2018年09月15日

マネー・ボール

「マネー・ボール」                マイケル・ルイス
★★★★★



今ではそうでもないのかもしれないが、米メジャーリーグのオークランド・アスレチックスはかつて金のない弱小球団だった。そのチームを変えたのがゼネラルマネージャーのビリー・ビーン。しかし、繰り返すが、当時のアスレチックスは貧乏球団。どうして彼はそんなことができたのか?その物語が、今始まる―。

ビリーは高校生のころ、走・攻・守揃った才能あふれる野球選手だった。メジャーリーグのスカウトも彼に注目していた。そしてビリーはニューヨーク・メッツと契約した。

誰もが、ビリーはメジャーリーガーとして成功すると思っていた。しかし、なぜか期待されたような成績を残せず、引退することになる。どうやら、精神的な部分に問題があったらしい。野球向きの性格ではなかったのだ。

時が経ち、アスレチックスのゼネラルマネージャーになったビリー。それまでとは異なり、データに基づいて選手を獲得した。通常重視される足の速さや守備のうまさなどはあまり考慮しない。もちろん、全く無視するというわけではない。出塁率など、他のチームが重視しない部分を大事にしていたのだ。

その新しいデータ重視の野球理論は「セイバーメトリクス」と呼ばれた。ビリーはアスレチックスのゼネラルマネージャーになる前に、すでにその理論を知っていたのだ。彼は小柄でパッとしない選手でも、出塁率が高ければドラフト上位で指名した。それまでの常識にとらわれず、自分の理論に基づく野球をしようとしたのだ。

しかし、なぜか日本のプロ野球界ではセイバーメトリクスに基づいて選手の獲得や野球をしている球団はないようだ。それだけ、まだ日本のプロ野球は古い理論や価値観で運営されているということだろう。

さて、本書ではビリーがセイバーメトリクス理論に基づいて選手を獲得し、独自の野球を行う様子が描かれる。少し古い本だが、野球ファンなら一読する価値のあるノンフィクションである。
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2018年04月17日

マネー・ボール

「マネー・ボール」                 マイケル・ルイス
★★★★★



今ではそうでもないのかもしれないが、米メジャーリーグのオークランド・アスレチックスはかつて金のない弱小球団だった。そのチームを変えたのがゼネラルマネージャーのビリー・ビーン。しかし、繰り返すが、当時のアスレチックスは貧乏球団。どうして彼はそんなことができたのか?その物語が、今始まる―。

ビリーは高校生のころ、走・攻・守揃った才能あふれる野球選手だった。メジャーリーグのスカウトも彼に注目していた。そしてビリーはニューヨーク・メッツと契約した。

誰もが、ビリーはメジャーリーガーとして成功すると思っていた。しかし、なぜか期待されたような成績を残せず、引退することになる。どうやら、精神的な部分に問題があったらしい。野球向きの性格ではなかったのだ。

時が経ち、アスレチックスのゼネラルマネージャーになったビリー。それまでとは異なり、データに基づいて選手を獲得した。通常重視される足の速さや守備のうまさなどはあまり考慮しない。もちろん、全く無視するというわけではない。出塁率など、他のチームが重視しない部分を大事にしていたのだ。

その新しいデータ重視の野球理論は「セイバーメトリクス」と呼ばれた。ビリーはアスレチックスのゼネラルマネージャーになる前に、すでにその理論を知っていたのだ。彼は小柄でパッとしない選手でも、出塁率が高ければドラフト上位で指名した。それまでの常識にとらわれず、自分の理論に基づく野球をしようとしたのだ。

しかし、なぜか日本のプロ野球界ではセイバーメトリクスに基づいて選手の獲得や野球をしている球団はないようだ。それだけ、まだ日本のプロ野球は古い理論や価値観で運営されているということだろう。

さて、本書ではビリーがセイバーメトリクス理論に基づいて選手を獲得し、独自の野球を行う様子が描かれる。少し古い本だが、野球ファンなら一読する価値のあるノンフィクションである。
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2017年01月29日

3バック戦術アナライズ

「3バック戦術アナライズ」                   西部 謙司
★★★★★



3バック。何となく守備的で面白くない、というイメージがある。時代遅れという感じもする。そんな3バック戦術を分析し、解説したのが本書である。

オシムとビエルサが非常によく似ている、という説明が面白い。サッカーへの取り組み方が熱心すぎるところ。率いるチームの守備はマンツーマン。ボールを奪った後の切り替えの速さとダイナミズム。どちらも天才的なトレーナーであること。ビエルサのサッカーは見たことがないので何とも言えないが、オシムについてはある程度分かる。しかし、2人とも素晴らしいサッカーを展開するのだが、1シーズンの最後まで戦い抜けずに消耗してしまうので、タイトルはあまり取れないところまで似ているという。確実に勝てるサッカーと理想的な素晴らしいサッカーは違う、ということなのかもしれない。

最初はフランスリーグマルセイユの現監督、ビエルサが採用している3バックの解説である。しかし、彼のシステムは中盤がダイヤモンド型の3-4-3で非常に攻撃的なサッカーだ。守備的で5バックになりやすい3-5-2とは異なる。1章はビエルサについての考察が中心である。

次はグアルディオラのバイエルン・ミュンヘンの戦術を解説していく。戦術好きにとっては非常に興味深い説明だ。

さらに、ブラジルW杯のオランダ-スペイン戦も分析している。オランダは守備的な5バックで臨んだ。対スペインではバイタルエリアをどう守るかが重要になる。結論としては、相手がバイタルエリアに入ると、徹底的に激しいプレスをかけるのが効果的らしい。オランダはしっかりとスペイン対策の守備をしてきたのだ。攻撃でも、相手をよく研究し、その弱点を突いて1点目、2点目を決めている。オランダが勝ったのはまぐれではない。

また、著者はザックジャパンが3-4-3システムを攻撃ではなく守備のオプションとして使っていればどうだったかと言う。守備で両サイドハーフが引いて5バックになっていればコートジボワール戦は逃げ切れたのではなかったかと。W杯を戦い抜くには守備力が決め手になる、と著者は主張する。守備のオプションなしで臨んだ日本は勇敢というより無謀に近かったということらしい。

オシムもジェフ市原では3バックを使っていた。3バックだから必ずしも守備的ということはなく、相手に合わせて変えていく、そのために状況に応じて3バックも使う、というのが正しい理解のようだ。ブラジルW杯でもオランダやコスタリカが採用したように、決して時代遅れというわけでもない。

もう一つ上のレベルでサッカー観戦を楽しめる、そんな分析や情報が詰まった本である。
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2016年09月24日

戦術リストランテW

「戦術リストランテW」                     西部 謙司
★★★★★



最新のサッカー戦術を分析した本。

ブンデスリーガのグアルディオラのバイエルン・ミュンヘンは「フォーメーションがない」と言われるそうだ。サイドバックがボランチの位置に移動するなど、変化が大きすぎるからなのだが、それはより確実にボールを運び、より強力にフィニッシュするためなのだ。グアルディオラは、例えれば経理の人間に営業をやれと言い、その選手の能力をさらに引き出そうとする。2014〜15年、15〜16年シーズンのバイエルンの攻撃や守備についてかなり詳しく著者が解説する。

そしてこの章では、欧州チャンピオンズリーグのバイエルンvsユベントスの一戦からグアルディオラの戦術を読み解く。

2章では、リーガ・エスパニョーラの2強、バルセロナとレアル・マドリーについて分析している。現在のバルセロナといえば、MSN。ワールドクラスのFW、メッシ、スアレス、ネイマールのことである。この3人を中心とした攻撃的サッカーがバルサの特徴である。ただし、今のバルサはMSNに依存しすぎていて、それが問題のようであるが。

レアルの方は、相変わらずタレント揃いで、強力なチームには違いない。しかし、攻撃的な4-3-3のフォーメーションを選択し、守備に難があったため、無冠に終わり、監督のアンチェロッティは解任された。これが2014〜2015年シーズン。そして2015〜16シーズンでは、ジダンが監督になった。「思ったよりよくやっている」というのが著者の感想である。攻撃的な選手ばかりで守備に難があるのは変わらない。15〜16シーズンはチャンピオンズリーグに専念した方がいいというのが、著者の意見であり、その考え通り、レアルはチャンピオンズリーグで優勝した。

3章には香川真司が所属するブンデスリーガ、ドルトムントの分析もある。監督がトゥヘルになり、ドルトムントのサッカーは堅守速攻からパスサッカーになった。タイプとしてはバイエルンに近くなったという。香川の活躍でドルトムントがチャンピオンズリーグで優勝するのを見たいものだ。

最後の方には、岡崎慎司が所属するプレミアリーグ、レスターの分析がある。レスターが堅守速攻だけで昨シーズントップを走り続けられたのは、バーディーとマレズという、独力で敵陣までボールを運べるタレントがいたからだという。この2人でカウンターで点が取れたわけだ。この2人に加えて、ボランチのカンテという選手もワールドクラス予備軍らしい。もちろん、岡崎の守備面での貢献も大きい。1部残留が目標だったチームが優勝してしまうのだから、サッカーは本当に奥が深い。

最新の欧州のチームや監督、その戦術を分析していて、サッカーファンには十分楽しめる内容になっている。
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2016年09月18日

エデン

「エデン」                          近藤 史恵
★★★★



新聞の広告で見つけて、図書館で予約したのだが、人気のある本だったらしく、手に入ったのは、なんと半年後。自転車ロードレースという、あまり日本ではなじみのない競技が中心なのだが、この作家は分かりやすく読ませる術を心得ている。

誰でも、名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。舞台はツール・ド・フランスである。丁寧な説明で、読み進むうちに、ロードレースの魅力が分かってくる。

スラスラと読める。ミステリーとは言えず、スポーツ小説なのだが、読ませる力は十分に持っている。スポーツ好きでなくても、内容的には面白く読めるだろう。

全体を支配する雰囲気はさわやかで、悪くない。読みやすいというのも、大きな長所だ。しかし、できればミステリー性を強くしたほうが小説として傑作になっただろう。悪くない読後感とともに、少し物足りなさも残る作品である。
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2016年08月30日

イチローの哲学

「イチローの哲学」                     奥村 幸治
★★★★



この本が書かれたのが2011年ごろ。イチローが10年連続200安打を達成した次の年である。まだマリナーズ所属のころだ。

著者はイチローのオリックス時代にバッティングピッチャーを勤めており、イチローとは親しかった。その後はトレーナーをしながら、少年野球の指導などもしているようだ。

イチローは自分が考えて「これだ」と確信して築き上げたスタイルは絶対に変えないという。そういうイチローだからこそ、一流のメジャーリーガーになれたのだ。しかし、自分が納得できたことは素直に受け入れる柔軟性も持っている。

イチローのルーティーンは有名だが、それはオリックス時代から実践していたらしい。バッティング練習では、まずレフト方向への流し打ちから始め、次にセンター方向、最後はライト方向に打ち返す。この頃からイチローは自分のルーティーンをしっかり守り、結果を出してきたころが分かる。

またイチローはヒットが出ない時期に練習量を増やしたりはしなかった。多くの選手が練習量を増やすのは「不安」だからである。しかし、イチローの場合は普段の練習でバットをボールに当てるタイミングやミートポイント、バットの出し方や角度を細かくチェックしているので、フォームやスイングが崩れた時、すぐに気づいて微調整することができる。だから特別な練習はしないのである。

イチローは自分が必要だと感じる時以外は練習をしすぎない。二軍時代に自分のバッティングフォームを確立する。春のキャンプでは確立したフォームをさらに技術的に進化させていく。そういうときは、イチローは猛練習をする。しかし、シーズン中のバッティング練習はバッティングフォームを確認したり微調整するためのものなので、そんなにハードな練習はしないのである。非常に合理的な考え方だ。

バッターボックスに入ったイチローは「目が怖い」と相手投手から言われていたらしい。猛獣が獲物を捕らえる時のような目だと言われていた。それを著者は、イチローが「無の境地」になっていて、ピッチャーを仕留めることだけに集中しているからだと推測している。

それから、この本は著者自身の人生について語っていく。打撃投手をしながらプロ野球の入団テストを受けていた著者だが、結局その夢をあきらめ、スポーツのパーソナルトレーナーになる。

そして、中学硬式野球チームを立ち上げる。教え子にはメジャーリーガー、田中将大もいた。著者が目指したのは、高い意識を持って野球に取り組み、今の自分に求められる役割は何なのかをきちんと自分で考える力を育てることである。メジャーリーグでは、選手が自分の考えを言わないとコーチがアドバイスできないという。従って、選手は目的意識を持って自発的に練習するようになる。

本書の後半は、著者が実践している野球の指導論や、指導者の条件について書かれている。前半のイチローとのエピソードはもちろん面白いのだが、後半の指導論も興味深い。

ベストセラーではないが、意外に拾い物の読書だった。
posted by 三毛ネコ at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月06日

未到 奇跡の一年

「未到」                             岡崎 慎司
★★★★★



奇跡が、実現してしまった。レスター優勝。しかし、これは事実である。そこに岡崎が所属し、奮闘していたことも。いったい、なぜこんな番狂わせが起きたのか。それが知りたくてこの本を読んだ。

ドイツのブンデスリーガで2年連続で2ケタ得点を挙げた岡崎。しかし、Jリーガーだった頃からイングランドのプレミアリーグにあこがれていたらしい。

ドイツのマインツで15得点を挙げると、レスターからオファーが来た。しかし、マインツ所属の他のFW2人が移籍したため、岡崎の力が必要だと慰留された。そして次のシーズンも2ケタ得点を上げ、レスターに移籍したのだ。契約直後に監督がラニエリに替わるなど、思いがけない出来事もあったが、結果的にはそれが良かったのだ。あまり戦術を重視する監督ではないらしい。

レスターの優勝オッズは5001倍。誰一人優勝など考えてもいなかった。ラニエリの目標もプレミアリーグ残留。

ラニエリはイタリア人らしく、守備を重視する。守備に関してはかなり細かく約束事を設けていたという。岡崎は、ザッケローニに似ていると感じたそうだ。

ラニエリは中心選手でも容赦なくスタメンから外すが、ラニエリとの約束が守れれば深い信頼を寄せる。こんなところが監督としてチームをまとめられた要因であろう。

岡崎は「試合に出る」と言う目標に向かってあれこれ考え、もがき、工夫し、没頭している時間がけっこう好きだと言う。この本を読むと、そんな岡崎を応援したくなる。

プレミアでは強いフィジカルが必要だと実感し、筋トレで体重を2キロ増やした。その成果も現れていたようだ。

20試合目でラニエリの目標だった勝ち点40を達成。その後も勝ち点を積み上げ、だんだん優勝に近づいていく。シーズン終盤になっても首位をキープし、2位トッテナムとも勝ち点5差があったが、選手たちが優勝を意識することはなかった。ラニエリも優勝については一言も触れなかった。目の前の試合に勝つことだけを考えていたのだ。何しろ、5001倍の優勝オッズである。期待されていない分、プレッシャーもなかったのだろう。

それに、ラニエリの選手起用も適材適所で効果的だったらしい。それが、ヴァーディーやマフレズの大化けにつながったのだ。

そして優勝が決まる。「どうしようもなくうれしい」、それが岡崎の思いだった。

奇跡のような1年だが、しっかり守ってカウンターという自分たちのサッカーを貫いたからこその結果と言えるだろう。来シーズン、優勝争いは厳しくなるだろうが、期待が大きくなる分、岡崎にとってはやりがいがあるとも言える。2ケタ得点ぐらいしないと、スタメンで出るのは難しくなるだろうが、きっと彼ならやってくれる。チャンピオンズリーグを含めた来シーズンの活躍が楽しみだ。
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2016年05月14日

グアルディオラ主義:名将の戦術眼は何を見ているのか

「グアルディオラ主義:名将の戦術眼は何を見ているのか」         西部 謙司
★★★★



2014年W杯、ドイツ優勝。そのチームの何人かはバイエルン・ミュンヘンの選手たちである。そんなバイエルンを率いるのは、あのグアルディオラ。彼は名将と言われ、気になる存在だったので、この本を読む気になった。

この本は、いきなりバイエルンvsドルトムント戦の分析から始まる。かなり詳しい説明なのだが、サッカーに関する知識が多少あれば十分に分かる。

グアルディオラはバイエルンをバルサ化しようとしていると言われていた。しかし、彼がバイエルンをバルサ化しようとしているというより、バルサと同じ手法をバイエルンでも使っているということなのだ。ただ、違うタイプの選手を使うので違ったサッカーになっているということである。グアルディオラはバルサを超えるチームを作ろうとしている。彼がブンデスリーガを選んだのは、プレミアよりも結果が出しやすく、自分のやりたいサッカーをするための人材がそろっていたかららしい。

4章ではヨーロッパサッカーの歴史も垣間見られ、興味深い。こういう本を読むと、サッカーにおける監督の重要性がよく分かる。そして、ヨーロッパでは常にクラブチームや選手が高いレベルでしのぎを削り、どんどんレベルアップしていることが感じられる。それに比べると、日本はまだまだ歴史が浅い・・・と感じざるを得なかった。スペイン代表が「無敵艦隊」と呼ばれながら、2010年W杯まで一度も優勝できなかったように、日本がW杯を手にするには悔しい、惜しいと思われるような試合経験を積み重ねていかねばならないのだろう。しかし、できれば生きているうちにそれが実現してほしい、と考えるのは私だけではないはずである。
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2016年04月16日

Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か

「Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か」               西部 謙司
★★★★★



Jリーグのレベルは世界の中で高いのか、低いのか。ずっとその疑問を抱いていた。この本では、Jリーグのいろいろなチームの戦術を分析している。

例えば、サンフレッチェ広島は3-6-1のシステムを採用している。最初にそれを知った時、「こんなシステムで勝てるのか?」と疑問に思ったものだが、ちゃんとJ1優勝という結果を出しているので、このやり方は正しかったといえる。広島のシステムを見ると、中盤がぽっかり空いている。だから、広島はロングボールで中盤を省略して攻めることもよくある。青山のような正確なロングフィードのできる選手がいるので成り立つのだろう。3-6-1はよく考えられたシステムと言える。

オシム時代のジェフも解説されている。ジェフは、反転速攻で数的優位を作って攻め込むのがうまかったらしい。また、オシムが目指していたのはトータルフットボールだという。しかし、全員がオールラウンドプレーヤーでない以上、それは実現不可能だった。オシムはロマンティストであると同時にリアリストでもある。それが著者の見解である。そんなオシムの日本代表をもっと見たかったと改めて思う。

それ以外にも、ジュビロ磐田のN-BOX、バルサ化を目指した横浜フリューゲルスなど、読み応えのある内容になっている。

詳しく、的確な解説で広島やガンバなど特徴的なサッカーをするチームの戦術を分析している。なるほどと気づかされることも多く、Jリーグの試合の見方が変わりそうだ。著者によれば、現在のJリーグの戦術はヨーロッパの最先端に近づきつつあるらしい。Jリーグの戦術は決して「ガラパゴス」ではなかったのだ。大木元監督の京都サンガのように、明らかにガラパゴスといえる戦術もあるが、元広島のペトロビッチのように、ヨーロッパに先行するアイデアもある。少なくとも、今のJリーグの戦術はヨーロッパにも劣らないものになってきているのは確かなようだ。

この本を読めば、Jリーグ観戦がより楽しくなるのは間違いない。
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2016年02月01日

サッカー右翼 サッカー左翼 監督の哲学で読み解く右派と左派のサッカー思想史

「サッカー右翼 サッカー左翼」                     西部 謙司
★★★★



私が好きなのは極左である。ただし、政治的な意味ではなく、この本によるサッカースタイルの好みによれば。右翼のサッカーは勝利至上主義、左翼は理想主義。右翼は守備から入り、左翼は攻撃的。見ていて面白いのは左翼のサッカーで、私もそちらが好きである。

左翼の監督の代表格はグアルディオラ。確かに、グアルディオラが監督だった頃のバルサのサッカーは美しかったし、見ていて面白かった。彼は明らかに極左なのだが、試合で右翼的な策を講じたりもする。バイエルンを率いるようになってからは、「ゼロ・センターバック」という斬新な戦術を用いたこともある。彼を評した「この四半世紀で最も優れた監督だ」という言葉には納得させられる。

モウリーニョについても言及されている。彼は中道右派で、「結果至上主義者」と言われるが、強豪相手だと守備的に戦うことが多いのでそう思われるだけ。インテルやチェルシーのような強豪チームを率いることが多いので、実際にはボールを支配した攻撃の時間の長い試合が多いのである。

歴代の日本代表監督でいえば、シメオネ(この本では極右とされている)のアトレティコ・マドリーが好きだというアギーレは右翼、W杯直前にシステムを守備的に変えて結果を出した岡田武史も右翼、攻撃的で理想的なサッカーにこだわったザッケローニは左翼だろう。ハリルホジッチは・・・極端な負けず嫌い、規律重視なのは右翼的だが、今までの試合を見ると、守備ばかり優先するわけではないので、中道右派あたりなのかな、という感じである。

欧州クラブの監督や各国代表チームのサッカーの特徴を切り口に、それぞれの監督や代表チームを右翼と左翼に分けて解説していく。今までにない斬新な試みで、非常に楽しめた。本書を読めば、サッカーの歴史や各監督の戦術傾向に少し詳しくなれるだろう。
ラベル:サッカー W杯 戦術
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2016年01月02日

4割は打てる!

「4割は打てる!」                      小野 俊哉
★★★★



4割を打つ日本人選手は現れるのか。野球ファンなら、誰もが興味を持つ質問である。

この本では、過去の4割バッターなどの成績を分析し、4割を打つための条件を探っていく。商品の説明にあるように、カギとなるのは「対右投手」「四球」「固め打ち」である。私は、現在4割を打てる日本人はイチロー以外にはいないと思っていた。しかし、この本によると、イチローはメジャーで過去に4割を打ったバッターのタイプには当てはまらないのだ。日本人が4割を打つのは無理なのだろうか?本書では、王や長島などの成績も分析しながら、4割達成の可能性を見出そうとする。例えば、イチローが262安打したときに、「四球」の問題をクリアできていれば、4割は達成できていた。21世紀で最高の打率(.378)をたたき出したソフトバンクの内川にも可能性がある。

しかし、この本を読むと、いかに4割を打つのが難しいかがよく分かる。「もっと四球が多かったら」「ここであと5安打していれば」など、「たら」「れば」の連続なのである。それでも、全国的に無名のイチローが突然出てきて打ちまくり、210安打したように、イチローを超えるような新人がいきなり出てきて4割を打ってしまう可能性もゼロではない。その時を楽しみに待ちたいと思う。

データを分析することが好きな人には楽しめる本である。
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2014年08月08日

週間サッカーダイジェスト

「週間サッカーダイジェスト 8/12」
★★★★



アギーレ特集があったので読んでみた。メキシコのメディアは好意的に受け止めているようだ。アギーレは、ディテールにこだわる監督だという。その点はオシムと同じである。また、リーダーシップと弁舌のうまさも評価されているようだ。理想とするのはポゼッションサッカーらしいが、実際にはスペインの監督時代には堅守速攻のスタイルしか選んでいない。ただ、メキシコ代表監督としては攻撃的なポゼッションサッカーをしていたということなので、選手やその状況に合わせた現実的なサッカーをする監督のようだ。ザックよりも柔軟な試合運びをしてくれそうだ。

これから日本代表をどんなチームにしていくのか、楽しみである。できれば、攻撃的なチームにしてほしい。

まずは、9月のウルグアイ、ベネズエラ戦に注目していきたい。
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2014年02月01日

なぜボランチはムダなパスを出すのか?

「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」                北 健一郎
★★★★



日本代表の不動のボランチ,遠藤。遠藤がなぜ「代えのきかない選手」なのか分からなかった。しかし,この本を読んでその意味が分かった。遠藤は2手先,3手先を常に予測してプレーしている。だからスムーズにパスが出せるのだ。

「遅いパス」も時には重要らしい。敵のマークがずれ,スペースが生まれるというメリットがあるのである。

しかし,遠藤を「ボランチ」と言い切ってしまうのには違和感を覚える。確かに日本代表の4-2-3-1の2のところにいる時はボランチである。しかし,ガンバ大阪は4-4-2のシステムを使っているので,正確に言えばガンバでの遠藤はボランチではなく,セントラルミッドフィールダーと呼ぶのが正しい。

この本の大部分が遠藤について書かれている。「なぜ遠藤はムダなパスを出すのか?」と言い換えてもいいくらいだ。遠藤は50〜60種類のゴールに直結するパスを出すという。それだけの引き出しがあるのも驚きである。味方がプレーしやすいパスを出すようにしているらしい。

本書によれば,遠藤が本当によく考えてパスを出しているのが分かる。前方の味方にパス,敵をそこへ引きつけておいてリターンをもらい,左サイドのサイドバックにパス。一見ムダとも思える1本目のパスがその後の攻撃を展開していく上で重要なのだ。遠藤は本当に2,3手先を読んでパスを出している。常に味方と敵のポジションや動きを把握し,どんな展開になるのかをシミュレーションする。この本を読み終わると,遠藤やシャビのすごさが少しは分かるようになる。オシム元日本代表監督は「考えながら走れ」と言ったが,一流のサッカー選手は確かに考えながら走っているのを実感させられた本であった。
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2013年11月03日

宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術

「宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術」             宮本 恒靖
★★★




著者は言わずと知れた,元サッカー日本代表キャプテン。

オフザボールの動きの大切さを説くところからこの本は始まる。オフザボールの動きが重要なことは分かっていたが,もう少し注意して試合を見ようという気にさせられた。

日本代表の遠藤がなぜ「代えのきかない選手」なのかも説明されている。パスを出そうとする,ぎりぎりのところで出すのをやめる判断ができる,そして少しポジションを修正してパスコースを作る,それが遠藤のすごさだという。他にもヒデや俊輔のすごさにも言及している。
 
ただ,宮本でも4-4-2のフォーメーションの真ん中の「4」の中央の2人のMFをボランチと呼んでいる。これは間違いで,正しくはセントラルミッドフィールダ―である。日本人は,解説者ですらこの位置のMFをボランチと間違えて呼んでいる。アーセン・ベンゲルが名古屋グランパスの監督をしていた時,取材記者が前記のポジションを「ボランチ」と言うと,「セントラルミッドフィールダーだ」といちいち訂正していたらしい。あるサッカージャーナリストが言っていたように,日本には4-4-2の文化が浸透していないということだろうか。
 
ちょっと意外なのは,日本代表の注目の選手が岡崎だという意見である。相手DFが突かれたら嫌なゾーンに必ず入ってくる動きをするからだそうだ。
 
また,宮本は本田をワントップで起用すべきだと言う。相手DFを背負ってボールをしっかりとキープでき,得点力もある。私もその意見に賛成である。
 
私の場合,どうしてもボール中心の見方になってしまうのだが,この本でそれ以外のところを見る重要性と面白さを教えられた。
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2013年07月02日

サッカーの見方は1日で変えられる

「サッカーの見方は1日で変えられる」                    木崎 伸也
★★★


シンプル。この本に書かれたサッカーの観戦法である。そして,説明は分かりやすい。たとえば,攻撃ならボール保持者を追い越す選手がいるか,クロスに対して飛び込む人数が多いかといった点を見る。言われることはいちいちもっとも。「なるほど」と理詰めで納得させられる。基本的すぎるとも思うが。 また,○×形式でどういうアクションが○か,どういうアクションを起こさないのが×かなども説明してくれる。

 現時点で世界最高のチームはバルセロナだとこの本は言う。確かにその通りで,バルサは敵の間でパスをどんどんつなぎ,ゴール前までボールを運んでシュートを決めてしまう。あんなサッカーができるのはバルサだけだろう。バルサのサッカーは見ていて面白い。しかし,そのサッカーがとんでもなく高いレベルの技術に裏打ちされたものであることも確かだ。

 読了後,この本を片手にサッカーの試合を片っ端からチェックしてみたくなった。そして,チェックポイントを頭に入れて実際にJリーグの試合をTVで観戦してみたのだが,確かにボーっと見ているよりはサッカーの見方が変わる気はする。しかし,私は特にJリーグの大ファンでもないし,この本のような見方をしていたら,かえってくつろげない。日本代表の試合の時に,またこの本のチェックポイントを気をつけて見るようにしたい。
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2012年09月02日

精密力〜日本再生のヒント〜

「精密力〜日本再生のヒント〜」                      眞鍋 政義
★★★★★




祝,女子バレー日本代表オリンピック銅メダル獲得!著者は現女子バレー日本代表の監督。著者が言う「和」, 「器用さ」,「緻密」がバレーボールに必要とされる力らしい。まさに日本人の特性をそのまま表している。

 著者が実践する「データバレー」はそれほど目新しいものではなく,10年以上前から日本でも導入されていたという。著者は現役の時セッターだった。野球でいえばキャッチャー,サッカーでいえばトップ下に当たるポジションらしい。試合全体を見渡し,コントロールする役目である。そのため,著者はデータに興味を持つようになったらしい。
 
実際に世界選手権でデータを重視したバレーをし,世界ランク1位のブラジルを相手に健闘したという。プロ野球楽天元監督の野村や,ラグビーの平尾誠二もそうだが,どのスポーツでも頭脳的なプレーを重視する監督はいるのだなと思った。もちろん徹底的な練習による高いレベルの技術がないとデータも無意味なのだが,高いレベルでのデータの威力をまざまざと感じた。
 
バレーボールでは「高さ」と「パワー」のあるチームが勝つと思われるかもしれないが,意外とそうでもないらしい。バレーには他にもいろいろな要素が存在するので,日本が世界に勝つには「日本人の精密力を生かすバレー」をしようというのが著者の考えである。バレーは野球などに比べるとボールを上げてスパイクするだけの分かりやすい競技だとなんとなく思っていたのだが,この本を読んでそのイメージはガラッと変わった。実際は,考える要素が実にたくさんある,複雑な競技なのだ。
 
世界選手権での銅メダル,五輪出場権を獲得したことで,著者の「データバレー」の効力は証明されたといえるだろう。この本を読んで,私は女子バレ―日本代表がオリンピックでメダルを取ったのは当然だと思えた。
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2011年09月22日

「3−4−3」究極の攻撃サッカーを目指して

「3−4−3」究極の攻撃サッカーを目指して
★★★★★




3-4-3が攻撃的。「4−2−3−1」の著者の言葉とは思えない。あの本には,確か山本昌邦の採用する「3−4−3」の陣形は守備的だと書かれていたからだ。しかし,読んでみてその疑問は解けた。山本ジャパンの3−4−3とは違う。ザックの3−4−3は5バックになりやすいという欠点はあるが,確かに攻撃的なのだ。また,3−4−3にはかつてのオランダ代表やバルセロナが採用した中盤がダイヤモンド型の3−4−3もある。こちらは文句なしに攻撃的である。どのポジションの選手にも2か所以上のパスの出しどころがあるのが特徴である。

あの日韓大会でベスト4に行った韓国代表も3−4−3で戦っていた。弱者に適したシステムらしい。このシステムで試合をする選手には,複数のポジションをこなせるユーティリティー性が求められる。このポジションしかやらない,というスター選手には向かない。だからこそ,(当時)スーパースターがいなかった韓国代表に合っていたのだろうし,日本にも合っていると言えそうだ。

守備固めというと,下がって守ることだと思われるが,今はそうではないらしい。むしろ,高い位置でボールを奪えるようにする。アジアカップでザックがやったように,長友のようなDFを一列高い位置に置くのが今の流行らしい。ザックは研究熱心なので,ちゃんとそれを知っていたということか。

ザッケローニの3−4−3についてももちろん言及されている。このシステムは,3トップの両サイドがウイング的な役割をして初めて真価を発揮する。3トップが真ん中に寄ってしまうと,3−4−1−2に近い形になり,守備的になってしまうのだ。また,前述したように,相手に押し込まれたときに5バックになってしまう危険もある。著者は,ザックがイタリアで結果を残し続けられなかったのは,3−4−3を使い続けられなかったからではないかと推測している。確かに,バルサのサッカーなどを見ていると,「攻撃こそ最大の防御」と思わされる。攻撃的なサッカーのほうが勝ちやすいかどうかは分からないが,少なくともそういうサッカーは見ていてもやっていても楽しい。日本でもそういう(3−4−3の)サッカーを見たいと思うのは私だけではないはずである。
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2011年08月30日

バルセロナ戦術アナライズ

「バルセロナ戦術アナライズ」                 西部 謙司
★★★★★




感心した。バルセロナというチームをここまで分析し,語りつくしたことに。著者はサッカージャーナリストだが,よほどバルセロナが好きなのだろう,と思わされる。

現在,最強のクラブチーム,バルセロナ。バルサは典型的なボールポゼッションサッカーをする。このサッカースタイルは,70%近くボールを支配できれば,80%の試合には勝てるという考えに基づく。

’88〜90年のヨハン・クライフ監督の時代に今のバルセロナの基礎が築かれたという。そこに,日本代表にも通じるヒントを見出すことができる。イタリアのカウンターサッカー,フランスのシャンパンサッカーのように,バルセロナもまたクライフの時代にバルサ独自のスタイルを見つけだしたのだ。多少の変化はあっても,基本はクライフのサッカーにある。日本代表はまだこれで世界と戦うというサッカーを見つけてはいない。私はそれをザッケローニに期待している。日本が世界で戦える確固としたスタイルを確立した時,日本は一段とレベルアップしたチームになっているだろう。その延長線上にW杯の優勝もあるはずだ。

ヨハン・クライフが採用したシステムは3−4−3(ザッケローニの3−4−3にあらず)。非常に攻撃的な陣形である。攻撃は最大の防御。それがクライフの考え方だったのだ。チャビやイニエスタなど,バルサにはワンタッチでプレーできる選手がたくさんいる。それがバルサのサッカーの生命線でもある。バルサは単なるボールポゼッションサッカーをしているのではない。ゴールを決める方法論をしっかりと持っているのだ。日本代表も大いに見習うべきところではある。

この本は純粋に面白い。私自身,サッカーの戦術や試合の分析が好きなこともあるが,本当に楽しんで読めた。例えれば推理小説の謎解きを読んでいる感じの面白さがある。

バルサのサッカーのコンセプトは「数的優位を作る」「ボールポゼッションの時間が多いほうが勝ちやすい」である。この本を読んでみると,バルサのゲームの進め方は非常に緻密で数学的である。私は文系だが,バルサのサッカーには美しさと魅力を感じる。サッカーがここまで論理的なものだとは思わなかった。

バルサのサッカーはひとつひとつのプレーがよく考えられていて,惰性でプレーしたりその場しのぎでパスを出すことはほとんどないようだ。本当に理詰めなのである。著者は,それを「チェスを思わせる」と表現している。しかし,同じパスサッカーではあるが,このサッカーを日本代表が取り入れるのは簡単ではないだろう。確かに,日本の選手には技術があるし,スピードも備えている。しかし,バルサでは下部組織の小学生時代から考えてプレーすることが求められる。日本代表がバルサのようなプレーをしたければ,やはり同じように小学生の指導から変えていかなくてはならないだろう。

また,バルサの考え方では,頭を使ってプレーすれば,あまり走らなくていいということになる。運動量より動きの「質」を重視するのだ。ジャストなタイミングでいるべきポジションにいればそれでいいのだと。それがバルサの一貫した考え方である。この考え方からも,日本とは方向性が違うようだ。

内容については,かなり細かく分析しているので,マニアックとも言える。サッカーの戦術や分析が好きな人でなければついていけないかもしれない。

やっていても見ていても面白いサッカー,そんなサッカーがもちろん理想である。そのようなサッカーを日本に根付かせるひとつのきっかけとして,この本の試みは有効といえるだろう。この本を一人でも多くのサッカー関係者が読み,日本独自のサッカーを作っていくヒントになってくれることを願う。




サッカー バルセロナ戦術アナライズ 最強チームのセオリーを読み解く
  • 西部謙司
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書評
ラベル:サッカー W杯 戦術
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2011年06月21日

W杯で勝つザッケローニの戦略

「W杯で勝つザッケローニの戦略」               別冊宝島
★★★★




冒頭のページに、「ザッケローニは日本サッカー史上最高の指揮官」とある。ちょっとほめすぎではないか、と思わされる。しかし、この雑誌を読むと、その表現が決して誇張ではないことが分かる。日本代表選手や解説者がザックの戦術や人柄について解説している。ザックの素顔なども紹介されている。

頭のいい監督、と遠藤は言う。それだけではなく、選手の言うこともけっこう聞いてくれるらしい。遠藤がチーム作りについて希望を伝えると、やり方をすぐに変えてくれたらしいのだ。柔軟性があり、選手の意思を尊重してくれる監督である。トルシエとは違って、選手とは良好な関係を築きつつあるようだ。選手が共通して言うのは、指示が細かいということ。また、攻撃的なサッカーを好むようだ。

そして、選手の悪いところについてメディアを通して言わないというのも立派である。監督は選手にミスや欠点を直接言える立場にある。メディアを使って遠回しに伝える必要はないのだ。選手も、自分の欠点などを公の場でボロクソに言われては腹が立つだけである。その点を、ザックはよく分かっている。

ザックがACミランでスクデッドを獲得した時、チームメンバーには一流選手は多くなかった。にもかかわらず、最高の結果を出せたのは、彼の監督としての手腕を物語っている。彼は決して「過去の人」などではない。アジアカップで成し遂げたように、きっとW杯でも素晴らしい結果を残してくれるだろう。
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2010年10月23日

黄金世代 99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年

「黄金世代‐99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」        元川 悦子
★★★★




ずっと気になっていた。日本サッカーの黄金世代はいかにして生まれたのか。そこに、日本がさらにレベルアップするカギが隠されているはずだ。

私が応援しているのは遠藤。読みに優れ、視野が広く、正確なパスが出せる選手である。高校時代からそうだったらしい。しかし、彼には一つ欠点があった。きついことをやりたがらないのである。フィジカルコンタクトをできるだけ避け、ムダな走りはしたくない。しかし、プロになってからはそんな態度も変わっていった。私がそれを最も強く感じたのはW杯南ア大会デンマーク戦。あの遠藤がなんとダイビングヘッドを見せたのである。このとき、遠藤が変わったのを思い知らされた。

ワールドユース優勝の原因は、Jリーグの発足、W杯の招致活動、豊富な国際試合の経験などが考えられる。

ワールドユースを終えた選手たちには一体感があったという。これは、南アW杯の時の日本代表の選手たちが口にしていたのと同じ言葉である。勝てるチームには共通する雰囲気があるのだろう。

そして、黄金世代の多くは海外クラブに移籍する。小野、稲本、高原の3人は成功したと言ってもいいだろう。それは、黄金世代のレベルの高さを実証している。

日韓W杯も忘れられない。初の引き分け、初勝利、そしてベスト16へ…小野、稲本らが最も輝いていた時期である。

そしてドイツW杯。選手やチームの力が落ちたとは思えない。黄金世代はキャリアのピークに達し、テストマッチではあるが、強豪ドイツとも互角に渡り合える力を持っていた。やはり、この本にあるようにチームがひとつにまとまりきれなかったこと、ジーコの選手の自主性に任せるという方針が日本人のメンタリティーに合わなかったことが敗因に挙げられる。

オシムについても語られている。この筆者もオシムを高く評価し、オシムの作り上げたチームを見たかったと記している。まったく同感である。この意見に反対する人は、ぜひ「オシムの言葉」を読んでみてほしい。きっと彼に対する見方が変わるはずだ。

2章では、黄金世代へのインタビューがある。といっても、Jリーグで活躍し続けている者、下部リーグへ移った者、ヨーロッパから日本に帰ってきた者…と様々である。

その中で、たとえば中田浩二が言う。ヨーロッパでは、フィジカル重視で、ファウルもなかなか取ってくれないと。日本代表が世界で強豪になれない理由はそこにある気がする。Jリーグのルールを変えて、ファウルをあまり取らないようにすれば自然と当たりが激しくなり、フィジカル面も鍛えられるのではないか。選手がヨーロッパに移籍するのも大事だが、やはり日本代表の基本になるのはJリーグである。できればルール改正をしてほしいものである。

ワールドユース準優勝のメンバーが口々に語るのは、決勝でのスペインのすごさ。特に、シャビは際立っていたらしい。しかし、ワールドユースでのスペインの優勝、そして南アW杯での優勝は日本にも希望を持たせてくれる。スペインの選手は、欧州にしてはあまり大きくない。おそらく、フィジカルの弱さを判断力や攻守の切り替えの速さ、テクニックなどで補っているのだろう。日本代表もパスサッカーで、あまりフィジカルは強くなく、スペインと共通するものがある。もしJリーグでのフィジカル強化ができないのであれば、スペインを手本にしてパスサッカーをもっと徹底していくべきだと思うのだが…

黄金世代はもう出てこないのだろうか?確かに、小野、稲本らのスター集団はいろいろな条件が重なってたまたま出てきたといえる。しかし、選手を育てる環境は今のほうがよくなっているはずだ。やはり、タレント集団が続いて出てこないのは、日本では野球が一番人気のあるスポーツだからだろう。イチローや松坂のように、運動センスのある子供はサッカーではなく野球のほうに行ってしまう傾向がある。サッカーしかない南米などとは違うのだ。黄金世代を再び生み出すには、育成システムもさることながら、Jリーグのクラブや日本代表が結果を出し、もっと日本のサッカー界を盛り上げていく必要がある。第二、第三の黄金世代が出てくるとき―その時こそ、日本は一流のサッカー国になっているに違いない。




黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年
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書評




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2010年06月15日

日本サッカー 世界で勝つための戦術論

「日本サッカー 世界で勝つための戦術論」  西部 謙司
★★★★




日本はなぜ世界で勝てないのか?理由としては、ストライカーの不在、決定力不足などが挙げられるだろう。しかし、この本では世界と戦うための戦術を考える。まず、岡田ジャパンのプレッシングについて言及されている。著者は、その選択は正しいという。しかし、’09年9月のオランダ戦などでは、後半途中までは運動量が落ちず、前線からのプレスがよく効いていたが、運動量が落ちてから3失点してしまった。オランダの選手が試合後に言っていた。「あの(日本の)サッカーを90分続けることは無理だ」と。ではどうすればいいのか。運動量が落ちたら守備方法を変え、中盤で待ち受けてプレッシングをするようにすればいいのだと著者は言う。もちろん、カメルーン戦のように守備的にやることも正しいだろう。

日本にセンターフォワードがいない、という指摘は正しいようだ。フェルナンド・トーレスやドログバなどが典型的なセンターフォワードらしいが、日本にはそれに当たる人材がいないというのである。玉田や大久保などは高さが足りない。従って、日本は実質「ゼロトップ系」なのだという。そこに当てはまる選手としては、本田がいる。三浦カズはブラジルでプレーしていた時はウインガーだった。しかし、日本に戻ってからはFWになり、Jリーグ得点王にも輝いている。カメルーン戦を見ても、今の本田は明らかにセンターFWのほうが向いている。思い切ってFWに転向すれば、日本のエースになれると思うのだが。

現在では、Jリーグは「輸出型」リーグになり、レベルの高い選手はどんどんヨーロッパに行ってしまう。これ自体は悪いことではない。ガンガンヨーロッパに行って、ヨーロッパ組だけで1チーム作れるぐらいになってほしい。そうすれば、日本もベスト8、ベスト4が見えてくるのではないだろうか。

フランスやオランダの2部よりJ1のレベルのほうが高いという記述には驚いた。ただ、Jリーグではフィジカルコンタクトが少なく、欧州とは当たりの激しさも違う。そのため、Jリーグのスター選手もあまり評価されていないのだ。そして、ヨーロッパでプレーする日本人選手は(チャンピオンズリーグなどで)普通にいろんなタイプのチームと試合をする。だから世界の強豪とやるときもプレーを変える必要がない。やはり、ちょっとレベルが落ちてもヨーロッパでプレーする重要性は高い。

この本が書かれた時点では、まだW杯のグループリーグの組み合わせが決まっていなかった。そこで、この書ではスペインなどを仮想敵国として戦略を考えている。それを読むと、著者は現在(2009年11月)の日本のスタイルに肯定的である。この本を読む限り、グループリーグ突破の可能性も十分あると見ているようだ。単なる希望だと思っていたのだが、カメルーンに勝ったことで、ベスト16の可能性は大きくなった。本大会直前になって現実路線へとシステム変更をした岡田監督に拍手を贈りたい。

W杯が始まってしまい、ちょっと時代遅れになった感のある本ではあるが、ファンにとって役に立つ情報は十分ある。




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2010年05月30日

サッカー日本代表システム進化論

「サッカー日本代表システム進化論」      西部 謙司
★★★




1984年からこの本はスタートする。日本代表のフォーメーションの変化とその進歩について記した本である。W杯出場ができなかった頃の代表の取り組み方もよく分かる。

昔の日本代表は、すぐ隣のフリーの味方へのパスがミスパスになることがあったそうだ。また、パスをつないで中央を制するのが難しかったという。今の日本代表ではまず考えられないことである。映像を見ていないのではっきりとは言えないが、日本のレベルアップを実感させる記述である。

1984年から1991年までの説明は、はっきり言って退屈である。知らない選手が多いし、知っていてもそのプレーぶりは見たことがないからだ。面白くなるのは、ハンス・オフトが監督になってからである。彼は、プレーや戦術を明確に言語化できるスキルを持っていた。それまでの指導者がだれもできなかったことである。しかし、強くはなったが、まだW杯に出られるレベルではなかった。

オフトの後が加茂監督。「ゾーンプレス」の人である。この戦術自体は間違っていなかった。しかし、中盤を省略されるとプレスがかからず、アジア相手にはあまり勝てなかった。

その後のいきさつは多くの人が知っているだろう。ジョホールバルの歓喜、初めてのW杯、そしてトルシエジャパンで初の16強へ―トルシエの代名詞、フラットスリーの意図も明らかにされる。単に、最終ラインを上げてオフサイドトラップを誘い、陣形をコンパクトに保つ戦略だと思っていたが、それだけではない。かなりシステマチックになっている。ラインを上げるときも下げるときも必ず3メートルずつ。細かい約束事を作り、それができるように徹底させた。賛否両論あるだろうが、彼のおかげで日本がグループリーグを突破できたのは間違いない。その点は評価できる。

ジーコ時代になると、選手の自主性を重んじ、選手同士の話し合いによってチームの戦い方を組み立てていく。しかし、代表チームは基本的に時間をあまり取れないため、メンバーを固定してチームを作り上げていこうとした。しかし、そのやり方は日本代表には合わなかった。やはり結論としては、日本にはジーコのやり方は早すぎた、ということらしい。

そしてオシム。著者はオシムを高く評価している。「日本のサッカーを日本化する」オシムが常に言っていた言葉である。結局、その完成形を見ることなく、監督は変わってしまった。最後の試合となったエジプト戦(4-1で勝利)でそれまでで最高の試合をしただけに残念でならない。現在の岡田ジャパンの迷走ぶりを見るにつけ、オシムだったら…と思わずにはいられない。岡田ジャパンについては何も言いたくない。次の監督は、モウリーニョやヒディンクのような世界を知っている人物にやってほしい。南アフリカ大会の代表への願いはひとつ。内容のある、恥ずかしくない試合を。それだけである。今のチーム力を考えると、それ以上を求めるのは酷だろう。日本代表のさらなる進化を祈るのみである。




ラベル:サッカー W杯
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2010年05月10日

野村ノート

「野村ノート」               野村 克也
★★★★★




考える野球。データを重視し、相手を手玉に取る。野村が目指してきたのは、まさにそんな野球である。この本によれば、打者をいくつかの類型に分類し、その打者の特性を考えながら配球を組み立てていく。当たり前のことではあるのだが、プロの選手や監督はこんなことを考えながら試合をしているのかということに気づかされる。

左打者と右打者のバッティングの違いなどは初めて知ることである。左打者の場合、スイングと同時に一塁方向へスタートするため、内角のボールが打ちやすいのだ。だから打率も上がりやすい。首位打者の多くは左打者である。そう考えると、元阪神の今岡や横浜の内川の高打率でのタイトル獲得はすごい記録なのだと分かる。特に、内川は.378という高打率だった。相当に高度な技術を持っているということである。彼なら、メジャーへ行っても3割は打てるだろう。

松坂の投球はフォームから予想される球速と実際の球速が同じぐらいなので打ちやすいというのも驚きである。松坂と言えば日本を代表するエースであるが、プロの目から見ると打ちやすいピッチャーらしい。

イチローファンとしては、彼についての記述も無視できない。イチローはA型(基本的に直球を待ちながら、変化球にも対応する)らしい。元ヤクルトの古田などは、D型(球種にヤマを張る)である。しかし、もしイチローが天性のバットコントロールと動体視力に加えて球種を予測するようになったら、そのとき彼はきっと4割を打つという気がしてならない。その時が楽しみである。

そして野村は、野球の9つのポジションと打順にはすべて役割があるので、9種類の適切な選手を集めることが大事だと言う。実はこの考え、サッカーライターの杉山茂樹さん(4‐2‐3‐1サッカーを戦術から理解するの著者)の主張と一致するのだ。彼はフォーメーションにこだわり、選手をポジションに当てはめるサッカーをすべきだと主張する。各選手が自分のポジションで自分の役割をきっちり果たしてくれれば勝てるという考えである。もちろん、野球とサッカーでは競技の性質が違うので、この意見を正しいと言い切るわけにはいかない。しかし、ものごとの本質は相通じる部分がけっこうあるものなので、同じことがサッカーでも言えるのかもしれない。

野村は「理」に基づく野球をすべきだと言う。その通り、この本の考え方も本当に理詰めである。この本のもとになった「野村の考へ」をプロの選手が読んでいるというのもうなずける。野球の奥深さを垣間見た思いがする。野球をより深く、楽しく観戦できる本である。




ラベル:野村克也 野球
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2010年03月14日

「決定力不足」でもゴールは奪える

「決定力不足でもゴールは奪える」       杉山 茂樹
★★★★




中盤よりも難しいのはフォワード―元日本代表の選手が言った言葉である。タイトルの通り、決定力不足の中でいかに戦うかが記されている。

日本サッカーで中盤の選手が多数出てきた理由も明らかになる。FWはマークが厳しいが、中盤はわりと自由にプレーできるので、うまい選手ほど中盤をやりたがった。中盤至上主義である。技術レベルが低いのをカバーするために、総合力のアップを図った。それが優れたストライカーが出てこなかった原因だという。

サイド攻撃の重要性も指摘されている。当たり前のことだが、サイドは中央に比べると敵からのプレッシャーが半分(中央は360度、サイドライン際は180度)なので、突破もしやすく、攻撃の起点が作りやすい。しかし、日本は「サイド攻撃下手」で、岡田もサイド攻撃を重視していない。日本の課題のひとつである。

そして、今の代表のシステムである4‐2‐3‐1のトップ下にも決定力を求めるべきだと著者は主張する。私がこの書評を書いているのがアジアカップ、バーレーン戦の後。トップ下には本田が入った。サッカーファンなら誰でも知っているように、彼はオランダ2部リーグで16得点し、MVPを取った。MFでありながら、優れた決定力も持っている。著者は、トップ下の選手のアタック力を伸ばすことが、決定力不足の現実的な解決法だと言う。バーレーン戦でもゴールを決めたし、トップ下の「アタッカー」は彼しかいないだろう。この本によれば、「これまでの日本の中盤にいなかった新しいタイプの選手」だそうである。本田がオランダに行って最も変えたのが「意識」である。彼は、20得点するつもりでVVVフェンロに行った。ゴールを常に狙う意識をしただけなのだが、オランダのサッカーがよほど合っていたのだろう。予想を上回る大活躍。日本に新しい風を吹きこんでくれる選手である。

4-2-3-1のトップ下は、3-4-1-2のトップ下とは意味合いが違うという部分も見逃せない。1トップの下の場合は、FWが1人なので、2トップ下より位置取りが高くなり、アタッカーとしての能力も求められるという。俊輔が今トップ下をやらない理由がよく分かった。そういうことなら、やはり今のシステムではトップ下は本田がベストだろう。

岡田監督や俊輔などの個人名は出てくるが、著者の主張は「4-2-3-1」と似たようなものである。布陣が重要であり、サイド攻撃を重視するサッカーをしろということである。彼は、選手をポジションに当てはめるサッカーをしろと言う。それがヨーロッパが南米に勝つために取った戦略らしい。しかし、本当にそれが正しいのかということには少し疑問が残る。サッカーのポジションは試合が始まってしまえばどんどん変化する流動的なものではないのか。与えられたポジションで与えられた役割さえ果たしていれば勝てる。もしそうなら、これほど簡単な話はないのだが。「4-2-3-1」では、布陣(システム)について明確な意見が述べられており、それに納得し、目を開かされる思いがした。この本は、2冊目のせいかあまり心を動かされることはなかった。しかし、システムが大きな意味を持ち、サイド攻撃がサッカーのセオリーだということを改めて教えられた。今が旬の選手の名前も次々登場するので、ファンは楽しめるだろう。






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2010年01月31日

野村の革命

「野村の革命」              野村 克也
★★★★★




元楽天監督、野村。選手としては600ホーマー、三冠王。監督としてもヤクルト時代にリーグ優勝4回、日本一3回。クイック投法を発明し、解説ではノムラスコープ(ストライクゾーンを縦、横にそれぞれ3分割したもの)を初めて使った。その野球界での功績を数え上げればきりがない。

野村は努力家である。決して天才(長嶋のような)タイプではない。別の本で読んだが、彼は不器用だったらしい。選手時代、ストレートが来ると予想して変化球が来るとそれに対応できない。その弱点をカバーするためにデータを集めて分析し、読みの精度を上げた。それでタイトルを取れる大打者になっていったのである。ID野球の原点はここにある。この本でも、データを集め、それを分析して試合に生かすことの重要性が強調されている。楽天のスローガンであった「無形の力」もそれである。状況の変化を読み、相手を分析し、その心理を見抜くこと。頭の良し悪しは感性で決まる、と言った人がいる。野村も同じことを言う。阪神の監督時代、矢野に「何かを感じろ」と常に言っていたらしい。矢野は頭がいいのでそれができたようだが、たとえば元ヤクルトの池山などは感性が鈍いと野村に言われていた。野球頭脳が優れていないということだろう。

清原よりも元巨人の元木を打ち取りにくいバッターとして評価しているのも面白い。頭を使って相手のバッテリーの裏をかくような打撃をするらしい。野球は頭を使うスポーツなのだ。

野村の目から見た長嶋の記述も興味深い。野村のささやき戦術は通用しないのだ。自分の世界に入っていて人の話を聞いていないから。また、データに基づく配球でも抑えられない。その日の気分や調子でデータから外れたバッティングができるからだ。まさに「天才」としか言いようがない。

野球は身近なスポーツだが、この本を読むと、いかに多くのことを監督や選手が考えなければならないかということに気づかされる。心理を読んだり、相手の弱点を分析したりすることが現代のプロ野球では必須である。それを根付かせたのも野村の大きな功績と言っていいだろう。彼によれば、「人は何を残すかでその評価が決まる」そうだ。その意味で、彼は育てた選手を含め、限りない財産を日本球界に残してくれたのである。この本でそのことがよく分かる。




ラベル:野村克也 野球
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2009年12月06日

ナンバ走り

「ナンバ走り 古武術の動きを実践する」

              矢野龍彦 金田伸夫 織田淳太郎  

★★★★





ナンバ走り。皆さんも、どこかで耳にしたことがあるだろう。甲野善紀が提唱する古武術の動きである。元巨人の桑田や、陸上の末続慎吾が取り入れた身体の使い方である。桑田はその後、タイトルを獲得し、末続は銅メダルを取った。

ナンバの動きは、常識を超えた動きを可能にする。例えば、バスケットにおいて、振りかぶらなくても速いパスが出せるようになるのである。こういった動きは、いろいろなスポーツに応用できるだけでなく、日常生活にも使える。読んでいて気がつくのは、ナンバの身体の使い方というのは意識が非常に重要になるということだ。たとえば、左右の「骨盤を交互に引っぱる」ようにして走るとか、肩の骨を分離するとかいったことである。かなり個人の感覚に依存し、外からは分かりにくい。普段私たちが意識しない感覚を使っている。だが、一流のアスリートは無意識に古武術的な体の動きをしているらしい。たとえばイチローがそうである。古武術で「井桁崩し」と言われる身体操作をすることにより、よりヒットを打ちやすくしている。彼自身はそんな技は知らないだろう。しかし、理想のバッティングフォームを求め続けて試行錯誤をしてきた末に、より合理的な体の使い方(井桁崩し)にたどり着いたとも考えられるのである。ものごとを追求していくと、その究極は案外似ていたりするものだ。これもそのひとつの例と言っていいだろう。

全体的に、いろいろなスポーツを取り上げながら、古武術との共通点などを分析しており、スポーツ好きには興味深い内容となっている。




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2009年10月25日

サッカー戦術クロニクル

「サッカー戦術クロニクル」        西部 謙司
★★★★★




トータル・フットボール発祥の地、オランダのサッカーは面白い。非常に攻撃的である。何しろ、モットーが1-0で勝つより、2-3で負けるほうが美しいというお国柄なのだから。サッカーには、その国の国民性が色濃く反映される。オランダの特徴は合理性と思い切りの良さ。ヒディンクのやるようなサッカーである。

そんなオランダのサッカーを含む、サッカーの戦術の変化を時系列で解説したのが本書である。サッカーの戦術の変遷がよく分かる。オランダのトータル・フットボールやアリゴ・サッキのゾーンディフェンスとプレッシングなど、サッカー好きにはより観戦が楽しくなる情報が満載。説明も分かりやすく、サッカー観戦する視点を変えてくれそうである。

著者は、サッカーで戦術が占める割合は小さいと言う。「サイドチェンジを使って攻める」という戦術があっても、それに適した状況がなければ、他の展開を選手が選択することになる。確かにそれは言える。しかし、同時に戦術は弱いチームが強いチームに勝つために絶対に必要なものでもある。この本に示されているように、1982年W杯のブラジルは成熟した選手たちが自分で判断して動き、ゲームを展開していけるチームだった。しかし、それは現在の日本代表には当てはまらない。ジーコのときの代表を見ても分かるとおり、日本はまだ自分たちだけの判断でやっていけるほどチームとして成熟してはいない。世界ランク40位の日本が世界の強豪と互角に戦うには、より優れた戦術をどんどん取り入れていかなければならないだろう。

1974年のオランダに始まり、現代のアーセナルやマンチェスター・ユナイテッドなどの戦術を詳しく知ることができる。この書を読んで分かるのは、ヨーロッパや南米では日本よりはるか以前から高いレベルの戦いの中でより強いチームであるための戦術を磨いてきたということだ。Jリーグができてからほぼ13年。アジア・チャンピオンリーグができてからわずか7年。日本が世界の強豪と渡り合うためには、まだまだ時間と経験が必要だろう。それでも、日本のサッカー指導者の本などを読むと、日本サッカーは正しい方向に向かっているようだ。日本がベスト4ぐらいになれる日も、そう遠くはないのかもしれない。




 
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2009年09月12日

ベンゲル・ノート

「ベンゲル・ノート」           中西哲生、戸塚啓 
★★★★




アーセン・ベンゲル。ファンには言わずと知れた、サッカー界の名将である。その手腕は、あのストイコビッチも高く評価していた。この本では、彼の監督としての活躍を辿るとともに、その指導方法も知ることができる。

日本ではまだそんなに有名ではなかった彼は、名古屋グランパスの監督として知られるようになる。しかし、その彼をもってしても、グランパスを勝たせるのは容易ではなかった。弱いときの阪神タイガースのように、負けぐせがついたチームを強くするのは実に難しい。しかし、思うように勝てない状況の中、チームはフランスで合宿をきっかけにひとつにまとまっていく。その後のJリーグの試合でグランパスは勝てるようになっていくのである。

ベンゲルの目指すのは、たとえばオフェンスではクリエイティブな部分を生かしながら組織的なサッカーをすることである。これはそのまま、今の日本代表が目標にできるコンセプトである。

この本では、実際の練習方法が解説してあるのだが、それを見ると、実に実戦的で無駄のない練習をしている。合理的で、よく考えられている。オシムとは違い、そんなに厳しい練習ではなさそうである。練習時間もそんなに長くはない。その練習の中で、簡単なボール回し、シンプルなプレーを心がけろという指示が印象に残る。サッカーはそう簡単ではないので、この言葉が常に正しいとは限らないが、今の日本代表には参考になるだろう。中村憲剛や本田圭佑を除いて、日本代表はミドルシュートを打たない。シュートできそうな場面でもパスを選択する。こういう部分はベンゲルのアドバイスに従うべきだ。かつての日本代表、柳沢がそうだった。FWなのに、シュートにこだわらず、「サッカーはそんなに単純ではない」と言って得点が少なかった。他のポジションはともかく、FWの仕事は点を取ることである。「もっとシンプルに」という言葉はFWが必ず実践しなければならないことだ。

彼は、オシムと同じように、頭を使ったディフェンス、オフェンスをしろとも言っている。やはり、体格や運動能力で勝る相手に対しては、頭を使わなければ勝てないということだろう。

サッカーファンなら知っているように、その後ベンゲルはアーセナルの
監督になる。そして、そこでもすばらしい結果を出す。しかし、彼は今でも日本の役に立ちたいと思っているという。ならば、南アフリカ大会の次はぜひ彼に…と思うのは私だけではあるまい。

グランパスでの練習を見ても、そんなに変わったことや指導はしていない。アーセナルでも、練習内容は同じらしい。それでいて結果は出ている。結局、当たり前のことが試合でも当たり前にできるのが強いチームだということだろう。

頭が良く、冷静に試合を分析し、実績もあり、選手の起用も的確である。岡田の後の監督は彼しかいない。彼なら、確実に日本をベスト8ぐらいまで導いてくれるだろう。




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2008年10月13日

捕手的人間の時代

「捕手的人間の時代」             森 祇晶
★★★



西武ライオンズの黄金時代を築いた元監督の捕手・監督論。

キャッチャーという、常に考えなければならない特殊なポジションでいかに彼が保守としての能力を身につけていったかが語られる。同時に、この本は、ビジネスマンに対する提言にもなっている。

常に先を読み、周囲を観察し、周りの人間から何かを吸収する。そんな「捕手的人間」がこれからの時代に必要とされると彼は言う。しかし、考えてみればこれは社会人として成功するためには当たり前のことで、特に捕手的であるとは言えないと思う。

さて、本書では著者の捕手としての体験を一般社会のビジネスに当てはめ、論じていく。そのたとえは当てはまっていることもあり、そうでない場合もある。彼は言う。捕手的人間は結果よりもプロセスを重視すると。楽天の監督、野村も同じことを言っている。キャッチャーというのは、どう攻めれば打者を打ちとれるかを常に考える。一球目は外角低め、次はインハイ、最後は内野ゴロに打ちとろう、などと考える。そのため、自然に投球の結果よりもプロセスを重視するようになるのである。これは、どの世界にも当てはまることではある。結果ばかり求めても、そのプロセスをきちんと把握していなければ、次にうまくいくとは限らない。そういう意味では、確かにビジネスの世界にも「捕手」が何人か必要であろう。

また、捕手的人間は他人と違う角度でものを見るという。これは言葉にすると簡単そうだが、実際はなかなか難しい。それができるのはクリエイティブな職業、トップセールスマン、会社の社長など、一部の人間だけだろう。企業にはもちろんそういう人材は必要だが、全員がそうである必要はない。アリの世界のように、働きアリ、兵隊アリ、女王アリなどさまざまな役割を持った人々が集まって成り立つのが企業だからである。ビジネスにおける「捕手」は、全体の2〜3割いれば十分だろう。

また、森は野球の勝利の方程式などというものはないという。本当だろうか。私にはそうは思えない。阪神がいい例である。岡田監督になってからJFKという抑えの切り札を得て、勝利の方程式を作り上げた。そのおかげで、リーグ優勝もできたのだ。勝負のときにパターン化した思考はよくないと森は言う。しかし、この展開なら絶対に勝てる、というパターンを持つことはチームにとって非常に大事であろう。それによって、選手にも自信と安心感が生まれる。そのパターンに持ち込もうとして頑張るので、モチベーションを高めることにもつながる。特に弱小チームにとっては、そういうパターンを持つことは非常に大事になってくる。

日本でプロ野球がこれだけ受け入れられ、定着している理由はこの本を読むとよく分かる。プロ野球の世界は一般のサラリーマン社会に通じるところがたくさんあるのだ。だからこそ、(特に中年以上の)サラリーマンにプロ野球がこれだけ人気があるのだろう。彼らは楽しむだけでなく、そこから仕事に通じる何かを得ているのだ。そういう意味で、この本は管理職の人々にとって何かのヒントになるかもしれない。
ラベル:森祇晶 野球
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2008年09月21日

サッカー 勝敗を左右する守備力

「サッカー 勝敗を左右する守備力」      三村 恪一
★★★


 
日本サッカー育ての親、デットマール・クラマーは言った。得点を取るにはフォワードの素質が必要だが、守備は教えられるし、鍛えることができると。日本代表の試合を見ていると、まだまだ守備力を高めていく必要を感じる。決定力不足を嘆く前に、まずできることから手をつけていくべきだろう。

この本では、1対1の守備力の重要性が指摘されている。しかし、どうしても日本は1対1の場面ではヨーロッパや南米の選手にはかなわない。だからこそ、組織的な守備をもっと磨いていかねばならない。とは言え、1対1の場面は試合の中で必ずと言っていいほど出てくる。クラマーの言葉が正しければ、ヨーロッパなどの選手に対しても日本人が互角の守備ができるということになる。それだけでも、世界と戦うには十分な武器である。

また、理想的なディフェンダーとして、イタリア代表のカンナバーロを挙げている。彼は日本人のDFより小さいが、その読みとポジショニングによってすばらしい守備をする。サッカーは頭脳的なスポーツなのだということが分かる。と同時に、少なくともディフェンスでは体格は関係ないということになる。現在でも中沢と闘莉王というすばらしいDFがいるが、カンナバーロの活躍に刺激されて、優れたDFが次々に出てくることを願いたい。

著者はこの本の中で、守備の重要性を説く。それは当たり前なのだが、イタリアやギリシャのサッカーは見ていて面白くない。もちろん、日本がW杯で上位に食いこむためにはギリシャのような堅守速攻のチームを作るというのもひとつの選択肢ではある。しかし、いつか日本が世界の強豪になったときは、やはりオランダのような攻撃的なサッカーを目指してほしい。1-0で勝つより、2-3で負けるほうが美しいとオランダ人は言う。日本も、そういう見ていて面白いサッカーをしてほしい。まだ今の段階では、勝つことで精一杯だが。

選手か監督でもなければ、あまり夢中になって読むような本ではない。技術的な説明が多いのだ。しかし、この本を読むことで、地味でこれまでディフェンスに興味を持てなかった人も、ちょっと違った視点で守備を見られるようになるだろう。
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2008年08月18日

勝者のシステム

「勝者のシステム」             平尾 誠二
★★★★



元サッカー日本代表監督、オシム以前にまったく同じことをやろうとした日本人がいた…と言ったら、皆さんは驚くだろう。ただし、ラグビーの世界の話である。平尾誠二のことだ。彼は元日本代表監督である。彼は非常に頭脳的なプレーをしたラガーマンで、その考え方はオシムと奇妙なほど一致する。私は、彼がサッカー界にいたらと残念でならない。もしそうだったら、きっと中田英寿のような司令塔として活躍し、引退後は代表監督になれただろう。そして、日本代表をさらにレベルアップさせてくれたに違いない。

私は、単なるスポーツ選手の書いた本はあまり好きではない。しかし、平尾や野球の野村監督のような頭を使って勝負するタイプは別である。平尾は体が小さいと言うハンディを乗り越えるために、野村は不器用さを克服するために頭脳的なプレーをし、活躍した。そのため、彼らは単なるスポーツバカではなく、一般社会にも通じる考え方、哲学を持っている。私はそこに強く魅かれる。

この本は、平尾が神戸製鋼に入ってからキャプテンとして7連覇するまでの過程をつづったノンフィクションである。

平尾は、入社3年目でキャプテンを任された。そのころ、神戸製鋼では、キャプテンが監督の役目をしていた。そして、神戸製鋼ラグビー部の抜本的な改革を進めていく。彼は、練習で惰性でプレーした選手を厳しく指導した。練習であっても、ひとつひとつのプレーに明確な意図や意味を持たせようとしたのである。私は、このエピソードを知って、オシムを思い出した。彼は「考えて走るサッカー」を目指し、練習でも常に明確な意図を持ったプレーをすることを求めた。それはまさに、平尾のやろうとしたこととぴったり一致するのだ。一流の指導者の考えることは自然と似てくるのかもしれない。

現役時代、平尾は体が小さく、一対一の勝負では勝てなかった。その弱点を克服するため、組織を生かした総合力で勝とうと考えた。それで、ほかの選手を生かそうとしてパスワークなどを磨いた。これはまことに理にかなっており、今のサッカー日本代表にも通じる考え方である。オシムが、そして日本サッカー協会がやろうとしたのがそれだった。個の力でかなわない南米やヨーロッパの強豪国に勝つために組織力を磨く。ただ、今のサッカー代表はまだ組織力の強化を徹底していないように見える。もっと組織力を磨かなければならない。それが日本が世界と戦えるようになる道であろう。

平尾の本は以前読んだことがあるが、非常に頭のいい人という印象を受けた。この本を読んで、ますますその思いは強くなった。彼は論理的にものごとを考え、実践していくタイプの人間である。勝つためにはどういう練習、プレーをすればいいかを常に考えている。だからこそ、日本代表の監督にも選ばれたのだろう。ラグビーのことはあまりよく知らなかったのだが、この本で、頭脳的なスポーツであることが分かった。できれば一度は生で観戦してみたい。そんな気持ちになった。
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2008年08月10日

サイドプレーヤーの本質

「サイドプレーヤーの本質」      責任編集 相馬 直樹 
★★★



元日本代表のサイドとして活躍した相馬によるサッカーの技術・戦術書。雑誌の形式を取っている。

別の本で読んだが、現代サッカーでは「サイドを制する者が試合を制す」らしい。サッカーのフィールドで、サイドは相手からのプレッシャーを受ける範囲が中央の半分(真ん中は360度、サイドのライン際は180度)と少ないので、攻撃の時には突破しやすく、チャンスが作りやすい(もちろん、相手も同様であるが)。

サイドをやっていると、自分のプレーとは関係ないところで点が決まったりすることがあるが、サイドにはサイドの面白さがあると彼は主張する。相馬の武器は運動量。それをベースに、攻守両面でいいポジションを取ることを考えてずっとやってきたという。だからこそ、日本代表にも選ばれたのだろう。やはり、一流の選手はどこか違う。

また相馬は、サイドバック(まあ、どこのポジションでもそうだが)は柔軟な考え方をしなければならないという。同じことをメジャーリーグのイチローも言っている。自分が心がけているのは、臨機応変なプレーだと。一流になるためには、惰性でプレーしていてはいけないということだろう。

本書を読むと、ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスの長所と短所などもはっきりと分かる。サイドだけでなく、全体的な攻撃や守備の考え方を記しているので、コアでないサッカーファンにはサッカーをより楽しめるようになるだろう。

Jリーグができて14年。プロサッカーの歴史が浅いせいか、このような戦術書はあまり見かけない。だからこそ、非常に価値がある。どうやら、中高生向けに書かれたサイドの戦術・技術の連載をまとめたものらしい。もちろん、サッカーファンが読んでもためになる情報が満載。ただ、相馬はサイドバックだったため、試合における考え方などは守備に関するものが多い。もちろん、守備も大事だが、やはり攻撃における戦術書も欲しいところではある。

サッカーは一見単純そうなスポーツに見える。しかし、このような本を読むと守備だけでもさまざまな要素について考えながらプレーしなければならないことに気づかされる。

守備における判断力、コミュニケーション力の重要性も指摘されている。日本サッカー協会の専務理事である田嶋幸三がやろうとしていることが、まさに瞬間的な判断力、コミュニケーション力に優れた選手を育てることである。こういうサッカー関係者の考え方の一致を知ると、日本のサッカーは正しい方向に進んでいると確信できる。
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2008年07月07日

サッカーを知的に愉しむ

「サッカーを知的に愉しむ」     林信吾、葛岡智恭
★★



この本は、いきなり94年のW杯アメリカ大会の批判から始まる。アメリカ人は「特別」だと著者は言う。アメリカ人はフェアなスポーツを好む。サッカーは人数が少なくなってもその人数で最後まで戦い、ロスタイムの計測もいい加減なのでアメリカには長い間サッカーが根付かなかったのだと。よく日本では欧米と呼び、アメリカとヨーロッパを同じ考え方をするものとしてとらえているが、実際は違うらしい。ヨーロッパ人は運・不運も含めてゲームを楽しむが、アメリカ人は公平でなければ気が済まない。ここらあたり、はっきりと欧と米の違いが見られ、興味深い。

2002年の時点で発売された本なので、データは少し古いが、世界のサッカーのフォーメーションについても触れられている。トルシエジャパンが取っていた3-4-1-2というシステムは、4-2-3-1という流行のシステムには相性が悪い。サイドバックが真ん中に寄ってしまうため、両側のスペースが空いてしまい、そこを突かれるのだ。最近の日本代表の試合でも、岡田ジャパンは4-2-3-1を多く採用している。正しい選択といえるだろう。

この本で指摘されているように、サッカーを戦術的に見ようとするときに、テレビ観戦は向いていない。画面に映らない部分がサッカーにおいては結構大事なのだ。本当にサッカーを楽しみたければ、スタジアムに行くしかない。

フーリガンについても少し触れられている。フーリガンの出現の背景には、宗教的な対立や階級社会の存在があり、なかなか複雑らしい。それだけヨーロッパではサッカーの存在が大きく、サッカーに情熱を注ぐ人々が多いという見方もできるだろう。日本でも最近、ガンバ大阪と浦和レッズのサポーターが争いを起こし、チームは罰金を払わされている。もちろんこういう事件は防ぐべきなのだが、それだけ日本でもサッカー熱が高まってきたひとつの表れともいえる。

とりわけ印象に残るのがJリーグの百年構想である。Jリーグの各クラブがサッカーだけでなく総合的なスポーツ施設の整備や運営をし、スポーツ文化を地域に定着させようとするものである。スポーツ文化がまったく定着していないとは思わない。今でも、公立の体育館などがあって、そこではスポーツを手軽に楽しめる。しかし、Jリーグはさらに地元密着型のスポーツ文化を形成しようとしている。Jリーグを中心として地域が活性化し、ついでにサッカーが強くなってW杯で優勝できるくらいになれば言うことはない。

日本独自のサッカーについても言及されている。私が考える日本の理想のサッカーは、攻撃的で、パスを回して相手ディフェンスを崩し、3点取ってもさらに4点目を取りにいくサッカー。今年のユーロのスペインやオランダのようなイメージである。間違っても、イタリアのようなサッカーはしてほしくない。そんなスタイルの日本が世界を席巻する日が来ることを願ってやまない。
ラベル:サッカー 林信吾
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2008年04月27日

4−2−3−1 サッカーを戦術から理解する

「4−2−3−1 サッカーを戦術から理解する」  杉山 茂樹
★★★★★



サッカーはシステム(布陣)でするものではない―そう言ったのはかの中田英寿であった。しかし、この本では布陣を切り口にサッカーを語る。そして、サッカーは監督で決まるとまで言い切る。少し乱暴な意見のようだが、私はそれに賛成である。2002年W杯の韓国を見ればそれがよく分かるだろう。ずば抜けた選手がいないのに、イタリアやスペインを撃破し、ついにはベスト4まで行ってしまった。これは大部分ヒディンクの功績によるものであろう。監督でサッカーが決まった好例である。

サッカーマニアでない人にとっては、勉強になる説明も多い。その1つが、「サイドを制するものが試合を制す」である。タッチライン際は中央と違って、片方からしか敵のプレッシャーを受けない。従って、突破もしやすいのである。日本代表の攻撃で、サイドをえぐってのクロスが多いのもうなずける。といっても、日本代表の場合は攻め手が少ないので素直にほめるわけにはいかないが。

日本代表がフランスW杯に出場して以来ずっとサッカーファンであるが、この種のサッカー理論書を読んだことはなかったので、新鮮だった。数ページ読んだだけで、私が求めていた本であることが分かった。非常に内容の濃い、良書である。オランダの3−4−3のシステムや、イタリアの3−4−1−2などの特徴が戦術的にはっきりと示される。

また、ストイチコフやロマーリオ、リバウドなどのスター選手はわがままであり、チームの戦術どおりにやらないので、全体として好チームにはなりにくいと書かれている。逆に言えば、スターが1人もいなくても、高いレベルの戦術とそれを忠実に実行できる選手がいれば、かつてのオランダ代表のようにすばらしいチームができることを意味している。このことは日本代表にも大いに期待を持たせてくれる。中村俊輔のようなスターがいなくても、日本代表がW杯でいい結果を残せる可能性は十分あるということである。ただし、ヒディンクのような名将がいてこその話であるが。

そして、話は日本代表のシステムにも及ぶ。攻撃サッカーをしたいといいながら守備的な3−4−1−2を採用したトルシエの戦術の矛盾、高い位置でボールを奪えない4−2−2−2を採用したジーコへの批判。日本のメディアは報じなかった内容だが、それらは十分に読者を納得させてくれる。

日本代表が昔から抱える課題、決定力不足についても言及されている。守備的な3−4−1−2、4−2−2−2ではサイド攻撃ができる選手が2人しかおらず、チャンスを多く作り出すことは不可能というのが著者の考えである。非力なFWしかいないという現実を認め、そのFWが確実に決められるような決定的なチャンスを多く作り出すのが大事なのだろう。そのために、システムの変更も有効になってくるだろう。

著者の言いたいのは、はじめにシステムありきではなく、その監督がやりたいサッカーをするために、あるシステムを選択するということである。その意味で、中田が言ったことは間違ってはいない。

最後に、この言葉をもってこの書評を終えたい。「布陣(システム)には選手を育てる力がある」
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2008年04月13日

イチローの脳を科学する

「イチローの脳を科学する」          西野 仁雄
★★★



私はイチローのファンである。その記録もさることながら、彼の独特のものの見方、野球哲学のようなものに興味を引かれる。日本での200本安打以来、ずtっと彼のことを応援してきた。

この本では、イチローの才能の秘密が脳科学の視点から明らかにされる。著者は医者なので、その言葉には説得力がある。その説明によれば、豊かな環境に置かれることで人間の脳は活性化するらしい。そういう意味では、まさにイチローは才能、環境、努力の3つがそろって生まれた天才と言える。彼は運にも恵まれていた。こんな選手はもう出てこないのではあるまいか。少なくとも、あと100年ぐらいは。

本書では、まずイチローの記録について触れている。その文章に、イチローは読みや狙いが外れてもスイングの途中で修正できるとある。器用で、バットコントロールがずば抜けていいということだろう。しかし、イチローは読みのバッターではないらしい。天性のバットコントロールに加えて、配球を読んで打つようになれば、日本人初の4割も可能だと思うのだが。なぜ彼がそうしないかは謎である。

しかし、イチローがクレバーな選手であることは、皆さんご存知のとおりである。彼は、メジャーでやっていくためには自分で自分をコーチできる能力が必要だという。つまり、監督やコーチに頼るのではなく、自分で分析し、自分の練習やプレーを修正していくということである。いかにも、個人主義のアメリカらしい。日本なら、監督やコーチと二人三脚でやっていくところだが、メジャーでは自分自身で考え、プレーすることが求められる。しかし、日本のスター選手がたくさんメジャーで活躍しているのを見ると、日本の一流選手はすでにそういう姿勢を身につけているといってもよい。ジャパニーズ・ベースボールはすでに世界に通用するレベルになっているのだ。日本の選手はもっとそのことに自信を持ってよい。また、守備でのイチローの送球はレーザービームと呼ばれている。その送球にしても、ただ肩が強く、コントロールがいいだけではできない。背中を向けてボールを追っている間も走者や塁の位置をイメージし、振り向きざまに投げたり、勢いをつけて投げられるように少し後ろから前に走りながらキャッチするなど、頭を使ったプレーをしている。イチローの頭の良さを示すエピソードだといえるだろう。

著者は、目標を持ち努力を続けていくことで自分の脳を創り変えることができると主張する。この言葉は私たちに希望を与えてくれる。イチローが人並みはずれた努力をしてきたことは皆さんもすでに知っているだろう。私たちはイチローにはなれない。しかし、イチローのように努力し、自分を変えていくことはできる。どんな分野であれ、イチローほどの努力を積み重ねるなら、ひとかどの成功を収めることができるだろう。私たちの脳の中に秘められた可能性を感じさせてくれる一冊である。
ラベル:野球 イチロー
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2008年03月23日

イチロー革命

「イチロー革命」            ロバート・ホワイティング
★★



題名は名ばかりで、イチローに関して書かれた箇所は全体の1/5ぐらい。後の部分は、日米の野球観の違いや、その関係性の変化について書かれている。日本の野球を知らないアメリカ人向けに書かれたものなので、仕方ないといえば仕方ないが。

全体的には、それほどたいした本ではない。イチローや他の日本人メジャーリーガーについての記述も、普通の野球ファンなら知っていることばかり。

ただひとつ考えさせられたのは、日米の野球の相違についてである。ひとことで言うなら、メジャーリーグは楽しく野球をし、結果が出ればよいとする考え方。プレーの際も、無理はしない。日本の野球は精神、過程を重視する。そのために長時間練習をするのである。

どちらがよいとは一概には言えないと思うが、生まれつきのパワーで劣る日本人がメジャーリーグで肩を並べるためには、おのずから違った道を歩まねばならなかったのだろう。イチローや松井が成功したことは、その方向性が間違っていなかったことの何よりの証拠ではないのか。データを重視し、1点を大事にする日本の野球はこれからもすたれていくことはないだろう。スターが次々とメジャーに流出する日本球界をどう盛り上げていくかという問題は残るが。

一野球ファンとして、日本人がメジャーリーグに行くことで、野球そのものに対する大衆の関心が増大し、日本の野球がより発展していくことを願わずにはいられない。
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2008年03月02日

日本人はなぜシュートを打たないのか

「日本人はなぜシュートを打たないのか」      湯浅 健二




日本のサッカー選手がなぜシュートをあまり打たないのかを分析した本。…のはずなのだが、中容は著者の経験をもとにしたサッカー論。

私は、この本の題を見て、てっきり日本代表の決定力不足、シュートの少なさについて分析した本だと思っていた。しかし、一読してみると、タイトルに関係することを書いてあるのは前書きと本文のほんの一部だけだった。はっきりいって期待はずれ。もっと日本の抱える決定力不足という課題、なぜシュートを打たないのかについて具体的な例を挙げ、徹底的に分析し、それを解決する方法を提示していると思っていたのだ。

この本では、日本人は集団主義的で、個人が責任を負うことに慣れていないため、シュートをできるだけ打ちたくないのだと分析している。それは確かに原因の一つではあるだろうが、もっと突っ込んだ分析がほしい。それがあれば、私はこの本に5つ星をつけてもいい。

私の考えでは、日本の決定力不足は、シュートを打ちたがらないというより、インザーギやアンリのようなずばぬけた力を持つFWの不足が原因だと思う。ずば抜けた身体能力や技術を持たない。当然、自信がないからチャンスがあってもシュートを打たない。シュートを打たなければ点は入らない。単純な理屈である。

日本代表の層の厚さを見ればすぐに分かる。攻撃的MF(あるいは、パサー)では、遠藤、俊輔、中村憲剛、元代表の小野、小笠原、引退した中田英など、そうそうたるメンバーがいるが、これがFWになると、高原ぐらいしか思い浮かばない。では、なぜMFばかり層が厚いのか。それは、キャプテン翼が原因だとする面白い考えがある。小野や遠藤の子供時代は、キャプテン翼というマンガが人気だったころである。主人公の翼はMFだった。従って、このマンガにあこがれた世代からは、MFがたくさん出てきたとする説である。この説のほうが、よっぽどこの本の分析より興味深い。

この本では、サッカーがどういうゲームなのか、攻撃と守備における考え方などを、著者自身の体験を例として解説してゆく。サッカー論としては面白く読める。この本を読めば、もっと日本代表の試合も面白く見られるだろう。この本のタイトルが「現代サッカー論」であったなら、私も納得したであろう。
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2007年12月11日

「言語技術」が日本サッカーを変える

「「言語技術」が日本のサッカーを変える」  田嶋 幸三
★★★★★




著者は、日本サッカー協会専務理事。サッカーに必要なのは論理的な思考力とそれをきちんと他人に伝えられる言語能力であり、これからの日本代表に最も必要なことだと主張する。

私は、今の日本代表に足りないのはクリエイティブなプレーだと思っている。それができるようになるには、著者が言うように、小さい頃からの教育が重要になってくる。

しかし、身だしなみや言葉遣いから教育するのには反対である。それはかえって選手から伸び伸びとしたプレーやクリエイティブな判断力を奪い、画一的な選手を作り出すことになるだろう。選手はあくまで、ピッチの上でいいプレーができればいいのであって、それ以外の事を制限するのは余計である。

考えずに惰性でサッカーをやってうまくなるのかと著者は問う。確かに、日本代表を世界のトップレベルにするには考えてプレーすることが絶対に必要になってくる。面白いことに、プロ野球、楽天の監督の野村が若いころに同じようなことを言っている。日本の野球を世界で通用するようにするためには考える野球をしなければならないと。偶然の一致ではあるが、2人ともパワーや体格で劣る日本人が世界で活躍するには考えるプレーで補うしかないと思ったのではないだろうか。そういう点から見ても、オシムが倒れたことは実に残念である。彼がやろうとしたことは、これからの日本にとって必須条件になるはずだからである。

田嶋は、これからのサッカーでは意図を持って一つ一つのプレーをし、その癖を子供の頃からの教育によって身につけさせなければならないと説く。日本代表にとって必要なのは一瞬の判断力であり、それを作るために必要なのは論理的思考力であると。また、プレーの意図をきちんと説明できるコミュニケーション力も必要らしい。そのために著者が教えているのが、「言語技術」の習得である。サッカーを強くするために子供の教育から変えていくという発想は面白いし、的を射ている。新しく日本代表監督になった岡田も同じことを言っている。サッカーやラグビーのような、攻守の切り替えが速く、柔軟でクリエイティブなプレーを求められる競技では、教育環境から変えていかなければ一流にはなれないと。偏差値重視、暗記中心の画一的な教育を行っている日本では、なかなかジダンやロナウジーニョのような選手は生まれてこないだろう。従って、この本に書かれたような取り組みは非常に有効であるし、日本を一流のサッカー国にするための基礎を作りつつあるのだと感じる。

この本を読んで、私は日本サッカーの未来に明るい光を見出した。

ラベル:サッカー 教育
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2007年11月18日

オシムの言葉

オシム監督、大変なことになってますね。彼の容態はもちろん、W杯予選への影響が心配です。何とか、復帰してほしいのですが…オシムに代わる監督は,今のところ見当たりませんから。オシムへの敬意と復帰への願いを込めて、この書評を贈ります。


「オシムの言葉」              木村 元彦
★★★★★



新たにサッカーの日本代表監督に就任したイビチャ・オシムの言葉を中心に、その人間像に迫ったノンフィクション。

学生時代に大学の数学教授にならないかとの誘いが来たように、非常に頭のいい監督である。旧ユーゴという、政治的に複雑な国で生まれ育ち、代表監督をしていたことが、彼に慎重な言動を取らせるのだろう。彼は言葉の持つ威力とその怖さを十分に知っている。その一方で、サッカーにおいては大胆な采配もする。慎重かつ大胆、それがオシムという男である。選手を選ぶ目も確かだ。さらに、分裂の危機にあった旧ユーゴの監督を経験したことが、彼を精神的にタフにしたという側面もある。

オシムのサッカーは、とにかく選手を走らせると言われるが、ただ走らせるわけではない。走りを中心とした練習には、一つ一つ意味がある。たとえば、オシムが選手を2チームに分け、ハーフコートを使って1対1で練習をさせたことがあった。片方の選手が押されて、苦しんでいる。と、オシムが見ている選手に注意を促す。1対1で勝てないなら他の選手が助けに行くべきだというのである。1対1という監督が決めた約束事を破ってもかまわないのだと。このように、オシムは常に明確な目的を持って練習をさせる。その考えを理解していれば、何をしてもOKなのである。ただ単に選手の自主性に任せると言っていたジーコとはずいぶん違う。日本の選手はまだ、いきなり自由にやれと言われて伸び伸びと創造性にあふれるプレーができるほど成熟してはいない。日本はブラジルとは違う。オシムは、厳しい監督ではあるが、選手自身の考えも尊重するという点で、トルシエとジーコの中間あたりに位置する存在だと思う。

それから、最も印象に残った場面がある。オシムが旧ユーゴスラビアのクラブチームの監督をしていたころのことである。オシム率いるチームは、優勝争いをしていた。だが、チームの優勝と同時に、オシムは辞任を発表する。そのころ、彼の生まれ故郷のサラエボで戦争が起きており、妻がそこに残されていた。サッカーどころではなかったのだ。しかし、彼を慕うチームの選手は、こう言ってオシムを引きとめようとする。「シュワーボ(オシムの愛称)・オスタニ!!」(ドイツ野郎、残れ!)彼がいかにそのチームで信頼され、求められていたかの現れである。村上龍がみんなが感動するだろうと書いていたが、私も感動した。

この本を読んで、オシムなら日本のサッカーをさらにレベルアップさせてくれるのは間違いないと確信した。




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2007年08月05日

中田英寿 誇り

「中田英寿 誇り」              小松 成美
★★★★



 有名プロサッカー選手の引退の決心から、実際に引退にいたるまでを描いたドキュメンタリー。

 中田が引退する−そんな衝撃的な知らせを知ったのは、テレビのニュース速報だった。私は別に中田のファンではないが、やはり日本サッカーのパイオニアの引退は、かなりのショックだった。いったい、なぜ…その言葉だけが、私の心に渦巻いていた。

 最初はケガが原因かとも思ったが、そうでもないらしい。29歳といえばサッカー選手としては円熟期で、そこで引退するというのは腑に落ちなかった。しかし、この本ではその本当の理由が明かされる。書いてしまうと面白くなくなるので、詳しくは書けないが、理由は彼自身の気質からくる。それが彼を一流のプレーヤーにしたのだが、同時に彼自身の引退を早めることにもなってしまったのだ。

 中田は、トルシエとの間に確執があり、日韓大会の後、代表を引退するつもりだったという。だが、ジーコとの間には信頼関係を築けたらしい。私にとっては意外だった。私はあまりサッカーには詳しくないが、その私から見ても、ジーコは能力の高いメンバーばかり集め、ブラジルのようなサッカーをしようとしているようにしか見えなかった。ジーコは高い戦術を持っていたのかもしれないが、ただ選手の自主性に任せ、創造的なプレーをしてくれといきなり言われても、無理な話である。日本とブラジルではそもそもサッカーの歴史が違うし、教育環境も異なる。現在の日本代表のメンタリティーには、ジーコのような方針は早すぎたのだろう。その点、オシムは選手の自主性や創造性を引き出すための具体的な方法論を持っている。トルシエによって導かれ、世界と戦える自信をつけた日本が次のステップに進むには、ベストの人選だったといえる。こう考えていくと、中田がなぜジーコを監督として認めたのか分からない。彼ほど頭が良ければ、ジーコのやり方がまだ早すぎることぐらいはすぐに分かったはずである。そういう意味で、中田の選択には疑問が残る。

 この本を読み進めるうち、中田に対するイメージが変わってきた。個人主義者で、自己中心的で、その頭の良さのためにときに人を見下すという以前のイメージは消えさり、後に残ったのは、しっかりと自立し、完璧主義者で、責任感が強い…そんな一人の男の姿だった。

 大きなケガもなく、戦術理解度が高くて、走ることをいとわない。そんな彼は、オシムジャパンにはぴったりだ。かなわぬ夢とは知りつつ、もう一度代表に戻ってきて、彼の貴重な経験を若い選手たちに伝えてほしい−そう思うのは私だけだろうか。
posted by 三毛ネコ at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする