2017年01月07日

ギフテッド

「ギフテッド」                  山田 宗樹
★★★★



小学校6年生の颯斗の登場から物語は始まる。ある時、検査を受けて自分が「ギフテッド」だということを知る。それから、地元の学校から浮いてしまい、結局ギフテッドばかり集まった学校に行くことになる。そこで彼はかけがえのないギフテッドの仲間を得る。ギフテッドとは何なのか。それは次第に明らかになる。

その特殊性ゆえに、ギフテッドは目の敵にされ、国からも問題視される。特別なギフテッドと平凡な人間。それが、ある事件をきっかけにしてギフテッド排除の動きが急速に高まっていく。

この本を読んで、才能とは何だろう、と考えざるを得なかった。天才や運動神経抜群の者なら他人から評価され、称賛される。しかし、ギフテッドは同じように特別なのにそのことで差別され、追い詰められていく。ならば、そんな才能など必要ないのではないか、と思える。平穏な人生を送りたいなら。天才児なども周りになじめず、周囲から孤立することもある。

才能のない身としては、少しでもそんな物があれば、と夢想するが、実際にはない方が幸せなのかもしれない。それよりも自分の好きなことを見つけて、思う存分それをしたほうが幸せなのだろうとも思えてくる。

物語の方は、思いがけない結末を迎える。ちょっと意外な終わり方なのだが、著者は進化し、新たな段階に入った人類を表現したかったのかもしれない。異質なものに対する間違った差別、特別な才能を持つことの損得、そんなことを描きたかったのだろう。

ギフテッドの謎で読者を引きつけ、その能力によって引き起こされた事件でさらに読ませる。最後まで、どういう結末になるのだろうと想像しながら一気に読めた。ラストの肩すかし感を除けば、抜群に面白い小説である。
ラベル:山田宗樹 小説
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2016年11月05日

失われた黄金都市

「失われた黄金都市」                     マイケル・クライトン
★★★★★



主人公はエリオットとカレン、それにゴリラのアミーである。カレンの会社のキャンプのメンバーが全滅した。原因は不明。真相を探るべく、彼女たちはコンゴへ向かうことになる。ちなみに、アミーは手話ができる。

アフリカには財宝がごろごろある失われた都市があるという伝説があるのだ。一行はそれを確かめるためにも現地に向かう。手に汗握る大冒険、果たして結末は…

アミーは手話で人間と話ができる。信じられない人もいるかもしれないが、私はそれは可能だと思う。実際、人間とちゃんと話せるヨウムも存在する。それなら、はるかに頭がいいゴリラが人間と話せるのは不思議ではない。

ハイテクと最新の科学知識を使ったストーリーの展開は著者の得意とするところ。この本にもそれは余すところなく発揮されている。現代の冒険はハイテクを駆使するのだ。内容は冒険小説なのだが、クライトンらしく、単なる冒険だけではない。いろいろな要素が詰まっている。

地球はどこも探検しつくされた感があるが、この本を読むとまだまだ未開の地もあることに気づかされる。

動物の専門知識が得られ、アクションも楽しめるこの作品、読んでみて損はない。
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2016年10月31日

スフィア―球体

「スフィア―球体」                       マイケル・クライトン
★★★★★



主人公はノーマン。心理学者である。ある日,突然海軍が彼を迎えに来て,彼は太平洋のど真ん中に連れて行かれる。そこにあったのは・・・何と,300年前の宇宙船!いったい,どういうことなのか。そして,ストーリーが進むにつれて,話は意外な方向へ・・・

ドレーク方程式や,海洋生物の知識など,クライトンらしく科学知識をうまく小道具として生かしながら話が進んでいく。Kindleで英語で読んだのだが,実はこの小説,2,3回日本語で読んでいたのでスラスラ読めた。あまり難しい単語も出てこない。改めて英語で読んでみると,その構成のうまさ,独創的なアイデア,科学知識の散りばめかたなどに感心する。天才の仕事としか言いようがない。

また,日本語版ではかなりの意訳をしているところもあって感心させられる。翻訳でも十分面白かったのだから,この翻訳者はかなりの腕なのだろう。

確かな科学の専門知識+批評性+先見性と創造力=クライトンの作品,と言える。彼の作品はエンターテインメントとして優れているばかりではなく,常に我々に疑問を投げかける。科学のあり方はこれでよいのかと。

彼が死んでしまった今,私たちはより科学力の使い方について注意を払わなければならないだろう。

クライトンが残したメッセージは重い。
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2016年10月22日

命の遺伝子

「命の遺伝子」                       高嶋 哲夫
★★★★



トオル・アキツが主人公。ドイツのベルリンから物語は始まる。彼は遺伝学者である。

そのころ,ネオナチの集会で爆発があった。ナチスの戦犯を追っている組織が,爆発の後,ある人の手首を回収した。その人物の推定年齢,112歳。しかし,その手首を見る限り,彼は40代としか思えない。いったいどうなっているのか・・・

最初に提示された謎に加え,アクション・シーンもあり,エンターテインメントとしては十分に成立している。引きこまれて最後まで,というほどではないが,楽しみながら読める。文章もすっきりしていて読みやすい。ただ,遺伝子スリラーとしては最高のものとはいえない。私が読んだ作品の中では,「イエスの遺伝子」が傑作だった。イエス・キリストの遺物からDNAを採取し,その「いやし」の秘密を知ろうとする話である。その面白さに,一気に読んでしまった記憶がある。

それほどではないが,この小説のテーマも悪くはない。十分に読ませる力は持っている。

ある登場人物が言う。「人は死があるからこそ人と言えるのです」と。私たちはみんな不老不死を願う。しかし,それが実現した時,果たして幸せといえるのか。家族も友人も子供も,もちろん師と呼べる人も,すべて死んでいく。しかし,自分だけは生き続け,愚かな人間たちの営みを見続けなければならない・・・そう考えた時に,死は恐怖であると同時に一種の救いでもあることに気が付く。

私はクリスチャンであるが,やはり神の意思に逆らってまで生きたいとは思わない。人間らしい死が迎えられればいい。それが神の望みならば・・・

この本のテーマは根元的で,重い。
ラベル:高嶋哲夫 小説
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2013年03月02日

Sphere (Vintage)

「Sphere (Vintage) 」 Michael Crichton




主人公はノーマン。心理学者である。ある日,突然海軍が彼を迎えに来て,彼は太平洋のど真ん中に連れて行かれる。そこにあったのは…何と,300年前の宇宙船!いったい,どういうことなのか。そして,ストーリーが進むにつれて,話は意外な方向へ…

 ドレーク方程式や,海洋生物の知識など,クライトンらしく科学知識をうまく小道具として生かしながら話が進んでいく。kindleで英語で読んだのだが,実はこの小説,2,3回日本語で読んでいたのでスラスラ読めた。あまり難しい単語も出てこない。改めて英語で読んでみると,その構成のうまさ,独創的なアイデア,科学知識の散りばめかたなどに感心する。天才の仕事としか言いようがない。

 また,日本語版ではかなりの意訳をしているところもあって感心させられる。翻訳でも十分面白かったのだから,この翻訳者はかなりの腕なのだろう。

 確かな科学の専門知識+批評性+先見性と創造力=クライトンの作品,と言える。彼の作品はエンターテインメントとして優れているばかりではなく,常に我々に疑問を投げかける。科学のあり方はこれでよいのかと。彼が死んでしまった今,私たちはより科学力の使い方について注意を払わなければならないだろう。クライトンが残したメッセージは重い。
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2010年06月29日

パラドックス13

「パラドックス13」           東野 圭吾
★★★★★




この物語では、最初にある現象が起きる。P-13現象と呼ばれるものだ。それが起きた後の世界は…それは読者自身で確かめてもらうしかない。ひとつ言えるのは、P-13現象後の世界は、非現実的な世界だということだ。仲間はわずか。そうなった原因はつかめない。状況はだんだん悪化していく。そんな中、主人公の一人、誠哉はその原因を調べ、総理官邸に行き着く。

このストーリーは一種の人間の極限状況を描き出す。そこで主人公たちは自分の根底にある価値観や道徳観を問われる。人生の先輩に対する敬意の意味、安楽死に対する考え方など。この作品を通して作者が語りたかったのは、たぶんそういうことではないだろうか。読者は常に自身に問うことになる。この場合、自分だったらどうするのか。この場合は?と。

何とか生き延びようとする主人公たちのサバイバルは続く。物語の後半になると、P-13現象の全貌が明らかになる。しかし、それはあまりに過酷な現実だった。しかし、読後感はそれほど悪くない。一気に読ませる、ジェットコースターノベルといえる。




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2008年02月24日

クライム・ゼロ

「クライム・ゼロ」             マイケル・コーディ
★★★★★



女性のFBI長官とある女性科学者が、犯罪をゼロにするために遺伝子工学を利用したある計画を立てる。しかし、ストーリーが進むにつれて、「犯罪(クライム)ゼロ」と名づけられた計画の恐るべき全貌が明らかになってくる…

壮大なスケール、非凡な着想。著者の才能を感じさせる。

ストーリーの中で、犯罪の90%は男性が起こすという事実が明らかにされる。そこから、もし男性がいなければ…と考えるのは分からなくもない。

しかし、すべての男から攻撃性を奪って、それで幸福な社会が出現するだろうか。それは、虎は危険だから牙と爪を抜いておけと言うに等しい。

まず第一に、羊のように飼いならされた男ばかりが住む社会は面白くもなんともないであろう。

二番目に、男の攻撃性というものは文明が発展する上で役立ってきたし、これからも必要な場合がありうる、ということである。ある作家によれば、多様性が失われた種は簡単に絶滅してしまうらしい。攻撃性も、人間の多様性のひとつである。それを取り去り、男性を均質化してしまうことは、長い目で見れば人類という種にとってプラスにはならないのではないか。ずっと現在のような状態が続くのならいいが、環境が激変したとき、攻撃性を失った人類は変化に対応できないだろう。

男の攻撃性をなくすという考えがもっとも疑問なのは、人間を一面的にとらえ、まるでゲームのプログラムのように扱っているところである。プログラムにバグがあればそれを修正して問題が解決するように、人間の遺伝子を操作して攻撃性をなくせば平和になると考える。だが、人間とはそんなに単純な存在だろうか。人間の行動や心理は、1+1=2というような簡単に答えの出るようなものではないはずである。遺伝子をいじって問題を解決しようという姿勢は、薬を飲んで不安を取り去り、悩みを解決しようとするのと同じ、短絡的な思考に思える。人間や社会は、もっと複雑で、一筋縄ではいかないものではないだろうか。別の作家は、人間が頭の中で作り上げたユートピアは、実際の人間活動の不可思議さには対応しきれないと書いている。

この小説のような世界が実現したとしても、そこには予想だにせぬ問題が起こり、ユートピアは破綻してしまうという気がしてならない。
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2008年01月14日

日本沈没

「日本沈没」                 小松 左京
★★★★





出だしは、面白そうだという期待を持たせてくれる。が、最初の100ページほどは、はっきり言って退屈である。しかし、前半の途中から、物語は急展開を見せはじめる。中規模の地震がひんぱんに起こり、休火山が次々に噴火する。そして、災害はその規模を増していき、ついに「その時」が来る…

東海地震、東南海地震、南海地震が同時に起こるかもしれないと懸念されている今、日本沈没の部分を除いて、この小説の描写は決して絵空事ではない。

ひとつの国が消滅するということがいかに大変なことか、この本は明確に示してくれている。国土を失うということは、単に生活が不便になるなどというなまやさしいものではない。国という存在によって私たちのアイデンティティーは成り立つ。それを失うということは、自分を作っている基盤が崩壊するということである。自分を取り戻すためには、自己の根底にあるものを再構築しなければならないのだ。それがどれだけ難しいかは、考えてみれば分かるだろう。

この作品の中に、「世界雄飛」という言葉が出てくる。戦後、日本の社会はマイホーム化し、厳しさが失われてしまったというのである。日本人は、過保護でぬるま湯のようになった日本社会から脱し、世界という荒々しい外部の社会に出て行くべきなのだと。それが「世界雄飛」の意味である。

私は、著者がこの一言を伝えたいがために、この小説を書き始めたという気がしてならない。読めば読むほど、その思いは強まっていく。日本沈没というショッキングな現象、そこから生じるさまざまな問題も、世界雄飛という思想に裏打ちされていると考えることができる。そうとらえれば、日本に対する警告としての SF小説というよりも、日本人の将来への希望を込めた啓蒙小説としても読める。

いろいろなメッセージが込められた力作である。一読されることを薦める。
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2007年11月02日

アルジャーノンに花束を

「アルジャーノンに花束を」         ダニエル・キイス 
★★★★★



知的障害の主人公が知能増強手術を受け、天才になってしまうというSF小説。一応SF小説と銘打たれてはいるが、単にそんな枠ではとらえきれない深いものを含んでいる。

IQとEQの重要性の比較や知的障害をめぐるさまざまな問題などがストーリーの中で浮き彫りになってくる。

知能が高く、自己中心的で孤立した天才と、協調性があり親しみやすい白痴と、果たしてどちらが幸せなのか。人間は知(知識)・情(感情)・意(意思)の3 要素がバランスよく備わっていてこそ人間らしいといえるのであり、知能だけが突出した天才が社会でうまくやっていけるとは限らない。高すぎる知能は、かえって弊害を招くおそれがある。数年前からEQの重要性が主張されるようになったが、この本ではそのはるか以前に似たような問題提起をしており、その先見性には驚かされる。

主人公に対する家族の対応の描写からは、障害者をありのままに受け入れることができない家族の葛藤や愛憎が伝わってきて心が痛む。

文句なしの名作。絶対、一読する価値はある。原作も読んでみたが、そちらのほうが感動した。高校卒業ぐらいの英語力があれば読めるので、ぜひ原作も読んでほしい。
ラベル:小説
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2007年06月17日

ジュラシック・パーク

「ジュラシック・パーク」       マイケル・クライトン
★★★★★





マイクル・クライトンの最高傑作。舞台はコスタリカの島。ある男が、壮大な計画を立てる。最新の遺伝子工学で恐竜をよみがえらせ、一大テーマパークを作ろうと言うのだ。しかしそこでトラブルが起きはじめ、出資者を含む一団がその島を視察に訪れる。そこには、一行の予想をはるかに超える冒険が待ち受けていた…

著者のストーリーの作り方のうまさには感心する。最新の科学知識を駆使したサスペンスは、作者の最も得意とするところ。まさに天才の仕事としか言いようがない。

また、映画監督の経験があるせいか、映像がリアルに浮かんでくるような情景描写になっている。ただ、恐竜の行動には少し無理がある。

クライトンの作品は、現代社会の発達しすぎた科学への警鐘となっていることが多い。この小説などは、その典型と言える。

作品中にたびたび登場するカオス理論は、非常に興味深かった。素粒子物理学や数学には限界があるという事実、さらには科学そのものに限界があるという主張は、現代社会の現実を見事に言い当てているように思える。科学の法則のひとつに、エントロピーの法則というものがある。有用なエネルギー(石油・石炭など)は一度使われると、二度と使えないエネルギーへと変化してしまうという法則であり、どれだけ科学技術が発達してもそれを補うことはできない。この法則などは、まさにクライトンの主張とぴったり一致する。

また、この本の中にはカオス理論を主張する数学者VS目の前の問題を解決する技術者という構図が出てくる。その数学者は技術者を見せかけの知能しか持っていないと言って非難し、技術者はその数学者を理論屋に過ぎないと言う。確かに、目前の問題の解決しか考えない技術者が原爆や水爆を作り出したのであるが、現実を変えることのできない理論など何の役にも立たない。人間の目の前にあるのは日々の生活であり、行動である。ある種の現象は予測不可能だとカオス理論は言うが、予測できないからといって人間は行動をやめるだろうか。人間を成長させるのは未知の物事に取り組もうとするチャレンジ精神だと思う。そういう意味では、クライトンの結論には納得できないものが残る。

そんなごちゃごちゃした理屈を抜きにしても、この本は十分面白い。極上のエンターテインメントである。オススメの一冊。
posted by 三毛ネコ at 06:41| Comment(0) | TrackBack(1) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする