2019年12月15日

伊坂さんらしい、オリジナリティー溢れる小説です。楽しめました。

「クジラアタマの王様」        伊坂 幸太郎
★★★★★



主人公の「僕(名字は岸)」は菓子メーカーの宣伝広報局で働いている。最近そのメーカーで開発したマシュマロのお菓子を、人気ダンスグループの小沢ヒジリという男がテレビで気に入っていると言ってくれて、その翌日から注文や問い合わせがどんどん来るようになった。「僕」はもちろん喜んだのだが、それだけでは終わらなかった。

そのお菓子に画鋲が入っていた、というクレームの電話があったのだ。そのときの社員の対応がまずく、クレームをつけた女性はSNSで画鋲が入っていたことを広めた。「僕」が勤めているメーカーはその対応として記者会見を開くことにし、「僕」はそのときに言うべきでないこと、すべきでないことといった注意文書のようなものを作る。しかし、会見をした部長がその「べからず集」を持って行くのを忘れ、会見は完全な失敗に終わる。翌日には、抗議の電話の嵐。

しかし真相は、お菓子に画鋲は入っておらず、クレームをつけた主婦の子どもが落ちていた画鋲を飲んで、それを「僕」の会社のせいにしたのだ。

そして、話は次の章へ。池野内征爾(せいじ)という都議会議員が出てくる。この議員は「僕」に一風変わった話をしてくる。夢の中で、「僕」そっくりの絵が描かれたビラのようなものを見たというのだ。しかも、そのビラに書かれていた8ケタの数字が「僕」の生年月日と一致した。

さらに、以前出てきたエピソードが後の話へと次々につながってくるという、伊坂幸太郎得意の展開になる。そして話は、「ハシビロコウ」、「火事」、「夢」といったキーワードにより、「僕」と池野内議員、小沢ヒジリが結びつき、複雑になって、面白い展開になっていく。冒険小説の要素もある。

伊坂作品はいつもそうだが、ちょっと先を想像できない小説である。

作品の節目節目にこの物語を表現したマンガ(セリフはない)が出てくる。最初はどういう意味か分からなかったが、この物語の内容を表しているのだということが分かってくる。なかなか効果的な演出である。そんなマンガも含めて、伊坂ワールドに浸っているうちに、気がつくとラストまで読んでしまう、そんな魅力を持った小説だ。
ラベル:小説 伊坂幸太郎
posted by 三毛ネコ at 13:47| Comment(0) | 冒険小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月01日

Congo

「Congo」 Michael Crichton
★★★★★



この本も、kindleで英語で読みました。主人公はエリオットとカレン、それにゴリラのアミーである。カレンの会社のキャンプのメンバーが全滅した。原因は不明。真相を探るべく、彼女たちはコンゴへ向かうことになる。ちなみに、アミーは手話ができる。アフリカには財宝がごろごろある失われた都市があるという伝説があるのだ。一行はそれを確かめるためにも現地に向かう。手に汗握る大冒険、果たして結末は…

アミーは手話で人間と話ができる。信じられない人もいるかもしれないが、私はそれは可能だと思う。実際、人間とちゃんと話せるヨウムも存在する。それなら、はるかに頭がいいゴリラが人間と話せるのは不思議ではない。

ハイテクと最新の科学知識を使ったストーリーの展開は著者の得意とするところ。この本にもそれは余すところなく発揮されている。現代の冒険はハイテクを駆使するのだ。内容は冒険小説なのだが、クライトンらしく、単なる冒険だけではない。いろいろな要素が詰まっている。地球はどこも探検しつくされた感があるが、この本を読むとまだまだ未開の地もあることに気づかされる。

動物の専門知識が得られ、アクションも楽しめるこの作品、読んでみて損はない。
posted by 三毛ネコ at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 冒険小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月01日

ブレイクスルー・トライアル

「ブレイクスルー・トライアル」         伊園 旬
★★★★



主人公はセキュリティ会社の社員。その会社が賞金を賭けて自社のセキュリティ・システムを破るトライアルを開催する。賞金額はなんと1億円。大学時代の友人に誘われ、その社員はトライアルに参加する。着々と準備は進み、本番に向けて緊張感も高まっていく。冒険小説ではあるが、このあたりはクライム・ノベルの雰囲気。

しかし、そこから物語は複雑になる。主人公の2人に普通でない過去があることが明らかになる。2人はそれぞれ、ある思惑を抱いてトライアルに参加したのだ。トライアルには、なぜかプロの泥棒も参加する。彼らにはまた別の目的があった。そしていよいよトライアルが始まる―。

前置きだけで実に166ページ。しかし、アクションシーンやクライム・ノベル的な要素も組み込まれていて、飽きずに読ませる。軽妙な語り口と会話も才能を感じさせる。そしてトライアルが始まってからは、冒険小説にふさわしく、知恵比べあり、アクションありで楽しませてくれる。

冒険小説。この響きは、いつも男(特に少年)を引きつけてやまない。トム・ソーヤの冒険、ロビンソン・クルーソー。私たちはその本を手にし、つかの間のバーチャル・リアリティの冒険活劇を満喫する。山を越え、海を渡り、大金を手に入れ、いろいろなスリルとサスペンスに満ちた世界を駆け抜ける。優れた冒険小説は、私たちを未知の世界へいざなってくれる。そこでひととき、人は夢を見て、明日の現実に戻る活力を取り戻すのだ。この作品は、まさしくそんな力を持つ物語のひとつである。
posted by 三毛ネコ at 12:25| Comment(4) | TrackBack(1) | 冒険小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする