2017年12月02日

エドガー・アラン・ポー怪奇傑作選

「エドガー・アラン・ポー怪奇傑作選」         エドガー・アラン・ポー
★★★★★



エドガー・アラン・ポーの短編集3つを収録した本である。

・黒猫 「私」の独白という形で物語が展開する。小さいころから動物好きだった私。両親はそれを知ってたくさんの動物を飼わせてくれた。しかし、大人になって大酒を飲むようになり、「私」の性格は変わってしまう。妻を殴ったり、動物にもひどい仕打ちをするようになったのだ。そして、飲み過ぎて帰宅したある日、愛猫プルートに対して彼がした仕打ちとは・・・そんなことをした理由が描写されるが、とても共感できない。だんだんと狂気に犯されていく男の特殊な心理が描かれる。日本語で読んでいたら気分が悪くなるような話である。

・ウィリアム・ウィルソン この話も「私」の一人称で語られる。私は一族から想像力と激しやすい性格を受け継いだ。我が強く、自分の意志のみに従って生きていた。しかし、「私」と同姓同名の生徒(ウィリアム・ウィルソン)だけは「私」の言葉に従わなかったのだ。そしてその同姓同名の男と「私」は誕生日まで同じだった。ほぼ毎日、私とその男は口論をしていた。ウィルソンは「私」にとって厄介な存在だった。その後の人生でも、先々にもう一人のウィリアム・ウィルソンの影が・・・彼は一体何者なのか?それはラストで明らかになる。

・黄金虫 「私」が友人のルグランを訪ねた時、ちょっと変わったコガネムシを発見したことを知る。ルグランは虫の収集が趣味なのだ。しかし、その発見の後、ルグランの様子がおかしくなった。何か計算ばかりしているのだ。そしてルグランの召使いのジュピターに連れられて、「私」がラグランのところへ行くと、彼は一生懸命何かを探しているようだった。どうやら、彼が探しているのは伝説の財宝のようだ。果たして、そんなものが本当にあるのだろうか?わずかな手がかりから鋭い推理をしてみせたラグランの洞察力には感心した。人も死なず、読後感も良い短編だった。
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2017年11月25日

ローマの休日

「ローマの休日」              イアン・マクレラン・ハンター
★★



有名な映画のノベライズ板のようだ。映画とはちょっと違うのかな、と思って読んでみた。

主人公はアン王女。ローマを訪れているのだが、しなければならない公務の量にうんざりしている。そこで、アン王女は庭に止まっていた小さなトラックの荷台に乗って大使館を脱出する。しかし、アンの主治医が処方した睡眠薬が効いて、公園のベンチで寝てしまう。そこへ通りかかったのが新聞記者のジョー。公園で寝ようとしているアンを捨てておけず、自分の家に連れて行く。

そのころ、大使館は大騒ぎになっていた。アン王女の行方を案じる大使たち。一方、ジョーはアン王女のインタビューのことで上司のヘネシーに会いに行く。そこで新聞を見たジョーは、王女が昨夜会った女性であることに気づく。

そしてジョーは、彼女のプライベートや夢、恋愛などについて個人的にインタビューすることを思いつく。それが5000ドルの価値があると言われ、がぜんやる気になるジョー。

アン王女と話し、カメラマンのアービングを呼んで、王女のネタを集めようとするのだが、彼女に付き合って行動するうちに、ジョーの心境に変化が・・・

映画の方は2回見たが、このノベライズ板が映画と全く同じだったので、ちょっと興ざめだった。まあ、読んだ分だけ自分の英語力のプラスになっていればいいのだが。この作品に関しては、ノベライズ板より断然映画を見るべきだと思う。
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2017年11月18日

マリアビートル

「マリアビートル」                    伊坂 幸太郎
★★★★★



舞台は新幹線の中。3つの異なったシチュエーションと視点で物語は進行していく。これらのシチュエーションはつながっている。

自分の子供を意識不明の状態にされ、その復讐をしようとする男。しかし、犯人の王子という中学生に反撃され、身動きが取れなくなる。ある男から息子を救い出すように頼まれ、見事に救い出した殺し屋コンビ、蜜柑と檸檬。正体不明の依頼者から、トランクを盗み出すように言われた七尾という非合法の何でも屋。非常に運が悪い男である。

彼らをつなげるのは、一つのトランクだ。そのトランクを巡って、4人の思惑が交錯する。そのトランクの中身を知っているのは、蜜柑と檸檬だけだ。

蜜柑と檸檬はトランクを盗まれ、助け出した依頼者の息子は死んでしまった。七尾はトランクを手に入れるように頼まれており、そのトランクをうまく盗んだのだが、隠していたトランクを王子に取られてしまう。果たして、トランクは誰のものになるのか。そして、この物語の結末も大いに気になる。

殺し屋が登場する話なので、物騒なシーンが描かれたり、王子という性格のねじ曲がった中学生のエピソードなど、書き方によっては不快になるような内容もあるのだが、伊坂幸太郎独特の軽いタッチで、どたばた喜劇のように普通に読めてしまう。

話が佳境に入ると、先が読みたくてウズウズする。情勢が二転、三転し、そしてラストへ……エンターテインメント性もメッセージ性も十分で、楽しめる小説だった。
posted by 三毛ネコ at 14:40| Comment(0) | エンターテインメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月11日

エジソン・ストーリー

「エジソン・ストーリー」            ジェイク・ロナルドソン
★★★★



トーマス・エジソン。誰もが知る、世界の発明王である。その彼が生まれたのは、アメリカ、オハイオ州だ。エジソンは小さいころから、物が何でできているのか、その中に何があるのかといったことに興味を抱いていた。好奇心が旺盛で、なぜ鳥は飛べるのかと思って実験をしたり、ミツバチの巣の中はどうなっているのかと思い、解体してハチに襲われたりもした。

小学校に行くようになると、エジソンは学校にとって最悪の生徒になった。教師はエジソンをどう扱ったらいいのか分からず、母親が家で勉強を教えることにしたのは有名なエピソードである。

母がエジソンに読み書きを教え、エジソンはすぐに父親の蔵書を全て読み終わってしまった。ある日、母がエジソンに科学の本を買ってやると、エジソンは興味を持ち、科学の本を大量に読むようになる。電気にも興味を抱き、その実験もするようになる。

しかし、金が足りず、列車で新聞などを売って実験費を稼いだ。それが当たって、3人も人を雇ってこのビジネスをすることになるのだ。エジソンは列車の中で最新ニュースを印刷するようにして、新聞をたくさん売った。まだ14歳の時である。

その後、エジソンは電信技師になる。耳が悪かったので、他の仕事より彼に向いていたのだ。エジソンの最初の発明は「ダブル・トランスミッター」だった。一度に2つのメッセージを送れる通信機で、便利だったのだが、残念ながら買ってくれる会社はなかった。

しかし、そこからエジソンは次々と新しい発明をしていく。そして誰もが知るように、実用的な電球、蓄音機、映画のカメラなどを発明し、大発明家となっていくわけだ。

読むと、エジソンが挫折や困難を乗り越えて発明に人生を賭けていたことが分かる。天才発明家の人生をたどることは、興味深い読書体験となった。
posted by 三毛ネコ at 11:07| Comment(0) | ラダーシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月07日

カササギたちの四季

「カササギたちの四季」                   道尾 秀介
★★★★★



ミステリーの短編集である。

・ 鵲(かささぎ)の橋 リサイクルショップ・カササギ。開業から2年間、ずっと赤字である。店長は華沙々木(かささぎ)、副店長は日暮(ひぐらし)、そしてこの店に入り浸っている少女、菜美。ある身元不明の男からカササギが買ったブロンズ像。それを買いに来た男は、その像のことを知っていたようだった。男の後をつける副店長の日暮。そのブロンズ像は盗まれた物だった。そして、ブロンズ像をカササギに買いに来たのは、盗まれた家の主人の叔父だった。店長の華沙々木が見事に推理して、一件落着・・・のように見える。しかし、尻ぬぐいをさせられているのは別の人物。

・ 蜩(ひぐらし)の川 ある木工所から大量の注文を受けた店長の華沙々木。喜び勇んで目的地の秩父へと向かう。しかし、そこにも事件の匂いが・・・その木工所では、神木から神輿と鳥居を作ろうとしていた。しかし、華沙々木たちがそこへ行った日の朝、神木に誰かが傷をつけ、「お前もこうなるぞ」というメッセージが刻まれていた。前作と同じく、華沙々木が一見見事な推理を披露してみせるのだが・・・

・ 南の絆 この短編では、華沙々木たちと菜美との出会いから共に過ごすようになるまでのエピソードが描かれる。菜美の家に泥棒が入り、猫のナーちゃんが盗まれる。しかし、翌日にナーちゃんは返される。華沙々木が自身初の推理をして、事件を解決・・・したように見えるのだが、実際はそうではない。

・ 橘(たちばな)の寺 今までの3作品で、日暮にゴミ同然のものを高値で買い取らせていた和尚。それが、どういう風の吹き回しか、店のオーディオセットを高値で買い取ってくれた。後で、それには裏があることが明らかになるのだが・・・そのご、成り行きで和尚の寺に泊まることになる3人。その夜、泥棒が入る。ここでも華沙々木は事件をでっち上げ、迷推理を展開するが、ラストは意外に感動的になり・・・

一応、ミステリーなのだが、どうも華沙々木が事件を勝手に作り上げ、よけいに事態をややこしくしている感もある。それでも、殺人も起きず、ユーモアを交えてサクサクと展開していくので、ミステリーファンならずとも楽しめるだろう。
ラベル:道尾秀介 小説
posted by 三毛ネコ at 05:45| Comment(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする