2017年02月19日

アウトサイダー

「アウトサイダー」                      フレデリック・フォーサイス
★★★★★



「ジャッカルの日」などを書いた、人気作家、フレデリック・フォーサイスの自伝である。

フォーサイスはイギリスで生まれた。パイロットになることを夢見た少年時代。学校が休みの間、フランスやドイツに滞在した。語学が得意で、15歳で、大学進学の資格条件になる語学の試験に合格する。

そして、飛行クラブでパイロットになるための飛行訓練も受けることもできた。16歳のときである。その後、民間のパイロット免許を取る。

17歳で4か国語を話せるようになっていた。

それから、希望通りイギリス空軍に入ることができたのだ。そしてジェット機のパイロットになれたのだが、そのまま空軍にとどまっていてもパイロットは続けられないと分かり、除隊する。

次の夢はジャーナリストになり、世界中を見て回ることだった。そして新聞社に入り、あるきっかけから、何とあのロイター通信の記者になる。特派員として、東ドイツにいたこともある。その間に、フォーサイスの書いた通信文が、あわや第3次世界大戦を引き起こすか、と思われる出来事もあった。

その後、BBCの記者になるが、あくまで公正な報道をしようとしたために居づらくなり、辞表を書くことになる。

BBC時代には、アフリカでの紛争を経験したこともあった。迫撃砲を撃たれながら戦地を脱したこともある。

フォーサイスの小説は2冊しか読んでいないが、上記のような普通の人がしそうもない経験が、後の作品につながっていったことは容易に想像できる。

デビュー作、「ジャッカルの日」がたった35日間で書かれたという記述には驚かされる。「才能」としか言いようがない。

なかなか波瀾万丈の人生で、こんな人生でなければあれだけの小説は書けないだろうな、と思わされた。なかなか興味深く、もっと彼の作品を読みたくなる、そんな自伝だった。
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2016年04月23日

全盲の僕が弁護士になった理由

「全盲の僕が弁護士になった理由」                大胡田 誠
★★★★



全盲で弁護士。どうやって仕事をしているのだろう、とまず思った。また、なぜそんなハンディを抱えながら最難関の司法試験にチャレンジし続けられたのかという疑問も。ドラマ化されたのでこの本の存在を知り、読む気になった。

この本によれば、今はインターネットのおかげで読み上げ機能の付いたノートパソコンさえあれば、法律の条文を外で「聴く」ことができるのだ。デジタル機器の発達のおかげで、視覚障がい者でもハンディをあまり感じずに仕事ができるようになっている。もちろん、人より時間をかけて準備をしなければならない、といった苦労は存在するのだが。

著者は小学校6年生で視力を完全に失い、中学校は盲学校に進むことになる。そこで、日本初の全盲弁護士の手記を読み、弁護士を目指すようになる。そして慶應義塾大の法学部に補欠で合格。それだけでも大変な努力なのだが、彼の頑張りはそこでは終わらない。大学4年で司法試験を初めて受けるのだが、結果は惨敗。その後も不合格が続く。本人もあきらめかけていたようだが、その後の試験で潮目が変わる。新司法試験制度になったのだ。と言っても、何しろ目が見えないのだから、簡単ではない。2年間の法科大学院での授業についていくのは大変だったようだ。仲間の協力のおかげでやり遂げられたのだ。そして新試験を受ける。その試験中にも「もうだめだ、あきらめよう」と思った場面があったようだが、「あれだけ努力したのだから、落ちるはずはない」と考え直し、結果は合格だった。5度司法試験を受けた経験に基づく「自分を信じること。自分を信じる力は、それまで積み上げてきた努力の量に比例する」という言葉は重い。

著者は、依頼者から「あなたのような人に出会えて自分ももう一度がんばろうと思った」と言われることもあるらしい。それだけでも、大胡田さんのような弁護士の存在価値を感じずにはいられない。仕事で日々悪戦苦闘している自分も「もっとがんばらなければ」と改めて感じさせられた1冊であった。
ラベル:弁護士 資格試験
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2016年04月02日

アイドル受験戦記

「アイドル受験戦記」                      管 なな子
★★★★



数学0点から現役で名古屋大学へ? 本人も書いているように、無謀な挑戦のように思える。

前半のほうはSKE48に入るオーディションや、アイドルとしての活動の描写が中心である。

SKE48の一員になったのはいいが、アイドルとしての活動が忙しく、成績はどんどん落ちていく。それでも、何とか勉学とアイドル活動の両立を図ろうとする。しかし、会社で働いたりすることに魅力を感じ、大学へ行こうと決める。

そしてアイドルをやめ、受験勉強を始める。目指すのは、名古屋大学経済学部!

そこから、必死の受験勉強がスタートする。休日には1日12時間ぐらい勉強していたようだ。英語の学習法では共感できる部分があった。それは「音読」である。菅さんも書いているように、音読を続けると、間違いなく英語のリスニング力が上がる。

センター模試では順調に点数が伸びていくのだが、そこでショッキングな出来事が。名大模試の数学で0点を取ってしまうのだ。しかし、その結果にめげることなく、勉強を続けていく。高3の夏休みには1日13時間勉強している。しかし、次の名大模試の数学でもひどい点数。これは無理だろう、と読んでいるほうは思ったのだが・・・

しかし、彼女は予想を覆して合格してしまう。しかも現役で・・・その頑張りには脱帽せざるを得ない。平日で(おそらく)6時間ぐらい、休日は12時間の勉強。私は1日8時間がやっとだった。努力を続けられる才能というものがあるとすれば、彼女はまさにそれを持っていたと言える。

大学入学後も、新たな目標に向かってチャレンジをしている彼女に、ささやかながらエールを送りたい。
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2014年06月01日

鈍足バンザイ!

「鈍足バンザイ!」                  岡崎 慎司
★★★



サッカー日本代表、岡崎選手の自伝である。

自分には特別な才能がない、と岡崎は言い切る。しかし、だからこそ人より劣った選手として、どうすればたくさんのゴールを決められるかを常に考えてきたと。それが彼を一流のサッカー選手にしている。元楽天の監督、野村克也やラグビーの平尾誠二がそうだった。野村は不器用で、直球を待っているところに変化球が来ると対応できない。平尾はラグビー選手としては体が小さかった。それぞれハンディを抱え、それをどうすればカバーできるかと考え、創意工夫してきたからこそ、2人とも大選手になることができたのである。岡崎もまさにそういう選手だと言うことができる。

しかも、彼は自分の短所を補う練習が「楽しい」とまで言う。そういう岡崎だからこそ、今シーズンの大活躍につながったのだろう。

読み進めていくと、「鈍足バンザイ!」というタイトルの意味が分かってくる。岡崎には、自分は下手だという自覚がある。だから常に謙虚に、そして貪欲に多くのことを吸収していける。岡崎の代理人は彼を「年々うまくなっている」と評する。これからも岡崎はサッカーが上手くなっていくだろう。「自分は下手だ」という自覚を持ったままで…
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2013年12月01日

テトラポッドに札束を

「テトラポッドに札束を」                     和佐 大輔
★★★




著者は12歳の時、海でテトラポッドに頭から激突し、首から下が動かなくなってしまう。しかし,そこからネットビジネスを始め,今では年収1億円!信じられないサクセスストーリーである。

単なる自伝ではなく、ビジネス書としても読める。しかし、私もアフィリエイトをしているから分かるのだが、今からこの人の真似をしても同じようには稼げない。この著者の場合、「アフィリエイトで稼ぐノウハウ」という売るモノを持っていたからこそ、大金を稼げるようになったのだ。自分だけの売りになるモノを持たなければ稼げるようにはならない。

この人の成功のキーワードは「売っているものは商品だけではない」、「理想のキャラクターを演じる」、「上から目線ではなく、俺様目線で発言すること」の3つである。確かに納得できる部分もあるのだが、読んでいると、この著者は自分の仕事(起業家)がベストという前提で書いているように思える。そのため、サラリーマンなどは否定してしまっているように感じられるのだ。どんな仕事をするかはその人自身が決めることであり、起業が全てではない。

著者自身の体験について書かれているのは前半の60ページぐらいで、後はどう生きるか、どうやって成功するかといった内容である。この人は町をぶらぶらすればいくつかのビジネスを考えつくと言うが、普通の人にはそれは無理である。やはり、ビジネスの才能があるからそれができるということだろう。障害を乗り越えた人の半生記ではない。私もそう誤解して買ったのだが、読んで励まされたいと思っている人はご注意を。
ラベル:ビジネス
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2012年10月01日

私がアナウンサー

「私がアナウンサー」                           菊間 千乃
★★★★




著者は,仕事中,ビルの5階から転落する。死ぬ可能性も十分あった。しかし,この人は生き延びた。だが,腰の骨を折ってしまう。手術はせずに済んだようだが,ギプスをはめてのリハビリ生活。痛い。つらい。しかしそれでも,仕事に復帰したいという一心で頑張ったようだ。

また,この時期,アナウンサーという仕事についてもよく考えたようである。仕事の経験の記述からは,アナウンサーという仕事の難しさとやりがいが感じ取れる。

本書の「今,私にできること,それを精いっぱいやるしかない」という言葉には全く同感。私も人と比べて焦ることがあるが,自分の立場,やれる範囲で,自分にできることをやるしかないと自分に言い聞かせている。

事故に遭ってから,アナウンサーとして復帰するまでを書いているのだが,特徴的なのは,周りに対する「感謝」の気持ちが本の端々に見られることである。両親,友人,先輩アナウンサーなどに対する感謝。そして著者は「自分は生かされている」と感じるようになったようだ。せっかく助かった命なのだから大切にしなければならないと。それが,のちに司法試験に挑戦した理由の一つでもあろう。彼女の頑張りには感心するばかりである。今,壁にぶち当たっている人には大いに励まされる本である。
ラベル:アナウンサー
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2012年06月02日

日本男児

「日本男児」                        長友 佑都
★★★★★


長友はエリートではない。小学校の時,愛媛FCのユースクラブを受けて落ちたぐらいである。

 中学の時に出会った熱い先生。その人に感化されてサッカーに本気になった。「努力する才能」と長友は言う。メジャーリーガー松井秀喜も同じようなことを言っている。「努力し続けられるのが才能である」と。

 成功するために必要なのは努力か,それとも才能か。私の現時点での結論は,長友と同じで,努力を続けられることが才能なのだということである。7年間,一日も休まず人並み外れた努力をして英語のプロになった人がいる。99%の人が挫折するようなやり方でその人は学習を続け,高いレベルの英語力を身につけた。その学習法で挫折しなかったことこそがその人の才能だと思うのだ。

 長友は大学時代,どうすれば壁を一番短い時間で乗り越えられるかと考えていた。そういった思考とトライ&エラーの繰り返しが成功のカギとなるのだろう。

 長友は努力の人,と言えるだろう。人に倍する努力と今の自分に何が足りないのかを考え,その技能を身につけてきたことが,彼を一流の選手にした。彼は強い上昇志向を持っている。だからあれほどの選手になれたのだろう。現状に決して満足しない。常に次の目標や課題を見つけ,それに向かって努力していく。その時,その時でベストを尽くす。その姿勢には,イチローにも通じるところがある。私も大いに刺激を受けた。

 彼は間違いなく日本を代表する「サムライ」である。そしてその熱き血は私たち日本人の中にも脈々と流れている。だから,日本は今いろいろな問題を抱えているが,必ずそれを解決できる。高い技術力,勤勉さ,真面目,強い向上心…何のことはない,日本の長所はほとんどそのまま長友のストロングポイントにつながるのだ。私たち一人一人が長友のように日々やるべきことをひとつひとつクリアしていく―その先に,新たに発展した日本の姿が見えてくるはずだ。大きな困難にぶち当たっている私たちも信じよう,「壁に出会ったときこそが成長するチャンスなんだ」と。
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2011年04月04日

ぼくには数字が風景に見える

「ぼくには数字が風景に見える」                  ダニエル・タメット             




水曜日は青色をしている?素数は丸い小石のような感触?いったい,どういう人物なのか。答えは…この著者は共感覚を持ったサヴァン症候群なのだ。共感覚とは,数字を見ると色や形が浮かぶ感覚のこと。サヴァン症候群は,映画「レインマン」の主人公のように,天才的な計算能力などを持った自閉症の一種である。

この人によれば,素数は「美しい」らしい。また,言葉(英単語)にも色がついているように感じられるという。普通の人とはまったく違う感覚,世界観があることにまず驚いた。

彼の成長ぶりが自伝の形で描かれるのだが,もちろん平凡ではなく,非常に興味深い。サヴァン症候群の長所と短所がよく表れている。彼は自分の決めた規則どおりにやらなければ落ち着かない。それで,小学校時代に,自分のコートを掛けるフックを決めており,そこがふさがっているとコートを着たまま授業を受けたという。それでいて,英単語の意味のテストは非常によくできた。dogという単語ならそれを視覚化し,dの突き出した部分を犬の耳に,gの下の部分を尻尾にして単語そのものを犬のイメージで捉えるのだ。このやり方を試したことはないが,たぶんかなり覚えやすくなると思う。

この本を読むと,差別的な表現ではあるが,私たちとは全く異なる世界観とルールの中で生きている人がいることを思い知らされる。人とは違うこと―それが悪いことではないのだ,ということに気づく。そして,月並みだが,自閉症というハンディを持ちながら前向きに生きている著者の生き方にさわやかな感動を覚える。また,彼の見る数字の世界はとても美しく,魅力に富んでいることが分かる。そんな世界を一度はのぞいてみたい,と思わせる本である。




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2007年04月15日

オール1の落ちこぼれ、教師になる

「オール1の落ちこぼれ、教師になる」     宮本 延春
★★★★★



中卒で「超」がつくほど落ちこぼれだった著者が、難関大学(名古屋大学)に合格し、高校の数学教師になるまでの半生をつづったノンフィクション。

この著者のように、勉強というものは、やれば誰でもある程度はできるようになる。しかし、当たり前のことだが、誰でも東大や名古屋大に入れるわけではない。この先生の場合は、小学校の時に勉強嫌いになり、いじめも重なってまったく勉強をしなかったために落ちこぼれになってしまったのだと考えられる。もともとは頭のいい、やればできる人だったのだろう。

偏差値でいえば、60レベルの中堅大学なら誰でも正しい勉強をすれば入れるはずだと私は信じている。だが、70を越える難関大学となると、そうはいかない。ある程度、生まれつきの頭の良さも必要になってくる。

そういう意味で、この本から受け取るべきメッセージは、「勉強は、正しい方法で一定の期間やれば誰でもある程度できるようになる」というものである。間違っても、どんな落ちこぼれでも名古屋大に入れるなどと錯覚すべきではない。

もうひとつ、付け加えておきたいのは、この著者は物理学を愛していたということである。物理学を本格的に学びたいという強い情熱を持ち続けていたからこそ、仕事以外の空き時間をすべて勉強にあてるということができたのだろうし、定時制高校から現役で名大に受かるなどという離れわざをやってのけたのだろう。まさに、「好きこそ物の上手なれ」という言葉がぴったりである。

この本を読んでつくづく思うのは、現在の日本の教育のいびつさである。人間は好きなことなら放っておいても熱中してやる。小学生や中学生のうちに勉強を好きにならせるような教育が学校でできればベストだが、現在の知識偏重の制度では、それは望むべくもない。日本は資源が乏しいため、唯一の資源といえるのは人材だけである。そういう日本の特質を考えても、もっと本質的な意味での教育(特に受験)システムの改革を願わずにはいられない。


好きなことを見つけること、情熱を持ち続けることの重要性がよくわかる本である。
posted by 三毛ネコ at 19:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする