2017年08月05日

盲導犬クイールの一生

「盲導犬クイールの一生」             石黒 謙吾
★★★★★



1986年6月、ジョナサン(後のクイール)は生まれた。ラブラドール・レトリバーである。生まれた5匹の子犬の中で、ジョナサンは最も静かな犬だった。ジョナサンの父親のマックは何匹もの盲導犬の親だった。ジョナサンには盲導犬の血が流れていたといえる。その頃(今でもそうだが)、視覚障がい者に比べて、盲導犬の数は圧倒的に足りていなかった。

飼い主のレンは子犬たちを盲導犬にしたいと考え、訓練士の悟(さとる)に子犬を見せる。悟が選んだのはジョナサンと、アンディという子犬だった。レンはジョナサンに盲導犬の訓練を受けさせることに決めた。

そしてジョナサンは、パピーウォーカーの仁井夫婦に預けられる。その時に、ジョナサンは「クイール」という名前になった。そして8か月後、クイールは仁井夫婦と別れ、訓練を受けることになる。

クイールは、動く前にまず考える犬だった。そのため、他の犬より行動が一呼吸遅れるのだ。クイールは、能力の点では普通だが、従順でくせのない性格が盲導犬向きだったという。クイールは無事訓練を終えて、一人前の盲導犬として活躍することができるのか?この続きは本書で。

盲導犬になるためには、生まれ持った性格が重要であるようだ。賢ければいい、という訳でもない。なかなか狭き道なのだ。それだけでなく、盲導犬の訓練士になるのも大変である。100人が訓練士としてトレーニングを受けて、最後まで残ったのはたった13人だったという。

そんな厳しい訓練の末に、視覚障がい者の役に立つ盲導犬が養成されていく。もっと盲導犬の数を増やし、多くの人がその恩恵を受けられるようにしてほしいものだ。そんなことを考えさせられた。
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2017年07月29日

星の王子さま

「星の王子さま」                        サン=テグジュペリ
★★★★★



「僕」はパイロットで、6年前にサハラ砂漠に不時着する。飲み水は8日分しかなかった。そこで「僕」は小さな少年と出会う。彼は「絵を描いて」と頼む。それが小さな王子さまとの出会いだった。

王子はどうやら他の星から来たらしい。その星は非常に小さい。トルコ人の天文学者がその星を発見したのだが、トルコの民族衣装を着ていたため、誰も彼の言うことを信じなかった。大人は外見や肩書きで人を判断する。

また、大人は数字が好きである。身長は何センチか、両親はいくらお金を稼いでいるか、どれくらいの価値の家に住んでいるか、など。本当に大事なのはそんなことではない、とこの本は主張する。どんな声をしているか、何のゲームが好きか、蝶を集める趣味があるかといったことのほうがよほど大事なのだと。

そして王子の一人語りが続く。彼は6つの星を訪れ、それから地球にやって来たのだ。1つ目の星では、王様がとても小さい星を支配していた。そこに住んでいるのは、王様とネズミ1匹。しかし、王様は全てを支配しているという。誰もいない星で、権力に何の意味があるのだろうか?

次の星では、虚栄心の強い男が、自分を賞賛しろと言う。彼以外に誰もいない星で。

3つ目の星にいたのは、酒を飲み続ける男。酒を飲むつらさを忘れるために飲み続けているという。

4つ目の星でも、王子は理解しがたいふるまいをする大人に出会う。そして王子は考える。「大人というのはなんて奇妙なのだろう」と。

第5、6の星を経て王子は地球にたどり着く。そして人を探し、あちこちを歩き回る。そこでキツネに出会い、「本当に大切なことは目には見えないんだ」と言われる。

決して幸せには見えない大人たち。本当に大事なことを知っている王子。いろいろなことを示唆してくれる物語だった。
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2017年07月22日

風の又三郎

「風の又三郎」                      宮沢 賢治
★★★★★



谷川の岸に、小さな小学校があった。生徒が少ないので、全体でたった1クラスしかない。

ある朝、1年生が学校に行くと、赤い髪の見慣れない少年が席に座っていた。生徒たちは誰もその少年のことを知らなかった。ある生徒が、その少年は「風の又三郎」ではないかと言い出す。その少年は転校生だったが、他の子供たちは黒い髪に着物なのだ。その少年は赤い髪に洋服なので、特に目立つ。

あまりにも他の子供と違うため、生徒たちは又三郎(本名は三郎)を素直に受け入れることができない。三郎が来ると風が吹く、と子供たちは信じている。

それでも、しばらくすると子供たちは三郎と遊ぶようになり、一緒に一郎(6年生の生徒)の兄が働く牧草地に行く。しかし、遊んでいるうちに、そこの馬たちが外に逃げ出し、それを追った一郎たちは道に迷ってしまい・・・。

ミステリアスな雰囲気の三郎。絶え間ない自然の変化。そんな物語を読み進めていくと、三郎は確かに「風の又三郎」的な雰囲気を身につけているのを実感する。

子供のころ、心がざわざわするのを感じながらこの話を読んだなあ、と懐かしく思いだした。
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2017年07月15日

ヘリオット先生奮戦記

「ヘリオット先生奮戦記」               ジェームス・ヘリオット
★★★★★



主人公は新米獣医のヘリオット。今日は牛の出産の手伝いをする。かなり苦戦したが、何とか小牛を引っ張り出すことができた。

ヘリオットを雇っているのはファーノンという獣医である。ヘリオットが大学の獣医学部を出たのが1937年。その年は仕事口がなく、80人で2、3の仕事を取り合う状態だった。しかし、幸運なことにヘリオットにはファーノン先生からの手紙が届き、会うことになっていた。

ファーノン先生は、ヘリオットを診療所に連れて行くと、いきなり何かの粉末に油を入れて化学反応させ、部屋を煙で充満させてヘリオットを驚かせる。なかなか茶目っ気のある人物のようだ。

そして2人は馬の往診に出かける。その馬はひづめの奥に膿がたまっていて、ファーノン先生はヘリオットにその治療を任せる。きつい手術だったが、ヘリオットは何とかやり遂げた。

ヘリオットは試験に合格し、ファーノン先生の下で働くことになる。就職して2日目の夜、ファーノン先生は外出中。そこに電話がかかってきて、ヘリオットは腹痛の馬の治療に行くことになる。ヘリオットはこの問題を解決できるのか?そして、この物語の行方は?

何しろ新米なので、一つひとつの仕事は大変である。つらい選択もしなければならない。人間の医者はもちろん責任重大だが、獣医の仕事も大変であることが分かる。悲喜こもごものヘリオットたちの日々が描かれる。難しい単語もいくつか登場してちょっとつっかえるが、単語リストもあったので、それほど苦労せずに面白く読めた。
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2017年07月10日

銀河鉄道の夜

「銀河鉄道の夜」                       宮沢 賢治
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主人公はジョバンニ。学校で授業を受けているシーンから始まる。ちょうどその日はケンタウル祭で、先生は天の川について授業をした。

人々は祭りの準備で、葉っぱのボールをつるしたり、松の枝にライトを付けたりしている。しかしジョバンニは貧しかったため、印刷会社で活字を拾うバイトをしていた。その仕事が終わってお金をもらうと、食べ物を買って家に帰る。食事をして、母に祭りを見に川に行くと言って、ジョバンニは出かける。

丘の上で寝そべって星を眺めていると、いつの間にか列車に乗っている。向かいの座席には、親友のカンパネルラが!そして列車は夜空を走っていく。周りの幻想的な風景が描かれる。賢治の持つ世界観が存分に表現されている。

この列車の旅で、ジョバンニたちは化石の発掘をする教授や、鳥を捕る男などに出会う。彼がシラサギを捕る様子などは、豊かな想像力にあふれている。

この物語で描き出される列車の旅は、死への道でもある。死後の世界がこれほど美しいところなら、死ぬのも怖くないなと思わされる。宮沢賢治は想像力豊かな人だったことが(そして、おそらくロマンチストだったことも)よく分かる作品である。
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