明してくれている。「オール1の落ちこぼれ、教師になる」の宮本延春さんである。彼の成績は中学3年生で5教科全てがオール1、入れる高校もなくて大工の見習いになる。しかし、あることをきっかけに猛勉強を始め、定時制高校から現役で名古屋大学理学部に合格する。宮本さんやこの本の主人公の話を読むと、目標や情熱を持って努力し続けることの大切さが分かる。また、その夢がオリンピック金メダルなどという高すぎる目標でない限り、実現するものだということも。
 
夢や目標はあきらめなければきっとかなうのだ、と思わされた本だった。まさに「Dreams come true(夢は実現する)」という言葉の通りである。
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2013年08月03日

雪男は向こうからやって来た

「雪男は向こうからやって来た」                   角幡 唯介
★★★★



 
 雪男。そんなものいるわけない,と思っていた。ネス湖のネッシーと同じタイプのうわさだろうと。
 
 しかし,この本によれば日本の複数の有名な登山家が雪男らしいものを見たという。だが,それは一般にイメージされる雪男とは違うようなのだ。その話を読んでいると,だんだん「これは本当ではないか」と思えてくる。
 
 真偽を確かめるべく,著者を含む雪男捜索隊はヒマラヤへと向かう。まともな登山家が雪男の探索を大真面目にしている。雪男にはそれほど人を引きつける魅力があるのだろう。誰かが言っていた,「意味のないことに情熱を燃やせるのが男なのだ」と。
 
 そして著者はひとりで雪男探索を行う。果たして,雪男の存在は証明されるのか?答えは本書にある。前作もそうだったが,この人の文章はすっきりしていて読みやすい。さすがに朝日新聞に記者として5年勤めただけのことはある。全体的な面白さでは前作のほうが上である。しかし,この本も楽しめた。夢とロマンを求める人に。
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2011年06月09日

アレックスと私

「アレックスと私」                 アイリーン・M・ペパーバーグ
★★★★★




この本はなぜか、アレックスというヨウムが死んだ後の周囲の反応の大きさの記述から始まる。それだけアレックスが注目されていたのだと言いたいのかもしれないが、読者の立場からすれば、一番最後の章に持ってくるべき内容だと思う。

本題に入るのはそのあと、第3章からである。ヨウムのアレックスとの出会い、そして彼の成長ぶりが描かれる。訓練を始めて数カ月で、アレックスは才能の片鱗を見せている。初めて赤いカギを見たとき、「キー」とちゃんと言えたのだ。それまでは銀色のカギを見せてキーと教えただけだったのに。

動物は人間と同じように言葉を使えるのか?当時はこれに否定的な意見が多かった。著者とアレックスは、そんな風潮に風穴を開けていく。アレックスは「色」や「形」などの抽象的な概念も理解できたのだ。彼はもっと高度なこともできた。「カギは何色?」と聞かれたときに、正解の色以外の知っている色すべてを言ったりするのである。その理解力はなんとチンパンジーやイルカと同じレベルだともいう。驚きである。

ドキュメンタリー風にアレックスとの日々をつづっているのだが、それがリアリティーを感じさせる。

彼は、周りの誰も自分の言うことを聞いてくれないとき、「チャントキイテ!」と言ったらしい。明らかに言葉の意味を理解し、適切に使っているのである。ヨウムは本当に賢いことが分かる。アレックスだけが特別なのかもしれないが。

賢いだけでなく、そのお茶目でいたずら好きの性格は人を引きつけずにはおかない。こんなペットがいたら楽しいだろうに、と思わせるエピソードがたくさんある。

また、アレックスはなんと「ゼロ」の概念も理解していたのだ。彼は訓練中、3個のブロックを見て「ファイブ」と答えた。そしてファイブは何個かと聞いてみると「none(5個のブロックはそこにはないという意味)」と答えたのだ。それまで彼は同じような質問をされたことはなかった。単にオウム返しに知っている単語を言ったのではないのである。ヨウムの賢さには感心するばかりである。

彼のパフォーマンスに驚いているうちに、この物語は終わりを迎える。アレックスが急死してしまうのだ。それは悲しいことだが、彼は動物が思考し、抽象的な概念をも理解できることを証明してみせた。この本を読めば動物が愛しい存在であり、より人間に近い存在として受け入れられるようになるだろう。動物の知能について興味深い示唆をしてくれるノンフィクションである。




ラベル:ヨウム 知能 研究
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2009年11月23日

絶対帰還。

「絶対帰還。」              クリス・ジョーンズ
★★




2002年11月。スペースシャトルエンデバーが打ち上げられた。行き先は国際宇宙ステーションである。宇宙ステーションには無事にたどり着く。その後、宇宙ステーションでの生活が延々と描かれる。おかげで、宇宙ステーションでの生活がどんなものか、手に取るように分かる。その間に、スペースシャトル「コロンビア」にトラブルが起き、空中分解してしまう。乗員は全員死亡。宇宙飛行士。誰もがあこがれる夢の仕事。しかし、この本は同時にその恐ろしさをも十分に教えてくれる。

副題は「宇宙ステーションに取り残された3人、奇跡の救出作戦」なのだが、その場面はなかなかやってこない。宇宙開発の歴史などが長々と語られる。最後のほうになって、やっと肝心のシーンがやってくる。コロンビアの事故のため、3人の宇宙ステーションにいる飛行士が地球に戻れなくなってしまう。その3人とは、アメリカ人のバウアーソックス、ペティット、そしてロシア人のブダーリン。コロンビアの二の舞になる可能性があるため、スペースシャトルは使えない。といって、宇宙ステーションを放棄することにつながるため、そこを完全に空にするわけにもいかない。さて、ではどうするのか。それは読んでのお楽しみ。

宇宙飛行士という仕事はいいなあ、と改めて思う。どうせどう生きても人間、100年ぐらいしか生きられないのだ。ならば、夢とロマンに満ちあふれたこの世界に飛び込んでみるのも悪くないではないか。これほどやりがいのある職業も他にない。まあ、よほど優秀な人でなければかなわない夢だが。

感動したり、夢中で読むほどの本ではないが、宇宙飛行についての知識は得られる。宇宙飛行士のスリルと生活感を味わいたい人に。




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2009年04月15日

グリーン革命

「グリーン革命」           トーマス・フリードマン
★★★★






アメリカはいったいいつまで世界の1でいられるのだろうか―サブプライムショックで分かるように、アメリカの動静は世界中に影響を及ぼす。逆に言えば、アメリカは常に世界をリードする存在でなければ困るのだ。この本は、その一つの方策を示す。オバマの言葉にあるように、今ほど「change」の必要なときはない。

グローバル化やIT革命によって、中国とインドだけで数千万人がミドルクラスの生活ができるようになった。IT革命は、アメリカだけでなく、世界の人々をも救ったのである。グリーン革命も、当然アメリカだけでなく世界を変え、地球規模の問題を解決できるものでなくてはならない。

この本によれば、中国やインドの台頭により、ヨーロッパの社会システムが変わりつつあるらしい。低賃金で働く中国人やインド人のために、フランスは週35時間労働を維持できなくなっている。また、北欧の福祉国家のシステムも崩壊しつつあるという。私は、日本が目指すべき次の社会モデルは北欧型の福祉大国だと思っていた。それがうまくいかないのなら、日本はどこに目標を置けばいいのだろうか。その答えは本書にある。

現在世界が直面しているピンチは、逆にチャンスでもある。新たなクリーンエネルギー・システムを作れば、その国はエネルギー大国として多大な利益を得られるからだ。

筆者によれば、自然保護と消費は両立できるそうだ。現在の消費スタイルを保ちながら、環境も保護していく―そんな夢のような話が可能になるらしいのだ。もちろん、消費者の意識の大幅な変化、生活面でのイノベーションが必要ではあるが。しかし、これを実現するのは簡単ではない。グリーン革命は、地球規模で行わなければ意味がない。みんながプリウスを買ったからといって実現するほど甘くはないのだ。

下巻では、具体的な「グリーン革命」後の世界が描かれている。環境を守り、地球温暖化を防ぎ、生物の多様性を保つ。そんな社会を実現することも可能である。さらに、この社会は、新しいエネルギーサービス産業を生み出す。例えば、エネルギーの使い方についてアドバイスをし、最適なエネルギー節約プランを提供するのだ。このエネルギー革命を進めるためにはインフラの再整備が必要なので、それに関する雇用も創出できる。オバマが、グリーンニューディール政策により数百万人の雇用を生み出すといっていたのは、嘘ではない。太陽光や風力などのエネルギーをもっと積極的に使うことで、温暖化の問題に対応しながらさらなる経済成長が見込める。そして、主要エネルギーとなり得るエネルギー源の発明により、この革命は完成する。実は、このエネルギー源の開発は日本で行われている。人工的に光合成をして二酸化炭素を減らし、水素を作り出してエネルギーとして使おうというものだ。この研究は実現まであと一歩のところまで来ている。もし日本がこの研究を成し遂げれば、一気にエネルギー大国になれる。グリーン革命の完了である。

ただ一つ問題があるとすれば、地球規模でどうやってこの革命を行うかであろう。アメリカ一国だけでは意味がない。成長を続ける中国やインドにこの革命に参加させるのは難しいかもしれない。しかし、グリーン化は世界の流れである。もし中国やインドがかつての欧米の真似を続ければ、人類存亡の危機に直面することは分かりきっている。今こそ変革のときであり、すぐにでも始めなければならない。手遅れにならないうちに。

人類に対する警告であると同時に、未来に希望を与えてくれる書でもある。








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書評/社会・政治

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2008年09月13日

ニュートン・コード

「ニュートン・コード」           塚原 一成




ニュートンは「2060年に地球は滅亡する」と予言した。その内容をはっきりさせるため、著者はイギリスへと飛ぶ。そこで意外な事実が判明する。ニュートンは錬金術師だったのだ。それも、すでに錬金術の信憑性が失われた時代に。そして、彼が秘密結社のメンバーだったことも明らかになる。これらの事実は、ニュートンの予言の根拠を示すための1つの手がかりとなる。

科学者ニュートンが予言した謎を解き明かすと言うから、期待して読み始めたのだが、それは完全に裏切られた。ニュートンの業績や意外な素顔は知ることができるが、肝心のニュートン・コードはまったく出てこない。やっと出てくるのは210ページ目、最終章である。しかし、それを途中まで読んで、私はがっかりした。ニュートンの予言というから、何か科学の研究をしていて地球の滅亡の可能性に気づいたのかと思ったのだ。その根拠もさぞかし科学的なのだろうと思ったら、とんでもない間違いだった。ノストラダムスの予言と大差ない。はっきり言って期待はずれ。…と思ったら、さすがニュートン、地球滅亡の科学的な根拠もちゃんと示してあった。確かに、この本の言うとおりなら、地球滅亡の可能性もある。しかし、あまりこの本には期待しないほうがよい。予言の根拠が物足りないのである。著者が勝手に推理しているだけなので、もうひとつ説得力に欠けている。

この本は、謎解きと言うより、むしろニュートンの知られざる素顔や人生を知る伝記のようなものとして読むべきであろう。
ラベル:塚原一成 科学
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2007年12月16日

ワイルド・スワン

「ワイルド・スワン」            ユン・チアン
★★★★★





日本の侵略から国民党と共産党の内戦、中華人民共和国の成立、文化大革命に至るまでを著者の家族の親子三代にわたる人生を通して描いたノンフィクション。普通なら省略されるような下(しも)の話などが詳しく書かれているところが印象的。それがこの本にリアリティーを与えている。

著者の父親は、文化大革命の時に、反逆者として訊問を受ける。しかし、それに屈しない父親の態度には感服させられる。たとえ精神病になっても、あくまで自分の信念を貫こうとする態度は、なんともすがすがしい。

広く深い知識、そしてそこから生じる明確な見識を持った父親と、無知で政治に右往左往する農民が対照的である。やはり、人間には多くの知識が必要なのだろう。それがあって初めて信念に忠実に生きられる。ある作家が書いていたが、「本当の勇気とは、言葉をたくさん知っている人間が持てる」と言う言葉を実感する。

共産主義は左翼の一形態だが、人間をひとつの思想で統一しようとする点では極右も左翼も同じ。共産主義は建前はすばらしいが、この本によれば、毛沢東もわりと贅沢な暮らしをしていたようだ。そこには、上の階級の者が庶民から搾取すると言う構造があり、それは資本主義と変わらない。

また、この本からは、人間をひとつの思想で縛ることの恐ろしさが分かる。そういう集団は、たやすく支配者の意のままに操られてしまうのである。思想・人格・生き方など、人間の多様性を受け入れてこそ真の人間らしい社会になるのだ…としみじみ思った。
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2007年07月29日

約束された場所で−underground2

「約束された場所で-undergrond2」 村上 春樹
★★★★★



地下鉄サリン事件の後、オウム真理教の信者(または、元信者)に対する著者のインタビューをまとめた本。

読んでみると、なぜエリートと呼ばれるような人々が、超能力の獲得などをうたい文句にしている怪しげな宗教にひかれていったのかがよく分かる。彼らの大部分は純粋である。なにか理想的なものを追い求める傾向がある。彼らは、この世の灰色の部分を認めることができない。彼らにとって、この世界は白か黒でなければならないのだ。しかし、現実の世界には灰色の部分もある。それを受け入れ、その中でバランスを取りながら生きていけるということが大人になるということだと思うのだが、オウムの信者にはそれができない。彼らは、自分たちの理想を求め、純粋な理想郷(オウムの目指す世界)を作る仕事に身を投じていく。

また、そこ(オウム)には、彼らの疑問に対する完全な答えが用意されている。その論理には、矛盾もあいまいさもない。だからこそ、頭の良い、しかし大人になりきれないエリートたちが入信していったのだろう。

そして、彼らにとってオウムという世界は完全に真っ白な理想郷(あるいは、それに近いもの)である。それゆえ、外の世界は彼らから見れば黒色(悪)になってしまう。そこから、サリン事件のような犯罪が生じてしまったと言える。彼らから見れば、自分たちを邪魔する現実世界は完全な悪にほかならなかったのだ。

この本を読めば、オウム事件の真相の一端を垣間見ることができる。
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2007年06月10日

アウシュビッツの子供たち

「アウシュヴィッツの子供たち」     アルヴィン・マイヤー
★★★★

アウシュヴィッツを生き延びた子供たちの体験談とその後の人生が描かれている。

人はどんな苦境にあってもそこから立ち直ることができる、という人間のタフさを感じさせられる。

ナチスが行った行為には慄然とせざるを得ない。人間はここまで残酷になれるものなのか。たぶん、人間にはもともとひどく残酷な性質が備わっており、それが戦争という、あらゆる行為を正当化する手段によってむき出しにされるのだろう。このような行為を繰り返さないためにも、人はもっと戦争について学び、誰にでもこのような残虐性はあるのだということを自覚する必要があるだろう。

もう絶版になっているようだが、図書館には置いてある。世界情勢が不安定な今だからこそ、多くの人に読んでもらいたい本である。
ラベル:ナチス
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2007年04月02日

脳内汚染

「脳内汚染」              岡田 尊司
★★★



ある種のメディア(テレビゲーム、ネット、ビデオ)が子供に与える影響について論じたノンフィクション。著者は特に、ゲームが子供に悪影響を及ぼすとして、警告を発している。

著者は精神科医であり、医療少年院で働いている。さらに、脳についての研究もしている。そのため、ゲームが脳に与える悪影響についての指摘は、説得力がある。

メディアが子供に与える影響については、以前から指摘されていたが、ここまで詳細に考察されてはいなかった。著者は、ゲームやネットが、麻薬と同じような中毒性があると述べている。さらに、子供の人格形成にまで大きな影響があると。データをもとにそれを示されると、慄然とさせられる。読んだ感想は、「恐ろしい」、この一言に尽きる。

だが、私自身や周りの人の経験から言えば、ゲームにそこまではまる人間はいなかった。一時的にはのめりこむが、成長していくと、自然にゲームを卒業していく。少なくとも私は、周りでゲームやネット中毒になった人間を知らない。みんな、ある程度の距離を置いて楽しみ、一定の期間が過ぎると、離れていく。そういう人が大部分だと思うのだ。そういう部分から考えても、ゲームやネット中毒になり、刑事事件まで起こしてしまうのは一部の特殊なケースではないかという気がしてならない。

この本に書かれたことが事実だとしても、我々はどうすればよいのだろうか。テレビゲームはもはや子供のおもちゃという枠を乗り越えて、一種の文化を形成している。親が子供にゲームを禁止すれば、学校で仲間はずれにされたり、友達ができない可能性もある。完全に取り除くことなど、もはや不可能であろう。 せいぜい、この著者の言うように、未成年者に対して有害なビデオ、ネット、ゲームの利用を禁じることぐらいしかできない。

メディアはすでに、私たちの生活の中に根づいている。完全に取り除くことが不可能であるなら、規制をかけつつ、そのプラス面をうまく利用して生きることが大事になってくるのではないだろうか。 
ラベル:教育 ゲーム
posted by 三毛ネコ at 09:53| Comment(0) | TrackBack(1) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする